これは聴きたい！ DSD 11.2MHz音源のスゴイところ：麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」（2/2 ページ）

[芹澤隆徳，ITmedia]

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麻倉氏：11.2MHzで配信されているコンテンツは意外と多いです。ジャンルとしては、コーラス、弦楽四重奏、クリスマスソング、ピアノ、ギターなどがあります。中でも違いが分かりやすいのは「ハイパーソニックオルゴール」でしょう。

――この連載でも何度か紹介している芸能山城組の山城先生（作曲家・山城祥二氏）の音源ですね。

「ハイパーソニック・オルゴール トロイメライ」

麻倉氏：「恐山／銅之剣舞／芸能山城組」は、アナログマスターからDSD 11.2MHzに変換したもの。「超絶のスーパーガムラン ヤマサリ／ヤマサリ」と「ハイパーソニック・オルゴール トロイメライ」はDSD 11.2MHzで新規に収録したものです。また、「チベット密教 極彩の響き／ナムギャル・タツァンの僧侶たち」はDATマスターから高周波を加算して11.2MHz DSDにしたもの。アップコンバートといえるかもしれません。どれも非常に素晴らしいです。

　ハイパーソニック・オルゴールの収録では、信州にある専門メーカーと共同で新作のオルゴールを作ったそうです。本来、オルゴールはすごく高周波が出るはずのものですが、昔の円盤式オルゴールでは蓋（ふた）によって遮られ、なかなか出てこないそうです。

　このため新しいオルゴールでは、ホーンの形状を変えて高周波が遮られないようにしたのです。今回は192kHz/24bitのWAVと5.6MHz DSD、そして11.2MHz DSDのファイルを配信していますが、それぞれに特徴があって面白いです。例えばWAVはフラットでクセがなく、ワイドな帯域という音の良さを持っていますが、5.6MHz DSDでは質感のつやっぽさが感じられ、繊細な響きが明瞭（めいりょう）に聞こえるようになります。音場も立体的になります。ここは大きな違いがあります。

　そして11.2MHz DSDでも大きな変化がありました。音の透明感が上がり、音場の見通しもいい。基音と倍音のミックスした音で密度感が高くなります。聴き比べると、5.6MHz DSDではまだ“隙間”があったと感じられるのです。さらに響きの減衰が遅い点にも注目です。オーディオ的には「響きの滞空時間が長い」などというのですが、これはつまり「微細な空気の揺れまで再現できている」という意味です。もちろん、すべての音源がここまでの違いがあるかどうかは分かりません。しかし3つの音源を聴き比べると11.2MHz DSDのすごさが分かります。

――ほかにもオススメコンテンツはありますか？

「SPES」（Cantus, Tove Ramlo-Ysta）

　「SPES」（Cantus, Tove Ramlo-Ysta）も良かったです。内容はコーラスですが、音場の広がりが11.2MHz DSDならでは。また、「String Quartets vol IV」（Engegard Quartet）も素晴らしいと思いました。これはシューベルトの弦楽四重奏ですが、バイオリンの振動がボディーに伝わり、音が出るという弦楽器の発音メカニズムを高速度撮影で追っているかのような機微がみえてきます。空気中にまず直接音が放射され、間接音が後を追うという“音のスペクタクル”みたいなものが感じられますよ。

　もう1つ、Josep Colomのピアノ曲も挙げておきましょう。「Mozart & Chopin - Dialogues」（Josep Colom）は、超絶的に素晴らしい録音です。内容はピアノのソロ演奏なのですが、音色が美しく透明感が高い。指が鍵盤を叩くとアクションが弦を叩き、響板を鳴らし、空気を振るわせる――撥音楽器における音の発生原理のようなものがダイレクトに伝わってきます。DSDでは、響きの豊かさや直接音の切れ味が飛躍的に向上します。空気の中を伝搬してくる音があたかも見えてくるような分解能です。ぜひ一度聴いてほしいと思います。

タイトル	ファイル形式・価格（税込）
『恐山／銅之剣舞／芸能山城組』	192kHz／24bit WAV（アルバム販売のみ3456円）／5.6MHz／1bit DIFF（アルバム販売のみ3996円）／11.2MHz/1bit DIFF（アルバム販売のみ5076円）
『超絶のスーパーガムラン ヤマサリ／ヤマサリ』	192kHz／24bit WAV（アルバム販売のみ3456円）／5.6MHz/1bit DIFF（アルバム販売のみ3996円）／11.2MHz/1bit DIFF（アルバム販売のみ4935円）
『ハイパーソニック・オルゴール トロイメライ／ハイパーソニック・オルゴール』	192kHz／24bit WAV（アルバム販売のみ3780円）／5.6MHz／1bit DIFF（アルバム販売のみ4320円)／11.2MHz／1bit DIFF（アルバム販売のみ5400円)
『チベット密教 極彩の響き／ナムギャル・タツァンの僧侶たち』	192kHz／24bit WAV（アルバム販売のみ 3240円）／5.6MHz／1bit DIFF（アルバム販売のみ3780円)／11.2MHz／1bit DIFF（アルバム販売のみ4860円)
『mild blue tone／フジムラトヲル』	11.2MHz／1bit DSF（アルバム2721円、単曲432円)
『visible invisible／TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND』	11.2MHz／1bit DSF（単曲のみ432円 )
『Fernando Sor - Guitar Sonatas／Ricardo Gallen』	96kHz／24bit flac（アルバム販売2500円、単曲300円）192kHz／24bit flac（アルバム販売3000円、単曲400円）／2.8MHz／1bit DSF（アルバム販売3000円、単曲400円)5.6MHz／1bit DSF（アルバム販売3500円、単曲500円)／11.2MHz／1bit DSF（アルバム販売4000円、単曲600円)／（5.0ch surround）192kHz／24bit flac（アルバム販売3000円、単曲400円）
『Rougequeue／千葉史絵』	11.2MHz／1bit DIFF（アルバム販売のみ1000円)
『CHRISTIANIALIV - Works from Norway's Golden Age of wind music／The Staff Band of the Norwegian Armed Forces』	11.2MHz／1bit DSF（アルバム販売5683円、単曲725円)※その他フォーマットで配信中の作品に11.2MHz／1bit を追加
『String Quartets vol IV／Engegard Quartet』	11.2MHz/1bit DSF（アルバム販売5683円、単曲725円)※その他フォーマットで配信中の作品に11.2MHz／1bitを追加
『Stille lys (Quiet Light)／Jan Gunnar Hoff』	11.2MHz／1bit DSF（アルバム販売5683円、単曲725円)※その他フォーマットで配信中の作品に11.2MHz／1bit を追加
『MAGNIFICAT／TrondheimSolistene』	11.2MHz／1bit DSF（アルバム販売5683円、 単曲725円)※その他フォーマットで配信中の作品に11.2MHz／1bitを追加
『SPES／Cantus & Frode Fjellheim』	11.2MHz/1bit DSF（アルバム販 5683円、単曲725円)※その他フォーマットで配信中の作品に11.2MHz／1bitを追加
『CHRISTIANIALIV - Works』	11.2MHz／1bit DSF（アルバム販 5683円、単曲725円)

――次回はDSD 5.6MHzのストリーミング配信実験とハイレゾの新規録音が増えているという話題を取り上げます。