今年もハイビジョンビデオカメラの春モデルが出そろった。各社の製品を詳しく紹介する前に、もう少し視野を広げて、いまのフルハイビジョン動画撮影をめぐる全体的な状況を見ておいても損ではないと思う。
というのも、いわゆる「ビデオカメラ」のカテゴリに属さない製品でも、気軽にフルHD(1920×1080ピクセル)の動画撮影が行なえるようになっているからだ。なかでも、「EOS 5D MarkII」などデジタル一眼の動画撮影機能は、レンズ交換による表現の自由度と、大型の撮像素子による絶対的な画質の高さから、プロモーションビデオや映画といったプロの世界で大きな注目を浴び、瞬く間に浸透した。
そこまでレベルの高い話でなくても、キヤノンがエントリークラスの「EOS Kiss X3」「EOS Kiss X4」に本格的な撮影モードを搭載しているほか、パナソニックもマイクロフォーサーズ規格の「DMC-GF1」を「ムービー一眼」と銘打ちアピールしている。こうした流れは今年も続くとみられ、デジタル一眼による動画撮影は一般家庭へもさらに広がっていくだろう。
また、ソニーはコンパクトデジタルカメラでありながら、AVCHD形式でのフルHD動画撮影が可能な「DSC-TX7」「DSC-HX5V」を今春投入。テレビCMの撮影にも使えるほどの実力を備え、従来の「おまけ」という位置づけを超えた本格的な撮影を楽しめる。こちらもデジタル一眼レフカメラと同じく、スチルカメラからのフルHD動画へのアプローチとして注目されている。
ではフルHDの撮影が可能なデジタル(一眼)カメラを買えば、ビデオカメラはもう不要なのか? といわれれば、イエスでもあり、ノーでもある。最大のポイントは、現在のデジタルカメラは、「動画を手軽に撮り、撮ったものを自宅のテレビで見るためのハードウェア」としては未熟な点が多いということにある。
カメラの操作そのものが好きな人たちを除けば、目的の動画をなるべく手軽に得たいのは、プロもアマチュアも変わらない。だが、プロはデジタル一眼の動画機能がもつ未熟な点と魅力を把握したうえで、魅力が勝ると判断すれば、手間や時間やお金をかけて未熟さを補うことができる。一方、未熟さと魅力のどちらを取るべきか分からないのなら、目的を手軽にかなえるために断然有利な道具であるビデオカメラを選んだほうが幸せになれるというわけだ。
そこで家庭用のビデオカメラは、目的の動画を簡単かつ確実に得られることが重要になってくる。もちろん、カメラの操作そのものを楽しみたい層も確実に存在するので、各メーカーとも少なくとも2段構えの商品構成となっている。
いわゆる上位機はカメラ好きのために用意されたモデルで、高度なマニュアル撮影を得意とする。だからお父さんのカメラ欲は満足できるが、子供を気軽に撮影したいだけのお母さんにはちょっとツライかもしれない。本体サイズが大柄なうえ、意図せず触れたらどうなるか分からないボタンがいくつも並んでいるから、失敗が怖くて手に取れないのだ。
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