高速ブロードバンドが普及して、スマホのLTE通信スピードも日増しに速くなっている。私たちの家庭には「インターネットにつながるスマート家電」も少しずつ増えているけれど、その機能を使いこなせるようになれば、私たちの生活は豊かなものになるのだろうか? 実際の製品に可能な限り触って体験しながら、読者目線に立って攻略法を見つけていくことが、この連載の目的だ。
オーディオ・ビジュアル誌の編集・記者職を経たのち、フリーランスのライターとして活動する。ハイレゾに音楽配信、スマートフォンなどポータブルオーディオの最先端を行く技術とサービス、コンシューマー向けエレクトロニクス機器全般の使いこなしをテーマとするレビューに加えて、それぞれの開発者へのインタビューを得意とする。海外での展示会取材レポートやメーカー開発者へのインタビューなども数多くこなす。
初回は、今年ソニーが発表した「マルチファンクションライト」を取り上げよう。2016年度前半の商品化を目指して開発が進められている商品なので、正式な型番はまだ付いていない。実機を借りて筆者宅でハンドリングすることも検討いただいたが、まだ開発途中であるため、代わりに本機の開発現場である神奈川県・厚木の「ソニー厚木テクノロジーセンター」を訪ねて担当者に使い方をみっちりレクチャーしていただくことにした。
取材に協力いただいたのは、マルチファンクションライトの開発を指揮するソニー、デバイスソリューション事業本部 新規事業部門 L-Gadget事業室 統括課長、工学博士の横沢信幸氏だ。
横沢氏の所属部署から分かる通り、今回のテーマである新製品の「マルチファンクションライト」は、ソニーのデバイスソリューション部門が開発する製品だ。ソニーが照明器具のような、いわゆる白物家電を手がけるイメージはあまり馴染みがなかったので、まずはストレートに今回の製品が開発された理由から探ってみた。
マルチファンクションライトの本体は、「LEDシーリングライト」と「マルチファンクションユニット」の2ピース構成になっている。2つが合体することで1つのマルチファンクションライトが姿を現す。そして、マルチファンクションユニットの方には、ソニーが開発する様々なセンサーやネットワーク通信関連の技術が搭載されている。一方のLEDシーリングライトには、共同開発のパートナーである東芝ライテックによる照明器具製品の安全設計を含めたノウハウが注入され、両社の技術が溶け合うことでマルチファンクションライトが生まれることになった。
ソニーの照明器具といえば、TS事業準備室という別の部門が企画・開発する「Life Space UX」というシリーズも商品化されているが、あちらの製品は「モノ」そのもののクオリティや存在感を追求している商品であるのに対して、マルチファンクションユニットは天井という、日常生活であまり意識することは少ないけれども、特にリビングルームなど部屋の印象に大きな影響を与える場所に設置するシーリングライトなので、「目立たないことの価値」に主眼を置いている商品であると、ソニーの横沢氏はコンセプトの違いを説明している。
横沢氏が所属するデバイスソリューション事業本部は、もともとユーザーの手に直接に届く最終製品を多く手掛けている部署ではないが、今回のマルチファンクションライトはソニーが持つコアデバイスの力を直接エンドユーザーに届けることを視野に入れて開発された製品だ。
ドーナツ型のLEDシーリングライトの中心に合体させるマルチファンクションユニットの中には、センサーや通信モジュール、さらにはスピーカーやマイクなどソニーがオーディオの分野で培ってきた技術が集まっている。各デバイスの制御もソニーが独自に開発するエンジンが担っているが、本来はこの製品のために特別に作られたものではなく、エンターテインメントや生活家電の切り口からソフトウェアを最適化したものが搭載されている。
多彩な機能の操作はスマホやタブレットをWi-Fi経由でマルチファンクションライトに接続して、専用アプリで動かす。LEDシーリングライトの部分でAC/DC変換を行った電源をユニットに供給する仕組みだ。
天井への設置は一般的な照明用ソケットに取り付ける方式なので複雑な工事は必要としないが、ソニーでは本機の発売当初はハウスメーカーや電材卸事業者を通すかたちで販売していくという。そこにはパートナーである東芝ライテックの照明器具販売における確かなノウハウを生かして安全性を担保する狙いもある。将来的は一般の家電量販店などで購入できるようにもなるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR