パナソニックが7月27日に発表した新ブルーレイDIGAの最上位モデル「DMR-BW970」は、同社が久々に送り出す“プレミアム”なレコーダー。しかも2Tバイトの内蔵HDDといった単純なスペックの話ではなく、Blu-ray単体プレーヤーの領分といえるホームシアターユースを本気で狙ったレコーダーだという。
まず画質面では、定評のあるクロマアップサンプリングを新世代の「新リアルクロマプロセッサ plus」に変更。放送波に代表されるインタレース素材では、色の垂直解像度が従来の2倍になった。「デジタル放送などは1080iのインタレースで届くため、今までは参照する色信号も1段飛ばした場所(ピクセル)を参照していた。今回は、先にI/P変換を行うことで、より近い信号で(色信号を)補間できる」。
同社従来機を含め、一般的な機器はデコーダーでデコードと色垂直補間を行い、処理済みの信号をI/P変換用LSIに受け渡すのが普通だ。しかし、先にI/P変換を行うほうが、より近い場所を参照できるぶん画質的に有利になると判断したという。これに合わせてユニフィエの回路も変更したため、今回の新ラインアップの中でDMR-BW970だけが異なる回路構成のユニフィエを使用している。
BW970では、ユニフィエ内でデコードからI/P変換までを行い、10bit信号を色補完用LSIに渡して12bit化するという手順になる。このため、「ユニフィエ内部、あるいは密接に連携するLSIとの間では情報の欠落(bit落ち)が生じない。最終的に実効精度で12bitの映像信号をHDMI出力できるため、Deep Colorの能力も生かされる」(同社)としている。
音質面では、「真空管サウンド」と「シアターモード」がキーワードになる。BDやDVD再生時にシアターモードを選択すると、BW970はHDDやデジタルチューナーといった“ディスク再生には不要な機能”を停止し、冷却ファンも回転数を落とす。ノイズや振動を抑えることで、「高級プレーヤーレベルの音質を実現できる」という手法だ。
もちろん、チューナーやHDDが止まっていると、予約録画なども実行されなくなってしまう。このためモード移行時に「×時間後に録画が始まりますが、シアターモードに移行しますか?」といった警告が表示されるという。少々大胆な手法とはいえ、“分かっている人”なら、最も良い状態でDVDやBDを再生できる。
「HDDやチューナーを止めてしまうのは大胆かもしれないが、実際にHDDを止めると、2TバイトのHDDが“重し”となってさらに振動を抑えてくれる。またシアターモードをオンにしていると、BD再生が終わったあとも“BD”ロゴのスクリーンセーバーに切り替わるため、余韻を楽しめるでしょう」(同社)。
もう1つのユニークな機能が、独自のデジタル音声処理で実現する「真空管サウンド」。温かみのある真空管アンプの音にあこがれる人も多いが、それをユニフィエのデジタル信号処理によって再現するというもの。「真空管アンプは、周波数特性に独特の波形やひずみ、ヒゲと呼ばれる突出した部分などがあり、それが温かみのある音に影響している。これをユニフィエ内のデジタル信号処理で再現しようというのが真空管サウンド。ひずみやヒゲなども再現しています」(同社)。
動作モードは3つ。それぞれがさまざまな管球の音をタイプ別に再現するモードになっているというが、特定の型番(管球)などは明らかにしていない。またデジタル処理のメリットとして、BDの7.1チャンネル音声などもすべて真空管サウンドにできる点が挙げられる。真空管サウンドは、HDMIや同軸デジタルで出力可能。つまり、“モノラル真空管アンプを7台使ったような、ぜいたくな環境”を普通のAVアンプで楽しめるというわけだ。
音質を左右する各種パーツにも下位モデルとは異なるデバイスを採用した。例えばオーディオ用のD/Aコンバーターは32bitタイプを使用。S/N感の高いクリアな音質を実現するという。また本体底面に設けられたインシュレーターは、高硬度セラミック材を使用したものだ。可聴周波数帯域の振動を抑制し、それまで振動で隠されていた音も再現するという。このほかにもハイファイ・オーディオ機器でも採用されているピュアオーディオ用コンデンサ、音質に定評のあるローノイズオペアンプ、OFC電源ケーブルといった高音質パーツを採用している。
もちろん、別記事で触れた新しいMPEG-4 AVCエンコーダーや、HDD内ダビングも可能にした編集機能、WOWOWユーザーにうれしい「1カ月番組表」などはDMR-BW970でもサポートしている(→8倍録画にHDD内ダビング、機能充実の「ブルーレイDIGA」)。これまで、同社のBDレコーダーラインアップでは900/800/700番台でプラットフォームの共通化が進み、そのぶん機能的な差異が見えにくくなっていたが、今回は“ひと味違う”といって良さそうだ。
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