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“4Kの痕跡”とは? ソニーとJVCのイベントで気づいた効果(1)麻倉怜士のデジタル閻魔帳(1/2 ページ)

» 2012年03月28日 16時06分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]
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オーディオ&ビジュアル関係のイベントでは講師としておなじみのAV評論家・麻倉怜士氏。最近はソニー「VPL-VW1000ES」やJVC「DLA-X90R」といった4Kプロジェクターの体験イベントに出演するため、日本中を飛び回っている。4Kネイティブのコンテンツがほとんど存在しない中、イベントではどのように違いをアピールしているのだろうか。麻倉氏に詳しく話を聞いた。

ビクターの「DLA-X90R」(左)とソニーの「VPL-VW1000ES」(右)

麻倉氏:この連載ではこれまでも4Kプロジェクターやディスプレイについて取り上げてきましたが、2月から3月にかけ、ソニーとJVCのイベントで全国を行脚しています。今後5月まで続きます。イベントでは、フルHDプロジェクターとの違い、ホームシアターにもたらす効果と感動を詳細に説いてきましたが、逆に私がイベントの中で気づくこともあります。今回は両社のプロジェクターの実力とキャラクターを測るとともに、中間報告として、ツアーから学んだことを報告してみたいと思います。

 先日、ソニーがVPL-VW1000ESと「プレイステーション3」との組み合わせで、PS3内に保存した画像コンテンツをネイティブで映し出せるソフトウェアを発表しました。また東芝はHDMIケーブル4本を使い、「55X3」に4K2K投映できる“4Kボックス”を開発。PCで作成したコンテンツやJVCの4Kビデオカメラで撮影した映像を見ることができます。このようにここへきて、ネイティブの4Kコンテンツを映す動きが活発化していますね。

東芝の“4Kボックス”こと「THD-MBA1」(左)とソニーのPS3用ソフト「PlayMemories 4K edition」(右)

麻倉氏:もし家庭用に4Kパッケージソフトが出るのなら、4Kプロジェクターもその実力をフルに発揮できるのですが、しかし、現在のメインソースはBlu-ray Discです。イベントでも、主に2Kのコンテンツを4Kにアップコンバートして試聴しています。

 ただ、2Kコンテンツからのアップコンバートは微妙な問題を含んでいて、従来のアプコンでは4倍に拡大するわけで、どうしてもぼけを伴います。単なるアプコンでは同レベルの画質、悪ければそれ以下のボケた映像になってしまいます。一つの画素で四つの画素をつくるのだからそこに何かの技術や作為がない限り、ぼけてしまうのは当然でしょう。しかし、4Kプロジェクターを使うと、むしろ解像感が上がるという不思議な体験をすることができます。

 地方都市のイベントで、あるベテランらしきユーザーが、「2Kコンテンツしかないのだから、このプロジェクターは意味がない」とある意味、的を射たことをつぶやいていました。しかし、いざ視聴が始まると、予測を超える結果が出て驚き、4Kの映像に感動したと熱く話していました。2Kを4Kにアップコンバートすることについては、このユーザーのように、当然懐疑的な意見もあります。確かに、あまり効果のないBDソフトもありますが、逆にとても効果が大きいものもあることが再確認できました。

 では、メーカーは4Kプロジェクターを作るにあたって、何をしたのでしょうか。JVCによると、彼らの考える「4Kのメリット」は、まず4Kで撮影されたり、編集されたりしたものには、2Kにしても微細な信号が残るということ。これをビクターは「4Kの痕跡」と呼びます。2Kのままでは全く見えませんが、アップコンバートすると、4Kの微細な信号が見えてくる。これがJVCの設計方針です。

 イベントでは、最初にJVCの4Kカメラで撮影した京都・嵐山渡月橋のBD映像を比較投映しましたが、札幌の会場では「おおっ」というどよめきが起こりました。この映像は、水面がきらきらと光り、奥には森の山並みが見えます。2Kでは山としての丸みは感じるのですが、個々の木々を認識するには至りません。しかし4Kにアプコンしたものは、まず水面のキラキラ感がゴージャスになり、水の透明度も圧倒的に上がりました

 さらに違うのは森の木々。1本1本の木に膨らみ(立体感)があり、それぞれの色の違いまで感じ取ることができます。比較用に用意された2Kプロジェクターは、画質面の評価が高い「DLA-X30」や以前の「DLA-HD100」ですが、一様に違いがありました。4Kにアップコンバートすると、解像感だけでなく、色やコントラスト表現まで変わってくるのです。これは、もとの4K映像が持っていた実力が、ある程度戻ってきているということ。はっきりと「4Kの痕跡」を感じることができました。

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