――前回、4K制作のBlu-ray Discなどは2Kでありながら“4Kの痕跡”が残るというお話でした。では、もともと2K撮影、2K制作のコンテンツでは4K化や超解像技術の効果はないのでしょうか?
麻倉氏:ビクターの「DLA-X90R」、ソニー「VPL-VW1000ES」ともに、映像処理の基本的な考え方としては、ハイレゾ編集もしくは撮影の痕跡を拾い上げ、できるだけ元に戻そうというものです。そもそも編集が4Kでなければなりませんから、2K編集の場合はその理論が成り立ちません。
麻倉氏:しかし、現状は2Kで撮影したもののほうが圧倒的に多いでしょう。現在3D公開されている「スター・ウォーズ」のエピソード1などは2Kで撮影されたものですし、ウィーン・フィルのニューイヤーコンサートなども2K撮影と、音楽作品にも2Kコンテンツは多い。もちろんテレビ放送も2Kコンテンツです。こうした音楽作品や放送のエアチェックもホームシアターにとって重要なコンテンツなのですが、そこに恩恵はないのか? と思ったら、大違いでした。
ソニーとJVC、どちらのイベントでも松田聖子さんの「赤いスイトピー」(SD画質)を上映したのですが、同じような驚きの声が上がりました。横顔がアップになる場面では、黒目の中の光、まつげの質感、頬の膨らみ感、その上にのったラメ、唇のグロス感など、いずれも大きく違います。あと、大きな声では言えませんが目尻のしわとか……、2Kで見たときにのっぺりとしていた部分に、実は情報があることが分かります。大きく違うのは唇のグロス感で、2Kでは褪せているように見えるのに、4Kではとても色っぽくてみずみずしい。なぜこんなに違うのでしょう。
ビクターの技術者によると、4倍の解像度にするといっても、1つの画素から4つの画素を作るわけではなく、4×4の16画素を参照して、1つの新しい画素を作っているそうです。その目的は、4Kの痕跡をリカバリーすることですが、2Kの中からでも微少な信号がうまくすくい上げられているようだとも話していました。ただ、これを目的に開発してきたわけではなく、「作ってみたらこうなった」とも話していました。
まとめますと、とくに4Kのありがたみを感じるのは4K/8K制作のもので、2Kとは違う世界を見せてくれます。一方、2K制作の作品はものによって効果あり。ニュース映像やテレビ番組では、効力を発揮するケースもあれば、ほとんど感じられない場合もありますが、効果のあるものはその見方が変わるような変わり方を見せてくれます。なにもハイレゾのマスター作品ではなくても効果がある。とくに丁寧に制作されたものは、必ず4Kの恩恵があります。
昔からオーディオの世界では、「アンプを変えたら、すべてのレコードを聴き返したくなる」といいますが、4Kプロジェクターも同様にすべてのコンテンツを見返したくなるディスプレイです。やはり4Kプロジェクターは革命的なディスプレイだという認識を深めました。
もう1つ考えさせられるのは、メディアと機器の関係です。あるメディアの中にどれほどの情報量が入っているかは、器の大きさだけでは語れません。例えば1980〜1990年代には、同じレーザーディスクでも、ソニーとパイオニアのプレーヤーでは違う画に見えました。今回は、同じディスクとプレーヤーでも、プロジェクターによって出てくる情報が違いました。はたしてディスクの中に、一体どれだけの情報が入っているのか。ますます謎は深まります。
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