ITmedia NEWS >

快適さを高める、進化したNCイヤフォン、ソニー「MDR-NC33」レビュー

» 2009年06月11日 11時14分 公開
[渡邊宏,ITmedia]
photo 「MDR-NC33」(ブラック)

 現行のウォークマンシリーズでは、エントリーのEシリーズやヘッドフォン一体型のWシリーズを除き、ほぼ標準的な機能となったノイズキャンセル(以下 NC)。電車内や室内空調などのノイズを低減することからファンも多い機能だが、ウォークマンでは本体内蔵であることから二の足を踏む向きもあるようだ。

 ソニー「MDR-NC33」はそのNC機能を搭載した、単体のイヤフォンユニット。既存モデル「MDR-NC22」の後継となる製品でノイズ低減効果を「約90%」(同社)まで高めたほか、電池駆動時間の延長など細部のブラッシュアップをはかっている。

 基本的な構成はMDR-NC22と変わらず、インナーイヤータイプ(カナル型)のイヤフォンと、アクティブノイズキャンセリングを行うNCユニットを別構成としたつくりとなっているが、手にしてみるとMDR-NC22よりひとまわり小さくなった印象を受ける。

 利用する乾電池も単四形乾電池1本と変わらず、並べてみるとほぼ同サイズであることが確認できるが、電池ボックス部分の処理を本体と一体化するようなデザインに変更することで、見た目のコンパクトさを実現している。なお、MDR-NC22は乾電池1本で約50時間駆動したが、本製品ではその駆動時間が約100時間まで延長されている。

 本体ユニットに用意されているスイッチ類は電源オン/オフと、ミュートボタンのみと引き続きシンプル。NC効果の調整スイッチは設けられておらず、「MDR-NC300D」のような、周囲の騒音に応じてNC効果を自動的に調整する「フルオートAIノイズキャンセル」は備えていない。

photophotophoto スイッチ類はシンプル(写真=左)、背面にはクリップを備えている(写真=中、右)

 13.5ミリドライバを搭載するイヤフォンは、MDR-NC22とは異なり、ドライバを外耳道へ垂直に配置する「密閉型バーティカル・イン・ザ・イヤー」方式を採用しており、集音マイクがあることを除けばその外観は「MDR-EX700SL/500SL」および「MDR-EX300SL」とよく似ている。ただ、金属製ハウジングを採用するMDR-EX700SL/500SLとは異なり、ハウジングはMDR-EX300SLと同様に樹脂製だ。

 ドライバ方式が変更されたことで、MDR-NC22から装着感も変わっている。交互に装着してみると、MDR-NC22よりもより外耳道の奥へ差し込むような感覚を覚える。イヤーピースは3サイズ用意されているので、個人にあわせて付け替えるのがベターだが、イヤフォンの遮音性そのものも向上しているといって良さそうだ。

photophotophoto 集音用マイクを搭載し「密閉型バーティカル・イン・ザ・イヤー」方式を採用したイヤフォン(写真=左、中)、MDR-NC22と比較すると密閉型〜の特徴がよく分かる

 本体ユニットの左右両端からケーブルが伸びており、片方はポータブルオーディオプレーヤーなどに接続する3.5ミリステレオミニプラグへ、片方はイヤフォンに伸びている。それぞれの長さからすると、プレーヤーをカバンやパンツのポケットに収納し、NCユニットをエリなどに装着するスタイルを想定しているようだ。

 肝心のノイズキャンセル効果だが、地下鉄車内で試した限り、「低減効果約90%」をうたうだけあり、かなり高いと感じる。走行中の車内でスイッチを入れると、エアコンの動作音をはじめとした低い周波数帯域の騒音がかなりカットされ“聞きやすさ”が格段に向上する。

 車内や駅のアナウンスやガタンゴトンというレール音までを閉め出すことはないが、スイッチを切ると、低いノイズが急にまわりを取り囲むような感覚に陥る。スイッチを入れた際の感想しては、「静かになった」というよりも、前述したよう「音楽を聞きやすくなった」と表現するのが1番適切だと感じる。

 静かな深夜の室内では「サー」というノイズキャンセルの動作音が聞こえるが、電車内での知覚はほぼ不可能。スイッチオン/オフに伴う音質の変化が少ないのも、特徴として挙げられるだろう。

 音質については、形状から想像できるよう「MDR-EX500SL」に近いキャラクターを持ち、低音から中域にかけての厚みに特徴があり、高域の伸びも感じられる。だが、ハウジングが樹脂製の影響かMDR-EX500SLのような高域のキラキラとした輝きは薄く、低域も厚みこそあるものの音がダンゴになりやすい。空間表現力や繊細さにもやや欠ける。

 ノイズキャンセルイヤフォンという性質上、外での利用を念頭においた味付けともいえるが、全体としてはロックやポップスに適したキャラクターを前面に押し出しているように感じられた。

 本製品の販売価格は、直販サイト「ソニースタイル」で9975円。カナル型イヤフォンで1万円前後という価格帯は、各社がしのぎを削る激戦区であり、同社もMDR-EX500SL(同9980円)という魅力的な製品を用意している。

 同価格帯での音質比較という見方をするならば、MDR-EX500SLに軍配を上げざるを得ないが、ノイズキャンセルによって「聞きやすさ」「快適さ」を提供してくれる本製品も、選択としては悪くない。イヤフォンの主な使用場所が電車や航空機内という人は選択肢のひとつとしたい製品だ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.