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日本流スマートテレビは“執事”を目指せ麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(2/4 ページ)

» 2011年08月22日 18時23分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 事実、ソニーがGoogle TVを搭載した「Internet TV」を北米で販売していますが、CESで「テレビの変革」と大々的に打ち出した割に、ほとんど売れていません。それもそのはず。Googleの検索画面を出して、キーボードの付いたリモコンを使うようなテレビは、使いにくいだけです。例えば、世界で何が流行っているのか知りたくて「Youtube」などを使うとき。PCなら複雑な検索条件で確度を上げる良さがありますが、テレビではより簡単な操作で検索結果が分かりやすく表示される必要があります。しかし、現状ではそうなっておらず、単にPCで見るのと同じ画面が大きくなるだけ。テレビメーカーが考えるべき、テレビなりのバリューは見られません。つまり、Googleの提供したものを単純に取り付けただけで、ソニーなりの価値が入っていないのです。

――では、現在のテレビでスマートといえそうな機能を持つものはありますか?

麻倉氏:スマートテレビとはうたっていませんが、まず東芝の「CELL REGZA」は近い機能を持っていると思います。つまり、すべての番組を録画しておき、ほかのユーザーが録画した番組をランキングする機能ですね。今、仕事の都合で手元にレグザの「ZG2シリーズ」がありますが、やはり使い始めるとたいへん便利です。深夜帰ってから、昼の番組が全部見られることの凄さは使ってみないと分かりませんね。18時台の民放ニュース番組の独自取材ものがこれほど面白いとは全録で初めて発見できました。タグシェアの仕組みで誰かの推薦番組を見るのも面白いです。これは、コンテンツが地上波中心の日本のテレビ事情にも合っていますし、放送番組に対するアプローチを深く広くして、自分の視聴体験を広げるというスマートさを持っています。

レグザの「ZG2シリーズ」

 もう1つは、前述のAQUOS L5に採用されたスマートフォン連携です。こちらはユーザーの使い勝手を研究したことが伺えます。単に画面上のスマートさ(デザイン等)だけでなく、実際に使うときのスマートさを考えています。それも個々の技術としては以前からあったものをまとめ、システム的な発想で造られているのですが、例えば2つめのスクリーンとしてのスマートフォンがメインのテレビと分かれている必然性も感じられます。本来の意味でスマート(賢い)という製品ではないでしょうか。

スマートテレビは執事になるべき

――9月のIFA、10月のCEATEC JAPANでは国内メーカーからも多くの発表があると思います。今後、スマートテレビはどのような方向に向かうのでしょう

麻倉氏:考え方はさまざまだと思いますので、今回は「私が欲しいスマートテレビ」について話しましょう。まず、米国発や韓国発の概念にのっかるのではなく、独自の“賢さ”を持ってほしいということ。テレビはもう明らかにインターネットと融合しています。今まではできなかったこと、ユーザーが夢に描いていたことが実現する環境が整っています。これは、スマートなテレビを考える上で重要ではないでしょうか。

 中でも重要なのは、冒頭で挙げた検索性です。あまりにも膨大な情報があり、ユーザーは何を見て良いか分からない。自分の好みにあうコンテンツを見つけるのに一苦労です。

 ですから、テレビがユーザーが興味を持っている分野を把握して、放送やネット動画の中からコンテンツをストックしてくれる機能がほしいですね。さらに番組の中身まで把握して、必要に応じてダイジェストを見せてくれたりもするといいでしょう。いわばテレビコンシェルジュ、いえ、これはもう“執事”ですね。単に要望に応えてくれるだけではなく、ユーザーの先回りをして用意を整えてくれる。そういう機能がほしいと昔から考えていました。

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