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曲面テレビはもう終わり?――IFAで見つけた“近未来”麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(3/6 ページ)

» 2015年10月05日 21時18分 公開
[天野透ITmedia]

4KとHDRで問われる、Blu-ray Discのこれから

麻倉氏:次はUltra HD(4K)Blu-rayの話題です。今年のCESではパナソニックのみが試作展示をしていました。IFAではサムスンが来年春のリリースを発表しましたが、パナソニックは詳しい情報は出しませんでした。ソニーは全くの音沙汰なしです。

パナソニックとサムスンのUltra HD Blu-ray(4K)対応機。展示はいずれもモックアップだった
パナソニックは10月5日に国内でUltra HD Blu-ray再生機能付きBlu-ray Discレコーダー「DMR-UBZ1」を正式発表。11月中旬に発売する予定だ

――日本メーカーが情報を出さない理由は何なのでしょう?

麻倉氏:1つはシステムLSI開発の都合でしょう。パナソニックは、ARMアーキテクチャーをベースとしたUniPhier(ユニフィエ)プラットフォームで開発しており、今回はその延長のものと思われます。もうUniPhierとはいわないようですが。一方でソニーはチップ開発を外部に頼っていますので、委託先の問題で進展がないのかもしれません。

 ソフト供給側のハリウッドでも各社で事情が異なります。態度を一番はっきりと表明しているのはサムスンと組んでいる20世紀フォックスです。今回のサムスンのレビューに合わせて、4KタイトルをUltra HD Blu-rayでリリースします。同時にサムスンと共同で4Kコンテンツの開発研究所を設立すると発表しています。

 ソニー・ピクチャーズはソニー本体が4K推進をしているにも関わらず、明確な態度を表明していません。アニメは画素数が4倍になることで従来の4倍コストがかかるため、ディズニーは二の足を踏んでいるという状況です。ワーナーは積極的な対応を表明していたのですが、正確にははっきりしていません。

 Blu-ray Discの時は、ほかにハイクオリティーコンテンツを届けられる手段がなかったのですが、今は「NETFLIX」などのOTT(ネット動画配信)という強力な手段があり、動きはむしろこちらの方が速いです。パッケージとOTTの両方で出していくというスタンスとなると、どうしても「Ultra HD Blu-rayだけではない」という力の入れ方になってしまいます。

 ただしHDR10に関しては、最近動きが明確に変わってきており、Ultra HD Blu-rayだけでなくOTTでも活用するという流れになってきました。Ultra HD Blu-rayの正式ライセンスは8月に始まり、フォーマットの内容も明らかになっています。一番面白いのが、最大転送レートが108Mbpsになるという点でしょう。現行規格では最大でも40Mbpsです。HEVCによる同等画質でのレート半減効果を考えると、現行比4倍の画素数にHEVCで半分のレート(つまり単純に現行の2倍)で、80MbpsがUltra HD Blu-rayには必要という計算になります。それ以上にレートを確保できているということで、HDRによるピークの再現が細かくなったりした時に、OTTとは比べ物にならない差が出てくるでしょう。

――日本ではFTTHが普及していますが、例えば映画1本分の2時間の間、ずっと100Mbpsを安定確保するというのは、現実問題で考えるとなかなか難しいですよね。「リビングで映画を見るからネットを使わないでね」なんていうADSL時代のようなことを、まさか今さら言う訳にもいかないですし

Ultra HD Blu-rayのディスク。従来の片面2層50Gバイトを上回る大容量と高転送レートを実現した

麻倉氏:国によっても通信事情は違うので、OTTでの高品質な4Kをやろうとすると、かなり厳しい環境をユーザーに要求することになります。そういった事情もあるので、2Kではそれほど大きくなかった“円盤”(BD)とOTTの差も、4Kになるとさすに転送レートの違いが出てくるでしょう。「人類史上最高の高画質」がUltra HD Blu-rayとしての価値になるのです。

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