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「ゲーセンはなくならない」 復活の鍵は電子マネーか(1/2 ページ)

» 2015年12月12日 06時00分 公開
[村上万純ITmedia]

 “ゲーセン不況”が続いている。ゲームセンターのオペレーション売上高は2006年の7029億円をピークとして落ち込みが続き、店舗数も同じく減少傾向にある(月刊アミューズメント・ジャーナル、2015年5月号)。しかし、タイトー執行役員 総務部の児玉晃一部長は「ゲーセンはなくなりませんよ」と語る。同社は「ハロータイトー 亀有」など、一部店舗でシニア向けサービスを提供したり、都心部を中心にマルチ電子マネー決済端末を導入したりと、他社に先駆けてさまざまな試みを実施している。

 家庭用ゲーム機でクオリティーの高いリッチなコンテンツが楽しめ、スマートフォンでいつでもどこでもソーシャルゲームが遊べる時代に、ゲームセンターが提供できる価値とは? タイトーが考えるゲーセンの生き残り戦略を本社で聞いた。

ゲームセンターに定義はない

 児玉部長は今のゲーセン市場について「昔ながらのビデオゲーム中心の店はどうしても客層が限られますが、大型店の売上はむしろ増えてきています。業界全体としては確かに縮小傾向です。弊社としては客層を広げることでまだ伸ばす余地はあります」と分析する。事実、1店舗あたりの売上高は2013年時点で2840万円と4年連続で増加した。(月刊アミューズメント・ジャーナル、2015年5月号)。

タイトー執行役員 総務部の児玉晃一部長 タイトー執行役員 総務部の児玉晃一部長

 時代により人気ジャンルのはやりすたりがあり、今は音楽ゲームが好調だという。売上に最も貢献するクレーンゲームの人気も健在だ。大型店はビデオゲームや音楽ゲーム、クレーンゲームの他、メダルゲーム、プリクラ、キッズ向けカードゲームなど多様な機器を設置でき、10〜20代の男性だけでなく、女性グループやカップル、高齢者やファミリー層など誰もが楽しめる場所になっている。

 「そもそも、ゲームセンターに明確な定義はないんですよ」と児玉部長は話す。「あくまで誰もが気軽に立ち寄れるエンターテインメントの場であって、お客様が楽しめるかどうかが一番大事です。中身は変わっても、なくなることはないです」という言葉通り、リアル謎解きゲームセンターの企画・運営など、従来の常識にとらわれないイベントも記憶に新しい。

 競合は「漫画喫茶やカラオケ」というが、前者は個人で楽しむもので、後者は歌うことに用途を限定したもの。1人でも複数人でも楽しめ、さまざまな体験ができるのもゲーセンが持つ魅力といえる。

ゲーセンだからこその価値とは

 今の時代、ゲームセンターだからこそ提供できる価値とは何なのか。児玉部長は「迫力あるゲーム体験、ユーザー同士のコミュニティー」などを例に挙げる。

 「手前みそですが、弊社の『グルーヴコースター』シリーズという音楽ゲームが人気でして。無料で遊べるスマホアプリもあるのに、どうしてわざわざゲーセンに来るの? と思うかもしれませんが、大きな画面や大型筐体(きょうたい)ならではの音響技術による迫力ある体験や場の雰囲気は、家の中では決して味わえません。大会などイベントでの触れ合いやユーザー同士のコミュニティー作りなども、リアルな場所ならではの魅力でしょう」

 同社は最近だと「超百鬼秋杯」「闘神祭2015 全国格ゲ段位争奪戦」という全国規模の格闘ゲーム大会を主催した。ネット中継ではどちらも数万人単位の視聴者がいるほどの盛況ぶりだったという。日本でもコンピューターゲームをスポーツ競技のように捉える「e-sports」という考えが徐々に浸透してきているが、今後も賞金が出るものと出ないもの含めて世のゲーマーたちが熱狂できるイベントを仕掛けていくという。高田馬場にあるミカドなども、コアゲーマー中心の大会を定期的に開催して根強い支持を集める店舗の1つだ。

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