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13.9ミリのハイビジョン、サイバーショット「DSC-T90」新製品タッチ&トライ

» 2009年03月10日 08時30分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo DSC-T90(ホワイト)

 以前から搭載はされていたものの、ごく一部を除き、コンパクトデジカメの動画撮影機能はそのほとんどがオマケ的なものだったことに異論の余地はないだろう。「だった」と書いたことには訳がある。最近になって、本格的な動画撮影機能を持った製品が多く姿を現したからだ。

 「本格的」というとデジタルビデオカメラの領域に迫るような印象を与えてしまうようで語弊があるかもしれないが、最近では“とりあえず”的な実装ではなく、コンパクトデジカメで動画を撮ることに対して、正面から向き合った製品が複数登場している。

 具体的な製品名としては、ハイビジョン撮影を可能にしたパナソニック「DMC-TZ7」「DMC-FT1」やキヤノン「PowerShot SX200 IS」、ソニー「DSC-T900」「DSC-T90」を始め、1000fpsのハイスピードムービー撮影を可能にしたカシオ計算機「EX-FC100」「EX-FS10」などが挙げられるが、今回は13.9ミリというスリムボディながら720pのハイビジョン動画が撮影可能な「DSC-T90」をチェックしてみよう。

DSC-T90

 DSC-T90はDSC-T77の後継となるモデルで、撮像素子の高画素化(1/2.3型有効1010万画素から1/2.3型有効1210万画素へ)も果たしたが、動画撮影機能の強化が最大の特徴として挙げられる。DSC-T77ではVGA(640×480ピクセル)までだった画面サイズは720p(1280×768ピクセル)のハイビジョンにまで拡大され、形式もMPEG-1からMPEG-4 SPに変更されている。

photophoto 薄さを追求したためかズームレバーは小さめ(写真=左)、背面には「再生」以外のボタンは設けられていない(写真=右)

 720p記録ということで、同社とパナソニックが共同策定した720p記録に限定したAVCHD規格のサブセット「AVCHD Lite」の採用が見送られたことを意外に感じるひともいるはずだ。しかし、AVCHDは元来ビデオカメラ用として開発された規格であり、その性質上、デジタルレコーダーなどAV家電との親和性は高いが、PCでの編集にはまださほど適していない。本製品が「PCでの扱いを重視した」(ソニー)スタンスで作られたことを考えれば、さほど不自然なことはではない。

 DSC-T90の動画撮影は、背面のタッチパネル液晶に表示されている「撮影モード」アイコンから、「動画撮影」を選択することで行える。「動画撮影」のアイコンは「おまかせオート撮影」や「シーンセレクション」「夜景」など静止画撮影モードのアイコンと並べて配置されており、容易にアクセスできる。

photophotophoto 撮影時のメニュー画面(写真=左)、動画撮影も容易に開始できる(写真=中)、動画撮影モードは3種類(写真=右)

 動画撮影モードにした上でタッチパネル左下の「MENU」アイコンに触れることで各種設定が行える。設定可能なのは「画像サイズ」「露出補正」「ホワイトバランス」「フォーカス」「測光モード」「カラーモード」「手ブレ補正」の各項目で、そのほかにもAF補助光/グリッドライン/デジタルズームのON/OFFを選択できる。なお、「フォーカス」ではオートに相当するマルチAFと無限遠、「測光モード」ではおなじくオートに相当するマルチと中央重点を選択できる。

 それでは実際に動画を撮影してみよう。

 今回はほぼフルオート(出荷時のデフォルト設定)で撮影してみたが、室内・室外のいずれでもフォーカシングやホワイトバランスが極端に破たんすることもなく、十分に満足な画質を得ることができた。もちろん動画撮影中のズームも問題なく行える(デジタルズームについては使用/非使用を設定できる)。ただ、マイクが小さいためか室内ならばとにかく、室外では会話を拾いにくいこともあった。

 撮影されたファイルは.MP4ファイルとして保存され、4Gバイトのメモリースティックならば約9Mbpsの最高画質モード「720pファインモード」で約56分の録画が行える。約6Mbpsで記録する「720pスタンダードモード」も用意されている。いずれも720pだ。どちらを選択するかは用意するメモリースティックの容量で決めればいいだろう。

「720pファインモード」(写真=左)と「720pスタンダードモード」(写真=右)で撮影。静止画撮影時には気にならなかったが、室内では画面の暗さがどうしても気になる(クリックで.MP4形式の動画が再生されます)

 ファインモード/スタンダードモードではビットレートに差があるので画質を求めるならばファインモードを選択すべきだが、本体サイズからも伝わるよう、本製品は「スナップ感覚で動画を」というスタンスであり、そのことを考えれば、スタンダードモードでも何ら不満は覚えなかったことは書き添えておく。動画撮影モードとしては上記2つのほか、VGA/3MbpsのVGAモードも用意されているが、画面サイズ/ビットレートのいずれも上記2つに見劣りしてしまう。

 撮像素子は1/2.3型有効1210万画素CCD“SuperHAD CCD”で、レンズには35ミリ換算35〜140ミリの光学4倍カール ツァイス“バリオ・テッサー”(光学式手ブレ補正機能付き)を組み合わせている。 シーン自動検出機能「おまかせシーン認識」は、新たに顔の動きにあわせてISO感度やシャッタースピードを調整する「顔動き検出」が組み込まれたほか、笑顔を自動認識してシャッターを切るスマイルシャッターとの併用も可能となっている。

photophoto
photophoto 静止画作例。すべて自動シーン検出をオンにしたフルオート(おまかせオート)にて撮影。上段右の雪混じりの曇天ではシャッタースピードが1/40秒になって雪が流れてしまった

 さすがに「ハンディカム」など本格的なデジタルビデオカメラに比べれば動画撮影について見劣りしてしまう点も多いが、レンズカバーを押し下げるだけで撮影開始というサイバーショットTシリーズの軽快さは動画の撮影時にも継承されており、93.6(幅)×57.2(高さ)×15(厚さ、最薄部13.9)ミリという、名刺入れほどのサイズでここまでの動画撮影できることが純粋に楽しく感じられる。

 動画の記録形式にMPEG-4 SPを採用したことに賛否はあるだろうが、デジカメで撮影した画像のほとんどが最終的にはPCへ保存されている現状を考えれば、PCとの連携性を重視した判断はあながち的はずれとは思えない。サイズも含め、“気軽に撮る”の範囲を動画まで拡大した製品といえそうだ。

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