麻倉氏: 例えば、オフィスで昨夜の連続ドラマが話題になったとしましょう。見ていないと話について行けず、予約録画していなければ翌週の放送を待つことになってしまいます。しかし、全録なら確実に録画されているので、家に帰れば話題になった場面をすぐにその場で見ることができます。NHKや一部の民放局では見逃し番組を再生するサービスをしていますが、全部の番組では到底ないです。ところがローカルの全録なら、すべてを見ることができ、最先端の話題に素早くキャッチアップできます。
また、「今放送しているものを全部見たい」というニーズは強いです。あるニュースに対して放送局ごとに報道スタンスがどう違うのかを見たい。でもレコーダーがあっても同じ時間帯のニュースを同時に見るのは難しい。全録マシンなら視聴する時間をずらすだけですべて視聴できる。これは便利ですね。
録画機が登場するまで、われわれはテレビを生で見ることしかできませんでした。見たい番組を見るには、その時間にテレビの前にいる必要があり、見たい番組が始まる時間に間に合わせるため、急いで帰宅するといったことも昔は日常的にやっていましたよね。朝はニュースを見て、帰宅したらドラマを見るというように、生活自体をテレビ局が作成した番組編成表に合わせてきました。テレビ局が日常を支配していたのですね。
全録は、こうした旧来の慣習を完全に粉砕することが革命的なのです。ユーザーは、自分に都合のよい時間に見たい番組を見ることができます。テレビ局の編成を無視して、ユーザー自身が番組表を組み立てる。これが実に画期的で、テレビ局にとっては皮肉といえるかもしれません。テレビはメディア産業の最大の“出口”であり、テレビ局の意向がすべてを支配していましたが、全録ではユーザーに自由に見る権利が与えられるのです。
――それでは、“REGZA”の「ZG2シリーズ」をどう捉えていますか?
麻倉氏: 今回、東芝が発売した“REGZA”の「ZG2シリーズ」は、全録のメリットを享受できることに加え、もう1つ重要な要素があります。それはテレビの中に入ったということ。これまでの全録は、あくまでも単体レコーダーとしての進化形でしたが、テレビに入ったことでテレビそのものの使い方も大きく変わってきます。前身として「CELL REGZA」があり、今回は「レグザエンジンCEVO」を使って、よりスピーディーかつパワフルになり、しかも価格が大幅に下がりました。
全録の先駆けとなったSPIDERシリーズやCELL REGZAは、マニア層や仕事上の理由で使っている人が多かったと思います。しかし、ZG2シリーズのような“ちょっといいテレビ”に全録が入ったことで、ユーザー層は拡がります。つまり、一般の方々にも“視聴革命”が起きるのです。
新しい機能もあります。例えば「始めにジャンプ」。今までは、テレビをオンにしたとき、放送していた番組が面白くても、録画していなければ途中から見ることしかできませんでした。しかしZG2シリーズでは、リモコンの「始めにジャンプ」ボタンを押すだけで瞬時に視聴中の番組を頭出しして、始めから見ることができます。
さらにネットサービスと連携して面白いことができます。録画した番組はたくさんあっても、どうやって好みの番組を見つけ出せばよいのか分かりませんよね。「おすすめサービス」では、REGZAやRDシリーズのユーザーが録画予約した番組のランキングを見ることができます。これは、他の人のおすすめ番組を知ることができるサービス。従来の録画予約では、自分が知ってる範疇(はんちゅう)でしか番組を探すことができませんでしたが、自分が知らないだけで実は好みそうな番組もあるでしょう。自分の価値観だけでなく、世の中にあるさまざまな価値観をもとに、自分にとって価値ある番組を知ることができます。
「レグザAppsコネクト」のタグシェアの仕組みも面白いですね。見た人たちの感想を、タグと一緒に引っ張ってくることができる。ほかの人が見て注目したシーンや面白いと感じた部分を手軽に視聴できる。テレビというコンテンツをより面白くするユーザーフレンドリーな機能ですね。
これらの点から、私は全録を内蔵したZG2シリーズにはとても注目しているのです。今後、こうしたテレビがどんどん普及したら、テレビ局は今と同じ編成を続けるのでしょうか。蓄積メディアを持った製品が多数を占めたなら、個別のユーザーに対応して、スポーツ好きな人にはスポーツ番組を送るとか、ターゲットを絞ったコンテンツ配信の方法を考えるかもしれません。将来のコンテンツプロバイダーとユーザーのあり方を変える、全録テレビは、その起爆剤になる可能性を秘めていると思います。
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