Bluetoothは、無線PNA(Personal Area Network)のカテゴリに含まれる近距離無線通信規格の1つ。PCとマウスやキーボード、あるいはヘッドセットと携帯電話をつなぎハンズフリー通話を実現するなどの用途に活用され、どちらかといえば広帯域を要求されないモバイルデバイスに適している。
2009年4月に正式発表された最新版のBluetooth 3.0は、理論上のデータ通信速度が最高で24Mbpsと普及しているBluetooth 2.1+EDR(最大3Mbps)に比べると高速なものの、取り扱うデータの高品質化が進むモバイルデバイスにとって、数年を待たずして足かせにならないとはかぎらない。Bluetoothが広帯域化を進めるとすれば、使用する帯域の見直しは必然だ。
その未来を占うキーワードの1つが「UWB(Ultra Wide Band)」。かつては軍事分野など限られた範囲でしか利用できなかった帯域が2002年に規制解除、無線機器や情報家電で利用可能になったもの。3.1〜10.6GHz(米国)の帯域を使うこの技術、次世代のBluetoothに採用される予定だったが……。
Bluetoothの規格策定を担う団体のBluetooth SIGは、知的財産のライセンスを巡る調整で決裂し、UWBの採用を見送る決断を下したようだ。そしてかわりに注目されているのが60GHz帯。直進性が強く障害物が多い場所では使いにくいなどの特性はあるが、1080pのHD映像を非圧縮のまま転送できるほど広い周波数帯域を備えることが利点だ。
問題は、複数の規格が60Hz帯ですでに存在すること。「WiressHD」はその1つで、おもにAV機器の接続を想定している。もうひとつの「WiGig」は、携帯電話やPCが主な対象で、規格策定にあたるWiGig Allianceには、IntelやMicrosoftなど無線LAN(IEEE 802.11x)に関係の深い企業が名を連ねている。
Bluetooth SIGが60GHz帯に参入するかどうかは、本稿執筆時点、正式には発表されていない。とはいえ一度採用を見送ったUWBを再検討するとは考えにくく、なんらかの形で60GHz帯を利用する可能性は高まったといえる。WirelessHDはおもにAV機器、WiGigはPCや情報端末と補完的な存在であるだけに、Bluetoothの参入を契機とした再編の可能性もなくはない。続報を待ちたい。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR