さて、ここで結論を言おう。上記のような部分に注意すれば、ヘッドフォンアンプはポータブルプレーヤーのサウンドを確実に向上してくれる。しかもそれは、誰もが一聴で体感できるレベルでの話だ。特にこれまでの記事で紹介したような、中級〜上級イヤフォン/ヘッドフォンでは、効果のほどを確約できるほど。音楽をより楽しませてくれるアイテムとして、ぜひヘッドフォンアンプを活用しよう。
ヘッドフォンアンプを活用するうえでキモとなるのが、ドックコネクターからライン出力のアナログ音声を取り出すことができる、ドックケーブルの活用だ。これを利用せずヘッドフォン端子から音声を取ると、せっかくのヘッドフォンアンプも宝の持ち腐れとなってしまう。製品は各社から発売されているが、先日発表されたばかりの「Fiio L9」(2310円)は、長さ6センチのPCOCC-A導体ケーブルがコネクター部横出しでレイアウトされており、サウンドクオリティーとともに使い勝手の良さも嬉しい。
今回の試聴には、製品の特徴を様々な角度から検証するため、ポータブルプレーヤーやイヤフォン/ヘッドフォンに関しては、複数のモデルを使用した。それらの製品をここで紹介しよう。
ポータブルプレーヤーの定番でもある「iPod nano」を、今回のメインプレーヤーとして使用した。最新モデルである第6世代は、ヘッドフォン出力だけでなくライン出力にも独特の音質/音場的な瑕疵があり、評価の基準には適さないと判断。第4世代モデルを活用することとした。第4世代モデルのヘッドフォン出力の音は決して上質とはいえないが、ライン出力はそれなりのクオリティーが確保されているため、ヘッドフォンアンプの評価にはもってこいの製品だ。
iPod nanoとともにiPod touchも適宜音質チェックに活用した。使用した製品は第3世代となるが、音質的には最新の第4世代と大きく差はないため参考にはしてもらえるだろう。ヘッドフォンアンプを組み合わせたサウンドを試聴するとともに、iPod nano+ヘッドフォンアンプの音質に対しての差などもチェックしている。
ソニー・ウォークマンの最新モデルにして最上位モデルは、フルデジタルアンプS-Masterにより良質なサウンドを実現しているほか、付属ヘッドフォンを活用することで騒音を約98%もカットするデジタル方式のノイズキャンセリング機能も利用できる。「ヘッドフォンアンプは必要ない」と巷でいわれるほど音質に定評あるウォークマンだが、実際にヘッドフォンアンプと組み合わせることでどのような効果がみられるかをチェックした。
高級カナル型イヤフォンブーム立役者のひとり、SHUREの最新かつ最上位モデル。解像度感、帯域バランス、音数の多さ、空間表現など、サウンドクォリティーに定評を持つ製品である。当然ながら、ポータブルプレーヤーのヘッドフォン出力ではその実力を存分に発揮しきれていないことは分かっている。ヘッドフォンアンプを活用することで、SE535がどこまでクオリティーアップするかを今回1つの指標とした。
昨年登場したフィリップスの最上級モデル。バランスド・アーマチュア型ドライバー1基とは思えないワイドレンジ再生とイヤーチップが360度動くフレックスインイヤー構造によって、高いフィット感と上質なサウンドを提供してくれる。実はこのSHE9900、一聴するとおとなしめのHiFi調サウンドに思えるが、それはアンプの駆動力に対し敏感に反応した結果。ヘッドフォンアンプの駆動力によっては、SHE9850を純粋にクォリティーアップしたかのような、メリハリと勢いのあるサウンドも垣間見せてくれた。主にヘッドフォンアンプの駆動力チェックに活用。
リファレンス・スタジオモニターと銘打った、ソニー製オーバーヘッド型ヘッドフォンの新フラッグシップモデル。ヘッドフォンアンプに強烈な駆動力を求めるタイプではないが、すべての音をさらけ出すきめ細やかさと高SN、ワイド&フラットレンジを持ち合わせる優秀さによって、製品の音質的特徴を確認するのに大いに役立った。
iPodのドックからアナログライン出力を取り出すのに活用する、iPhone/iPod/iPad対応のDOCKケーブル。ケーブルにPCOCC-A導体を使用するなど、比較的リーズナブルな価格ながらも音質に対してこだわりを持つ。長さは8センチ。
ウォークマンのS/A/E/Xシリーズに採用されるWMコネクター搭載モデル対応のDOCKケーブル。iPod用のL3同様、PCOCC-A導体ケーブルを使用するなど使いやすさだけでなく音質に対してのこだわっている。長さは8センチ。
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