ガンダムファンの心をわしづかみにし、多くのユーザーが度肝を抜かしたガンダムケータイが9月中旬以降、約2年半ぶりにリリースされる。今度のテーマは直球ストレートの「ガンプラ」。1/100スケールのメタルインフレームを採用した専用モデルを同梱し、端末もプラモデルのディテールを再現している。このこだわりやインパクトが受け、予約は前モデルを上回るペースで集まっているという。
ガンプラケータイはどのようして生まれたのか。2007年11月に、いてもたってもいられずシャア専用ケータイの企画者にインタビューしたガンダムファン兼ケータイジャーナリストの筆者こと石野純也が、再びソフトバンクモバイルのメンバーに企画秘話を聞いた。インタビューにはプロダクト・サービス本部 商品企画統括部 商品企画部ID課 兼 ビジュアル課の浦元芳浩氏、商品統括 プロダクト・サービス本部 商品開発部 商品性管理1課の琵琶武久氏、商品統括 プロダクト・マーケティング本部 MD統括部 端末MD部 MD戦略課の片桐正道氏にお答えいただいた。
――(聞き手:石野純也) シャア専用ケータイこと「913SH G TYPE-CHAR」の登場から約2年半が経ちました。このモデルを購入したユーザーさんからの反響はいかがでしたか。また今回、このタイミングでガンプラをテーマにしたケータイをリリースする理由はどんなところにあるのでしょうか。
片桐氏 913SH G TYPE-CHARは、お客さまからの評判がすこぶる良かったんですね。発売から1年ぐらい経ったあとで行った満足度調査でも、「まだずっと使い続けたい」という声を多くいただきました。また、その中には「後継機をぜひ出してほしい」という意見もありました。“次に出すとしたら何がいいのか”を創通さん、サンライズさんを含めてディスカッションしました。その結果や、昨年がガンダム30周年、今年がガンプラ30周年ということを踏まえ、今回の機種は、ガンプラをテーマにしたモデルで行くことにしました。
―― 先に「ガンプラ」があったということでしょうか。
片桐氏 そうですね。2009年にお台場に等身大のガンダムが設置され、2010年はガンプラ30周年。そういった流れは意識して企画しています。
浦元氏 (913SH G TYPE-CHARの充電台として用意した)ザクヘッドもある意味ガンプラでしたが(笑) ただ、今回は片桐が申し上げたような節目の年でもあり、ガンダムの一般認知が高まったタイミングだったと思います。お台場のガンダムを見に行った人たちも相当な数だったと聞いています。ここまでのポジションのキャラクターは、ドラえもんかガンダムぐらいのものなので、我々としては継続的に何かできないかと常々考えていました。
そういった状況の中で、前回のモデルをいい意味で超えたかったのですが、キャラクターとしてのシャア・アズナブルは非常に強いのです。企画していく中でも、今度はガンダムヘッドを付けるか、やはりジオン軍の方が世界観もあるのでズゴックのバストアップにするか、ちょっと趣向を変えてハロにすれば愛くるしさもあって女性にも響くのでは、といった色々な案が出ました。ただ、シャアとシャア専用ザク、そしてシャアが持つケータイというコンセプトとは違った驚きや高揚感も味わってもらいたかったんです。
今年は幸いにもガンプラ30周年だったので、ストレートにガンダム、そしてガンプラというところで企画し、端末デザインやアクセサリまでトータルで“らしさ”を出していきたいな、と。今回は全体のテーマがガンプラだったので、その世界観は前提でしたね。
―― 今回は王道を狙った、と。
片桐氏 前回の企画はかなりインパクトが強かったので、それを超えるのは大変でした。ケータイだけカスタマイズする選択肢もありましたが、それだけでは前回以上のものになりません。
琵琶氏 かと言って、同じようにガンダムヘッドを入れると二番煎じに見えてしまい、お客さまに飽きられてしまいます。そういったものは出したくないという思いは、強かったですね。
―― 前回は「シャアが持つ」という設定でしたが、今回は何か設定はあるのですか。
浦元氏 形がケータイなので、ガンダムそのものと言うとちょっと無理がありますが、表現として、外装はRX-78-2ガンダムのプラモデルを目指しています。開いた時のイメージはコックピットです。それに合わせて、外装はマット仕上げのガンプラホワイトを忠実に再現しています。とはいえ、マットな質感は安っぽく見えがちなので、パールによる光沢も入れ、上品さを出しています。開いたときの外観は、コックピットの中を想起させるブラックを基調にしつつ、計器類を想起させるオレンジを使いました。そういう意味では、ガンダムに登場する誰かが持つというよりは、ガンプラそのものがコンセプトです。
―― なるほど。ケータイもガンダムというわけですね。
琵琶氏 実際、内蔵コンテンツにもコアファイターのコックピットがモチーフになっているものがあります。単なる静止画ではなく、イベントも含めてお客さまに驚きを与えるものを、Flashで作り込みました。バッテリー残量やアンテナバーの状態によって画面が変わったり、タイミング次第ではコロニーや地球が見えたりします。時間によっては、敵機が出てきてスコープに表示されることもあり、その中には“赤い彗星”も現れることがあります。もちろん、全てがコックピットというわけではなく、ガンプラもイメージしました。ガンダムの設計をワイヤーフレームで見せた待受画面なども内蔵しています。
―― それだと画面を見るために何度も開閉したくなりますね(笑)
琵琶氏 913SH G TYPE-CHARのときより、端末自体のスペックが大幅に上がっているので、専用コンテンツもかなりの数になりました。当時の倍近くは用意しましたね。
―― 倍ですか! さすがガンダム。
琵琶氏 先ほどから申し上げているように、一番のウリは、ガンプラとケータイが一体になったことです。そこで、端末にも「チャージングシアター」という、充電器にセットするだけで自動的にムービーもしくは写真が再生される機能を入れました。特典ムービーはガンダムがホワイトベースに帰還したことを彷彿とさせるもので、各パーツのシステムをチェックするシーンと、それに関連した名シーンが表示されます。全部で14カットあって、全部で約4分半程度のコンテンツになっています。
―― これは、通常の945SHにも入っている機能なのでしょうか。
琵琶氏 機能自体はあります。ただ、通常の945SHではデフォルトがオンではありませんし、当然、このようなムービーも入っていません。
―― 端末を改めて見てみると、今回もきせかえにものすごく凝っていることがうかがえます。
琵琶氏 きせかえアレンジも、Flash素材を交えて、深い階層までカスタマイズしています。バッテリーピクトやアンテナバーは当たり前で、より深いところまで手を入れ、連邦軍のモチーフを採用したデザインにしています。また、913SH G TYPE-CHARでは(シャアの声を担当した)池田秀一さんの声でしたが、今回は古谷徹さんにお願いしてアムロのボイスを再収録しました。
そのほかにも、セイラさんやブライトさんなどによる名シーンの声や、楽曲、効果音など特徴あるものを多数入れています。楽曲データだけでなく、歩数計やアラームなど、ポイントポイントで出てくる音も、全て945SH G Ver.GP30th向けに変えています。シャッター音は“ラストシューティング”のビームライフルの音なんですよ。
―― 細かい話ですが、今回使用されている音声はすべて再収録されたんですか?
琵琶氏 いくつかの音声については再収録ではなく、残っていた音声を使用しています。細かいところで言いますと、945SHには、写真のピントが合わなかったときに「ブレています」と伝える画像が出るのですが、ここも変えてあります。シャアザクがブレた状態で表示されるんです(笑) 数にすると全部で4ケタぐらいの素材を入れ替えましたね。
―― シャアザクを撮っているわけですね(笑)
琵琶氏 こういう部分は通常のきせかえアレンジでは変えられませんが、この機種ではあえて手を入れています。カメラの周囲は、ビームライフルの照準をモチーフにしていますし、ガンダムのシールド風のバッテリーカバーも付けました。内蔵コンテンツも、それにマッチするように作り込んだということです。
―― 945SHの原型が残ってないような感じですね。
琵琶氏 マイ絵文字も一部差し替えました。日本語入力時に「あむろ」や「ずごっく」と入れると、その絵文字が出るようにしてあります。
―― 辞書までカスタマイズしてるんですか!? それはスゴイ!
片桐氏 ワンセグのアイコンなども、一部カスタマイズしています。また、これは当たり前かもしれませんが、メールのアイコンにもトリコロールカラーを採用するなど、ベースモデルとは変えてあります。サブディスプレイもガンダムグラフィックがデフォルトで表示されます。キーに使っている数字やアルファベットにはガンダムフォントを採用していまして、画面に表示される文字も同じものにそろえてあります。
1号機(913SH G TYPE-CHAR)を購入してくださった方の声を聞いたところ、かなり細かい部分まで変更をかけたソフトウェアや、デザインへのこだわりなどが評価されていることが分かりました。ですから、2号機(945SH G Ver.GP30th)でも、そういった部分は踏襲しています。
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