ITmedia NEWS >

3Dテレビの“鉄則” プラズマテレビ編麻倉怜士のデジタル閻魔帳(2/3 ページ)

» 2010年04月23日 15時13分 公開
[聞き手:芹澤隆徳,ITmedia]
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 パナソニックの3Dテレビに関しては、クロストークがとても少ない点はすばらしいと思います。それとコントラストもいい。今回はパイオニアが開発した種火なしのプラズマ発光「ノンプライマリー方式」を採用して、コントラスト比を500万:1にまで引き上げました。その結果、奥行きと立体感のある映像になりました。黒い部分は黒くないと、奥行き感はあっても現実感に欠けてしまいますから。

 解像度についても同じです。「3Dは2Dの半分の解像度があれば、それなりに見える」という研究結果もありますが、私は違うと思います。立体感はあっても、映像がボケていてはその矛盾に脳がおかしいと感じてしまいます。これはコンテンツによっても違いがあり、例えばアニメなどは最初からファンタジーなので大きな違和感は感じませんが、実写の場合は実景の記憶がありますから、脳が違和感を感じてストレスとなります。3Dテレビは、常に“最高画質”でないといけません。

photophoto 「らくらくアイコン」に「3D映像」が加わった(左)。3Dテレビの画面に見入る麻倉氏

 パナソニックのVTシリーズに話を戻しましょう。まず、黒が締まって白も感じることが、3Dのリアリティーを高めています。色再現性もいいですね。2Dでは、こってりとした油絵のような質感表現で、ワン・アンド・オンリーの絢爛(けんらん)さを生かしています。「シネマモード」と「ハリウッドリマスター」を入れて映画を見たときは本当に絶品。色は濃いが、すごく説得力のある映像になります。

 3Dでも傾向は同じで、色の階調性が良く、コントラストと色再現の良好さもあってリアリティーが高い。見る人に不自然さを感じさせません。そして視野角の広さと動画解像度の高さも大きなアドバンテージ。VA方式の液晶テレビは、センターのコントラストは良いのですが、私の感覚では45〜50度が限界で、それよりも横に行くとガンマが変わってきます。プラズマにはそれがありません。

 動画解像度については、「ネオプラズマパネル」のときに向上させたことが大きく貢献しています。3Dのプラズマは120Hz駆動、一方の液晶は240Hz駆動と聞くと、液晶のほうが良いと思うかもしれませんが、液晶の場合は同じフレームを2枚描いて、最初の絵は(混じるから)バックライトを消灯する仕組みです。動画対策用の中間フレームは入っていませんから、これはクロストーク対策であって、動画対策にはなっていないのです。

――では、問題点はないのでしょうか?

麻倉氏:3D VIERAの問題点は、輝度です。ピークは立つのですが、全体的に白いシーンでは輝度を下げますから、若干暗い印象になります。劇場のように周囲の明かりを落として見るぶんには問題なくても、メガネをかけると偏光フィルターの関係で透過率が悪くなり、全体的に暗くなってしまいます。液晶の3Dテレビと比べても若干暗めに感じるところがあります。日常生活の中で3D映像を見てもらうのなら、もっと白をのばしてほしいところですね。

 それから、黒の階調性はもう少しがんばれるかな? と感じました。3D表示では、2Dよりも短い一定の時間で120枚のフレームを表示しなければなりません。プラズマはサブフィールド表示なのでもともと発光回数が多いところをさらに多くしなければならならず、階調をとるのか、S/Nをとるかの選択になります。階調をもっとがんばらなければなりません。

 もう1つ。画面がグレアというか、反射するのは良くありません。映り込みは、2Dよりも3Dのほうが問題です。なぜなら、3D映像はそこで体験を得ようとする“凝視コンテンツ”。そこに2Dの人が映り混むと、気持ちがそがれてしまいます。

 表面処理は、3Dテレビにとって大きな問題です。しかし、つやっぽい映像を出そうとすると、反射してしまうのが今の表面処理です。これを昔のノングレア処理に戻すのかといえば、それも問題でしょう。でも、ニーズがあれば、新しい技術がそれを解決するもの。さきほどの緑の蛍光体もそうですが、絶対に直らないと言われてきたことが実現しています。つまりやる気の問題でしょう。

photo 3D対応VIERAに付属するアクティブシャッターメガネ

 それともう1つ。根本的な部分で、なぜプラズマテレビを液晶越し(液晶シャッターメガネ)に見るのか? とも感じます。プラズマは、コントラストや色階調性が高く、肌色や中間色がすばらしい。でも、3Dになるといかにも液晶を透過しているようなギラツキ感が出て、その良さがスポイルされてしまう。プラズマでメガネを作れというのはご無体でしょうが、このままでよいのでしょうか。それはともかく、このままでよいのでしょうか。

 3Dメガネについて話しますと、ソニーとパナソニックでは少し作りが違います。ソニーは偏光フィルターを外して、フリッカーが出るのを防いでいます。フィルターがあるとインバーターなしの蛍光灯、調光機能付きのLED電球などを使用している環境ではフリッカーが出ます。健康面から考えても、フリッカーはストレスになりますから良くありません。偏光フィルターを省くと、顔を傾けたときにけっこうクロストークがでるのですが、3D視聴では「正しい距離(ハイビジョンと同じ3H)、正しい位置(真正面)、正しい姿勢(直立)」が大原則になるので、ソニーの場合はそれほど大きな問題にならないはずです。

photo

――試聴したソフトについてはいかがでしょう。3Dの映画ソフトは間に合わず、今のところテレビに付属するソフトしかありませんが、それぞれの印象をお願いします

麻倉氏:まず「沖縄水中散歩」ですが、比較的、自然な3D効果が得られています。しかし、屋外のシーンに変わると、昔風の撮り方による“強調した立体表現”があって、不自然さは残りました。

 「アストロボーイ」のトレーラー(予告)は、自然な3D映像に仕上がっていました。今は計算で立体感を作り出すことができるので、3D CGは3Dテレビに適したコンテンツです。すでにセオリーができていますから、3D効果も十分。見ている人も疲れることは少ないのではないでしょうか。「グランドキャニオン」は、たいへん誇張気味でしたね。「これぞ立体!」という懐かしい感じの絵です。不自然です。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.