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オンキヨーとパイオニアの入門ハイレゾDAPはどこが違う? 開発者に聞く(2/3 ページ)

» 2017年03月15日 20時45分 公開
[山本敦ITmedia]

エネルギッシュでツヤのあるサウンドを狙ったプレーヤー

 かたやパイオニアの“Private”「XDP-30R」はエネルギッシュでツヤのあるサウンドを狙ったプレーヤーであるという佐野氏。会場には「音質の完成度は90%ぐらい」という実機も展示され、持ち込んだイヤフォンをバランス出力につないで聴くことができた。DP-S1のサウンドは上品できめ細か。階調表現力も高い。XDP-30Rはパンチの効いた鮮やかなサウンドが突き抜ける。各ブランドの初代ハイレゾDAPであるDP-X1、XDP-100Rからキャラクターを受け継いだ音の違いはかなりハッキリと現れる印象だ。

XDP-30Rのホーム画面
本機もバランス/アンバランス端子を搭載
背面パネル。エッジを緩やかにスラントさせたデザイン
ボトムの角にカットを付けている
オンキヨー、パイオニアのDAPともに2つのSDカードスロットを搭載

 パイオニアのブランドからは同時期にバランス接続に対応する安価なイヤフォン「SE-CH5BL」も発売される。同社では今回発表した「ハイレゾDAPとバランス対応のイヤフォンを合わせて5万円内」で楽しめる高音質リスニングの魅力を、これまでハイレゾDAPを手にしたことのない入門層に向けて訴求する考えだ。

 今回のモデルはともに搭載するプラットフォームがAndroid OSから、独自のLinuxベースのOSに切り替わっている。その理由は「オリジナルOSの方が、メーカーの狙い通りに進化を導けるから」であると佐野氏が説明する。背景にはパイオニアのAVアンプの開発で、先行して蓄えられていた独自OSのノウハウがあったことも大きい。

パイオニア機はボリュームを動かすとゲージが斜めに動くグラフィックを採用

 しかし、その資産をDAPに転用するのはやはり生やさしいことではなかったようだ。その結果、ホーム画面から全ての機能にすばやくアクセスできる、DAPらしさを意識したシンプルで使いやすいUIができあがった。発表会場で実機を触りながら試してみたが、メニューの配置はシンプルで、文字の大きさなど視認性も高い。タッチパネルのレスポンスは今後発売までさらにチューニングが加わると思うが、今のところまずまずの感触だった。ボリュームノブを回転させると、GUIではDP-S1は上下に、XDP-30Rは本体右側を斜めにカットしたシャーシの角度に合わせて、斜めにゲージが動くところが洒落ている。

本体キーのホールドスイッチをオンにした際には、ボリュームキーと物理ボタンの振る舞いを「どちらかだけホールドする」ようにカスタマイズができる

 内部の基板についてはDP-X1A、XDP-300Rともに、Android OSを乗せたCPU部と、DACやアンプを配置するオーディオ部を完全に2枚の板に分けた構造としているが、DP-S1、XDP-30Rはともにシングル基板である。でもその中でも「グランビートの開発により、小型化した基板の中でパーツを最適な位置に配置して、オーディオ部と電源部をなるべく遠ざけて配置しながら音質を確保するためのノウハウが得られました。今回の新製品にもそれが生きています」と浅原氏が語っている。

 ハイレゾ再生はDSDが5.6MHzまで、リニアPCMが192kHz/32bitまでのネイティブ再生に対応する。最近は96kHz/32bitのハイレゾ音源が徐々に増えてきたことから「32bit再生」にはこだわったのだという。また24bit/16bitの音源も32bitに拡張するハイビットモードも実装しているので、例えばCDリッピングやインターネットラジオなどの音源もよりいい音で楽しめる。なお今回のモデルではUSBデジタル出力は非対応としている。

ストリーミング音源はTuneInとRadiko.jpに対応
3種類のデジタルフィルターを搭載する

 Bluetoothワイヤレス再生の対応コーデックがSBCにとどまったことについては少し気になったので、理由を佐野氏に聞いた。佐野氏は、今回の製品はともにバランス接続を含めて有線(ワイヤード)を中心にいい音を聴いてもらうことにフォーカスしたことが背景にあるようだ。ただ、ワイヤレスオーディオについては、最近はSBC伝送のクオリティが安定してきたことに加えて、両製品ともにAndroid搭載のハイレゾDAPやグランビートの開発によって培ってきた、通信電波ノイズがオーディオ部に与える影響を回避するための技術により、コーデックに左右されない高音質再生が可能であると浅原氏が補足する。佐野氏はさらに「ハードウェア的には同価格帯のハイレゾDAPを超えるオーバースペックなほどの性能を持っていますので、将来はワイヤレスオーディオ再生もユーザーの声を受けてより高音質化を図ることができるのでは」と進化の可能性についても触れた。

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