本機のXLRバランス出力で聴いた、映像信号を収録せずにBlu-ray Discの大容量を超高音質に生かすというコンセプトのBDミュージック(BDオーディオ)盤「コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ/タマーシュ・ヴァルガ」の再生音がすばらしかった。ウィーンフィルの首席チェロ奏者であるヴァルガが、同郷のハンガリーの作曲家コダーイの楽曲に真摯に向かい合う緊張感と気合がその演奏からダイレクトに伝わって、つい最後まで聴き惚れてしまったのだった。
HDMI出力は2系統用意されていて、2系統同時出力のほか、映像と音声のセパレート伝送にも使える仕様となっている。そのA/Vセパレート伝送で、パイオニア「SC-LX86」(AVセンター)とソニー「VPL-VW1000ES」(4Kプロジェクター)とつないでさまざまなBlu-ray Discを楽しんでみたが、画質・音質ともに安心して楽しめる魅力を備えていることが確認できた。
とくにHDMI出力の音質はBDP-95から明らかに向上している印象で、映画BD「ジョイフル・ノイズ」のゴスペルクワイアの練習風景などを観てみると、団員たちの騒めきがいっそうクリアーになり、サラウンド空間もよりワイドに拡張されたように感じられる。これは好ましい変化といっていいだろう。音の情報量が増え、音場のスケール感が向上したのは間違いないようだ。
SC-LX86はマルチchアナログ入力を備えているので、本機の7.1ch出力をつないでその音も聴いてみたが、ボーカルやダイアローグの腰の座った実在感に満ちたその音調が好ましいと思ったが、先述した音の情報量、音場のスケール感はHDMI出力が勝る印象。これは好みで選んでもいいレベルの違いだと思った(もっとも、マルチchアナログ入力を備えたAVセンターやプリアンプは今やほんとうに少なくなってしまったが……)。
8Kスキャン/4Kマスタリングの超高画質映画ブルーレイ「アラビアのロレンス」で、本機を2K出力(Y:Cb:Cr=4:4:4/各12ビット)してソニー「VPL-VW1000ES」の内部変換回路で4K変換した画質と、本機で4KアップコンバートしてVPL-VW1000ESに受け渡した画質を比較してみたが、短時間のチェックでは本機の4K変換はやや大味に感じられ、ノイズのきめ細かさなどでも前者のほうがより好ましい結果が得られた。現状のHDMI規格では、4K伝送時は8ビットまでという制約があるせいかもしれない。これはもっと時間をかけて検証すべきテーマだと思う。それにはまず4Kプロジェクターを自室に導入する必要があるのだが……。
そうそう、操作面についてもディスクのローディング時間が短縮され、もともと俊敏な動きが特長だったBDP-95以上の快適な操作性が実現されていることも特筆に値しよう。しっかりとした手になじむリモコンの自照式で、プロジェクター使用時の暗闇環境でもまごつかないで操作できるのもうれしいポイントだ。
なにはともあれ、BDP-105はユニバーサルBDプレーヤーとしてBDP-95の正常進化モデルといってよく、とくにBlu-ray Discの高画質・高音質再生に加えてネットワークオーディオやPCオーディオにも手を伸ばしてみたいとお考えの方には今まさにピッタリのモデルといえるだろう。なぜ国内メーカーからこのレベルのユニバーサルBDプレーヤーが登場してこないのか、ほんとうに不思議な気がする。
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