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アーティスト「fhana」が自身の楽曲を聴き比べ!――CDにUHQCD、そして32bitハイレゾ音源は何が違う?新譜「コメットルシファー」発売記念(2/3 ページ)

» 2015年11月04日 16時02分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

UHQCDの音にちょっと驚く

 CDとUHQCDの聴き比べるため、リファレンスとしてOPPO Digital Japanのユニバーサルプレイヤー「BDP-105DJPL」を用意した。スピーカーは、ソニーのハイレゾ対応モデル「SS-HA3」。制作した音源を一般的な視聴環境で確認するため、取材会場となったランティスのスタジオに常備されていたものだ。また96kHz/24bitと96kHz/32bit整数の聴き比べは、MacBook ProからUSB出力したデジタルデータを同じくOPPO DigitalのUSB-DAC/プリアンプ機能付きヘッドフォンアンプ「HA-1」を介して試聴する(機材協力:OPPO Digital Japan)。

「BDP-105DJPL」

 まずCDについて佐藤純一氏は、「聴き慣れた、安心感のある良い音ですね。普段聴いている音よりも良いと感じたのはプレイヤーの違いでしょうか」と話している。その上で、「CDとUHQCDには明らかな違いがありました。イントロの出だしからまったく違います」と少し驚いた様子。

 「少し具体的にいうと、UHQCDは音が深いんです。ドラムやギターがそれぞれ奥行きを持って存在していて、ボーカルが加わってからは歌の実体感も感じられる。良い意味で“重さ”や“空気感”のようなものが伝わってきました。もちろんCDも立体感がないわけではありませんが、聴き比べるとCDは(各パートが)平面で並んでいるようなイメージなのに対し、UHQCDではそれぞれに奥行きが出て、しかもディティールが分かる状態で、あるべき位置にある。そんな違いがありました」

 続いて2種のハイレゾ音源も試聴する。CDの倍以上のサンプリングレートと情報量を持つハイレゾ音源に佐藤氏は大きく頷くと、その音を解説してくれた。「CDからUHQCDに変わった時点で音に奥行きと深みが加わりましたが、さらにハイレゾでは実体感が追加された印象ですね。32bitでは、まるで触れられそうな気がするほど密度の濃い音になっています」。もっとも、24bit音源と32bit音源の違いより、CDとUHQCDの違いのほうが大きかったという。その場にいた取材スタッフも全員、同じ印象を抱いていた。

32bit整数配信に挑戦する理由

 試聴では大きな違いを感じた各音源だが、いずれも元はDAWソフトから出力された32bit floatのマスターを使用している。32bit整数音源の場合は、イコライザーとコンプレッサーをかけてダイナミックレンジを拡大している。ランティスは既に「ラブライブ」の音源を32bit整数で配信しているが、いわゆる“アーティスト物”は今回が初めてだ。

「e-onkyo music」でもハイレゾ配信がスタートした。価格は単曲で432円

 ランティスの楽曲を手がけるアイウィルの制作部チーフプロデューサー 佐藤純之介氏によると、「32bit floatの音源は、ダイナミックレンジが144dBと実質的に24bit音源と変わりません。しかし32bit整数なら192dBという32bit本来のダイナミックレンジを使えます」と指摘する。元が32bit floatというと、「なんだアプコンか」と思う人もいるかもしれないが、制作者が自らの耳で確認しながら広いダイナミックレンジを活用するのは自ずと異なるだろう。「192dBに拡大すると、根本的に奥行き感や解像感が違います。立体感や空間表現がすごい」(佐藤純之介氏)

アイウィルの制作部チーフプロデューサー 佐藤純之介氏

 しかし、32bit音源は再生環境が限られる。なぜハードルが高い32bit配信をあえて行うのだろうか。「私は普段、音楽を聴くときにOPPO Digitalの『HA-1』を使っているのですが、HA-1のように32bit再生に対応したデバイスは市場にいくつもあります。それなのに再生機器のポテンシャルを発揮できる音源がないのはおかしいと思っていました。また制作者の立場から言うと、“新しい表現”が手に入りますし、早く手がければ誰よりも早くノウハウがたまります」(佐藤純之介氏)

 新しいオーディオ機器を買ったら、その能力を最大限に発揮させてみたいと思うのは当たり前だ。そんなオーディオファンの気持ちをくみ取ってくれるアーティストや制作者の存在はとても心強い。

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