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“4K Inter BEE”から最新BDレコーダーの優れた機能まで、4K最新事情麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/4 ページ)

» 2012年11月29日 17時26分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

麻倉氏: もう1つの新しい潮流は、超解像の効き方をコントロールできる機器が登場したことです。

 ソニーの「VPL-VW1000ES」は、JVCと異なり、リアル4Kパネルを用い、また機能面では4K入力対応のHDMI端子を備えています。これは非常に重要な部分。4Kのアップコンバートではなく、4Kネイティブコンテンツが出てきたときは4Kそのものを入れられますし、より新しい進化したアップコンバート機器が登場したときにも対応できます。JVCのように2Kしか入力できないと、機器内蔵の超解像しか使えません。

――進化したアップコンバート機器、ですか?

麻倉氏: よい例が、ソニーが10月に発売した新型Blu-ray Discレコーダー「BDZ-EX3000」です。「VPL-VW1000ES」と「BDZ-EX3000」の組み合わせこそ、現在のリアル4Kでは“最強の画作り”だと思います。

「VPL-VW1000ES」と「BDZ-EX3000」

 「BDZ-EX3000」には「CREAS Pro」による独自の超解像技術があります。そのすごいところは、超解像の効き方を“下げられる”ことです。開発したのは、BDレコーダーの画質顧問で、私が“画質人間国宝”と呼んでいる平井さんです。最近ではヘッドマウントディスプレイの「HMZ-T2」の画質調整を担当しました。彼のような画質エキスパートから見ると、超解像をがんがんかけると、中域の精細感が上がって情報量は出てくるけれど、ものによってはぼてっとした画調になることもあるということです。

 それを防ぐには、高域の輪郭と精細感、中域の輪郭と精細感という4つのポイントをコントロールする必要があり、うまく調節するとコンテンツに合致した適正な精細感が得られるということです。だから「BDZ-EX3000」の超解像は下げることもできる。この効き方がすばらしい。

 「BDZ-EX3000」の「おすすめ設定」では、接続する機器と使用するコンテンツによって最適化した映像を選べます。まず、2K(フルHD)プロジェクターか、4Kプロジェクターかを設定し、次にコンテンツが「ハイレゾ」か、「ノーマル」かをセットします。ここでいうハイレゾというのは、RedOne撮影や4Kマスターのような高解像度撮像された素材のことです。VPL-VW1000ESを接続した場合のオススメ設定は「シネマPJ 4K」ですが、「シネマPJハイレゾ」というモードを選ぶと、“4Kの痕跡”をより楽しめるはずです。

VPL-VW1000ESを接続した場合のオススメ設定は「シネマPJ 4K」(左)。「くっきり」は輪郭と精細感を高域と中域でそれぞれ調整できる(右)

麻倉氏:  さらに「くっきり」「すっきり」という“画質調整項目のグループ”が用意されていて、ユーザーの好みとコンテンツによって細かい調整が行えます。これは、VEGA時代のDRCに入っていたと同様な機能で、例えば「すっきり」には、明るさや色など4つのポイント、「くっきり」には輪郭と精細感を高域と中域でそれぞれ(計4つのポイント)で調整できます。この「くっきり」が先ほどの4つのポイントですね。帯域ごとに調整できるのは、ソニー製レコーダーの中でも「BDZ-EX3000」だけ。とくに精細感(中域)が良く効きます。

 例えば、ワーナーのBD「雨に唄えば」は4Kマスタリングですが、精細感が低くてなんだか4Kらしくありません。しかし色や質感はまずまずなので、「くっきり」の中から中域の精細感を5程度上げてやると実に良い結果が得られます。輪郭を必要以上に強調せず、精細感を上げることができるのです。

BDZ-EX3000の進化

――VPL-VW1000ESとBDZ-EX3000をHDMI接続したとき、プロジェクター側とプレーヤー(レコーダー)側のどちらでアップコンバート処理をするべきなのでしょうか

麻倉氏: それは、プレーヤーでやるべきです。なぜならプレーヤーはコンテンツを読み取る機械なので、コンテンツの情報をすべて分かっているからです。そのほうが画質を制御しやすいのは道理でしょう。もう1つ、「VPL-VW1000ES」が搭載しているデータベース型超解像技術は、映像をあるべき姿に入れ替えるものなので、強弱をつけにくいのです。

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