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» 2009年12月28日 08時00分 公開

麻倉怜士のデジタル閻魔帳:デジタル分野総ナメ――「2009年デジタルトップ10」 (3/4)

[渡邊宏,ITmedia]

――5位はBDで復刻された「オズの魔法使い」「風と共に去りぬ」です。

麻倉氏: 今年の大ニュースのひとつは、名作の高画質BD復刻でしょう。これは去年ぐらいから「眠れる森の美女」「007」などで流れとしては存在しましたが、今年になって本格化しました。

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 オズ〜は1939年の作品ですが、BD化に際してオリジナルネガから8K×4Kの解像度でスキャンを行い、リストアすることで素晴らしい映像を実現しています。モノクロ映像から始まり、途中からカラー映像に変わる有名な演出では、テクニカラーの三色レジストレーションが完全に合致しており、素晴らしい色の厚みが上手に再現されています。

 映画を劇場で公開する際にはネガのダビングを行わざるを得ませんから、その過程でノイズが堆積しますし、使用しているとどうしてもキズや劣化は避けられませんでした。ですが、オズ〜も風と共に〜もオリジナルネガのヒトコマヒトコマをスキャンし、修復しています。

 つまり、オリジナル(マスター)に極めて近い映像となっており、当時の劇場でも見ることのできなかった「完全オリジナル」を自宅で楽しめるのです。非常に素晴らしいことです。

――映像作品が続きます。4位はNHKの定評あるクラシックBDの最新作「ハイティンク指揮 ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 ペライア」ですね。

麻倉氏: これは音楽芸術の映像化として最高峰といえる作品ではないでしょうか。「曲・音楽」「演奏」「映像」「音質」「サラウンド」の5つの素晴らしさをすべて兼ね備えており、これまでのBD音楽作品としては一番の出来栄えです。

 音楽映像の映像とは、音を邪魔せずに音楽をもり立てることが大切で、カメラワークひとつにしても、スイッチ/パンニングが忙しいと音楽を楽しめません。このBDは一番良い席座って全体を見渡しつつ、ソロがあればそこへ目をやるという、静かで穏やかな音楽的なシークエンスが光ります。映像も素晴らし。色が深く、味わい深いですね。

 音質はいうまでもなく圧倒的です。この公演が行われたコンサートホール(オランダ・アムステルダム コンセルトヘボウ)は低音が素晴らしく残響も深いのですが、その雰囲気を実に上手に表現しています。演奏が始まる前のざわめきからして素晴らしい音場感なのです。

――さてベスト3に入ります。3位に挙げられたのはmhiのブックシェルフスピーカー「エビデンス」です。

麻倉氏: これは元パイオニアのスピーカー企画者が作ったブックシェルフスピーカーです。彼はアルテックが好きで、聞きやすくて低価格、聴き飽きない製品を作りたいと考えて、独立したある会社に移った後に開発したスピーカーです。現在はサエクコマースを経由してから販売されています。私がLAのとある方の自宅で聴いたら際に感銘を受け、これまで記事などで言及してきました。

 特性としては10万Hzまでの広帯域が確保されており、クロスオーバーについても一般的な製品が2〜3kHzと声の倍域成分とかぶることが多いのですが、エビデンスはこの帯域を避ける設計になっているため、ボーカルにつやがあってよどみなく流れます。大編成オーケストラを大音量でという用途にはあまり向きませんが、ボーカル曲や小編成のジャズなどは最高です。特に真空管アンプに合います。

 比較的安価なので(ペアで8万4000円)サラウンドを試したところ、マルチチャンネルにおいても予想以上のパフォーマンスを発揮してくれたのはうれしい発見です。ユニクロ的というか、安くて高品質な製品です。新しい時代にマッチしたスピーカーといえるのではないでしょうか;

――2位は村田製作所の“ハーモニック・エンハンサー”「ES105A suono」です。少し聞き慣れない製品ですが……。

麻倉氏: これは15kHz〜100kHの再生帯域を持つ、いわゆるスーパーツィーターです。スーパーツィーターの搭載には、SACDやDVD-Audioなどでフォローされる超高音域を再生するという意味もあるのですが、本製品は取り付けることで可聴帯域での倍音成分の再生を可能とし、立ち上がりの素早い、シャープな音を楽しめるようになるという音質的なメリットが得られます。

 音とは基本の音と倍音で成り立ちますが、倍音が音として表現されるかはスピーカー(再生機器)に依存しています。本製品は既存のスピーカーシステムへスーパーツィーターとして装着することで、それを音楽的に巧みに補ってくれるのです。取り付けると途端に、音に浮遊感と精細感が加わります。オーケストラの各パートが織りなすハーモニーの様子が目に見えるよう。閉じ込められた音が解放され、音楽的な生命力が付与されたようです。

 すべてのスピーカーに取り付けることができますが、8万4000円という価格をどう見るかでしょう。ですが、使っているスピーカーの潜在能力を圧倒的に引き出すことのできるのです。音楽を楽しむ要素が、宝箱の鍵を開けたかのように一気に広がりますよ。

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