作年秋にハイレゾ対応のAndroidスマートフォンが多数発売され、ソニーからもハイレゾ対応“ウォークマン”の入門機である「Aシリーズ」が登場したことから、国内ではハイレゾに対する注目度が一気に高まり、多くの人々が気軽に楽しめる環境も整った。今回はBluetoothの技術をベースにした新コーデック「LDAC」を搭載し、“ワイヤレスでハイレゾに迫る音質”が楽しめる、ソニーのヘッドフォン「MDR-1ABT」を紹介しよう。
今年の1月に米ラスベガスで開催された「2015 International CES」で、ソニーが発表した「LDAC」(エルダック)は、Bluetoothをベースにしたワイヤレスオーディオのための新コーデックだ。最大96kHz/24bitまでのハイレゾオーディオ信号を圧縮した後、Bluetoothのオーディオプロファイル「A2DP」の標準コーデックである「SBC」と比較して約3倍の情報量となる最大990kbpsのビットレートでワイヤレス伝送が行える。
Bluetoothの規格上、伝送するデータを1Mbpsの容量内に圧縮する必要があるため、非可逆での圧縮方式を採っている。そのため音質の劣化を伴うところが有線接続によるハイレゾ再生との違いになるが、ビットレートを1Mbpsの中に収めながら最大限の高音質を引き出せるコーデック設計とした。かねてから「Bluetoothの音質をもっと良くできないか」というユーザーの声を受け、現状可能な範囲でベストを尽くしたコーデックがLDACであるというわけだ。なお、192kHz/24bitのハイレゾ音源を再生した時には、いったん96kHz/24bitにダウンコンバートしてからワイヤレスで送り出すことになる。
44.1kHz/16bitのリニアPCMデータをワイヤレス再生する場合も、SBCでの再生と比べて、LDACではより多くの情報量が送れるため、より高品位なリスニングが楽しめる。ハイレゾだけではなく、CDリッピングの音楽再生にもメリットがある。
なお、当然のことながらヘッドフォンだけでなく、ウォークマンのような再生機器の側もLDACに対応している必要がある。現状、ウォークマンのフラグシップモデルである「NX-ZX2」が真っ先にLDACに対応したほか、4月には「Aシリーズ」が本体ソフトウェアのアップデートでLDACに対応する。またソニーモバイルが「MWC 2015」で発表した10インチ台のフラグシップタブレット「Xperia Z4 Tablet」はLDACに対応する初のタブレットになる予定。日本での発売は春以降になるはずだ。
「MDR-1ABT」は、LDACによるワイヤレスオーディオの最新技術が搭載されただけでなく、ソニーのプレミアムヘッドフォン「MDR-1A」シリーズがベースになっている贅沢(ぜいたく)な仕様のヘッドフォンだ。
低域は4Hzから、高域は最大100kHzまでの広帯域再生をカバーする40ミリ径の「HDドライバーユニット」を採用。振動板はLCP(液晶ポリマー)をベースに、アルミコートをかけて各素材の相互作用によるフラットな内部損失特性を全帯域で実現した。両ハウジングの上部には音のヌケを良くするポートを設け、低音の切れ味とリズムの正確さを追求するビートレスポンスコントロールが採用されている。
圧縮されたデジタル音源の再生時には高音域を中心に失われた情報を補完する「DSEE」、ソニー独自のフルデジタルアンプ「S-Master HX」も搭載している。まさにソニーのデジタルオーディオの技術を“全部のせ”しながら、本体の重さは「MDR-1A」の約225グラムに対して、わずかに重い約300グラムの軽量設計をキープしている。
スマホを中心に音楽を聴いているユーザーにも使いやすいよう、本体にはマイクも搭載。スマホとBluetooth接続しながら使う時にはハンズフリー通話が行える。ちなみにLDAC以外にもAndroidスマホのハイスペックモデルに採用されているaptXや、iPhoneでより高品位なBluetooth音楽再生を楽しむためのAACにも対応しているので、あらゆるワイヤレス環境でベストなサウンドクオリティーが狙えるヘッドフォンだ。
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