例えばサムスンの場合、冷蔵庫の中身を管理するアプリが用意されているが、これは基本的に手動入力だ。冷蔵庫のタッチパネルのほか、スマートフォン等で管理や情報登録が行えるようだが、実際にこれらを細かく入力して管理しようとする人がどれだけいるか疑問だろう。LGのスマート家電ブランドであるSmart ThinQのデモでも解説されているが、買い物先で冷蔵庫の中身の賞味期限を確認したり、料理レシピの検索に利用するのが目的のようだが、よほど“マメ”な人でない限り、アプリを使いこなすのは難しいだろう。興味深いが、まだまだ用途提案としては弱い。
先ほどのLGのSmart ThinQのデモ映像をご覧いただくと分かるが、使用電力を管理して細かく制御する仕組みが用意されているようだ。今回CESで東芝がデモしていたスマート家電も、こうした電力制御が大きな目的の1つにある。インテリジェント化された個々の家電が電力使用量をホームサーバに通知し、それをクラウド上で集計して集中管理を可能にするというのがその内容だ。スマートフォンやテレビなど、インターネットに接続できる端末であればクラウド経由で家電の電力使用状況を監視できる。これにより、例えば電子レンジや乾燥機など電力使用量の大きい製品のスイッチが同時に入った場合、乾燥機の電力使用をいったん停止して電子レンジを優先するなどの自動制御が可能になる。「こうした行動パターンをクラウド上で学習し、自動制御をより賢くしていくというのが家電クラウドの狙い」と東芝は説明する。
いわゆる「スマートメーター」と呼ばれる電力制御と監視の仕組みだが、日本では震災以降電力需要が逼迫(ひっぱく)しており、こうした点で商機があると同社では分析しているようだ。一方で米国では細かい電力制御より、“ピークシフト”によって電力の安い時間帯の使用量を増やす(=電気料金を下げる)仕組みなどが好まれる傾向がある。先ほどのLGのSmart ThinQもそうだが、各地域のニーズに合わせてピークシフトを中心に製品をアピールするなど、戦略を適時アレンジしていく。
スマートメーターを組み合わせて構築されたインテリジェントな電力ネットワークを“スマートグリッド”などと呼ぶが、家電でのスマートグリッド対応を訴える光景が今回のCESでも多く見られた。例えば家電大手の米Whirlpoolでは、Wi-Fi接続に対応した冷蔵庫に「Smart Grid」と書かれたボタンが用意されている。残念ながらデモ機では同機能が無効化されていたようだが、同機能を使ってクラウド上の管理データベースにアクセスし、スマートフォンを使って遠隔地から冷蔵庫の(主に電力の)使用状況の監視が行えるようだ。
このWhirlpoolの冷蔵庫の場合、米Arrayentの管理システムが利用されている。Arrayentのシステムの実体はクラウド上にあり、Wi-Fiによるインターネット接続、またはZ-Wave、ZigBee、Bluetoothといった無線接続の仕組みを使ってArrayentの専用ゲートウェイを通すことで、家電と管理システムを連携させる。Arrayentではクラウドに接続するためのAPIを公開しており、これを同サービスに対応した家電に組み込むことで、相互接続を実現するというものだ。
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