HD映像をワイヤレスで転送する、それが「WirelessHD」(WiHD)という規格の骨子だ。2008 International CESでの正式発表から1年が経過、今後の普及が期待されている。
現行規格「WirelessHD(WiHD)1.0」の仕様は、通信速度が最大4Gbps、機器間の最大距離が10メートル。60GHz帯を使用するため、世界各国で免許は不要。同規格に準拠していれば、メーカーの違いに関係なく映像/音声をやり取りできる。DTCP(Digital Transmission Content Protection)による著作権保護機構にも対応しており、各種デジタル放送やBlu-ray Discの映像も問題なく扱える。
ちなみに、無圧縮HD映像(1080p)の非圧縮伝送に必要な帯域は約1.5Gbps。無圧縮のHD映像を損失なく転送する、これをワイヤレスでやってのけるのがWirelessHDの最大の特徴でありメリットだといえる。
WirelessHDでは、機器間制御も可能だ。AVC(Audio Visual Control)と呼ばれるプロトコルでは、再生開始/停止や早送り/巻き戻しなどAV機器に用いられる一通りのオペレーションを定義、ビデオレコーダーの再生ボタンに連動してテレビの電源も入り映像が表示される、といった使い方が可能になる。
通信可能圏内にあるAV機器が互いの存在を認識することも、大きな特徴だ。従来のAV機器は端子の数にかぎりがあるうえ、どの機器と接続しているかを利用者側で認識しなければならなかったが、WirelessHD時代はその必要がなくなる。AV機器のレイアウト自由度が高まるという利点については、あえて書くまでもないだろう。
今年のCESでは、WirelessHD 1.0対応の製品がいくつか発表された。新世代プラズマパネル技術を採用したパナソニックの“VIERA”「Z1」は、この夏にも北米向けに出荷開始される予定だ。Cell TVで話題をさらった東芝もアダプタータイプのプロトタイプを展示するなど、メーカー側の積極姿勢も感じられるだけに、今後この流れが加速することは確実だろう。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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