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AI技術がテレビの画質を上げる! 東芝レグザの「AI機械学習HDR復元」とは(1/2 ページ)

» 2017年06月19日 21時20分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 AI(人工知能)というとパーソナルアシスタントやロボットを思い浮かべる人が多いかもしれないが、その研究で生まれた技術は家電などにも活用されている。東芝の薄型テレビ“REGZA”(レグザ)の上位シリーズに搭載された「AI機械学習HDR復元」もその1つだ。最新のHDR(ハイダイナミックレンジ)対応テレビを最大限に活用できるという新技術に迫った。

有機ELテレビの「65X910」。「AI機械学習HDR復元」はX910シリーズと液晶フラグシップの「Z810Xシリーズ」に採用された

 HDRの登場により、従来よりもリアルな映像をテレビで楽しめるようになったが、課題は対応コンテンツが少ないことだろう。Ultra HD Blu-rayや動画配信サービスで対応が進んでいるものの、広く普及したDVDやBlu-ray Discは従来のSDR(スタンダードダイナミックレンジ)で、一般の人がもっとも見る機会の多い地上デジタル放送もHDR化の予定はない。せっかく高価な4Kテレビを購入しても、本領を発揮する機会が少ない。

 東芝が提案した「AI機械学習HDR復元」は、2013年のレグザ「Z8」シリーズから搭載している“ダイナミックレンジ復元”をベースに、SDRコンテンツを疑似HDRに変換するというもの。地デジやBDでも、HDRコンテンツに迫る広いダイナミックレンジを楽しめるという。しかも東芝は、その変換精度にかなりの自信を持っている。なぜか。

正解を手に入れた

東芝ソリューション開発センター、オーディオ&ビジュアル技術開発部第三担当の山内日美生グループ長

 東芝ソリューション開発センター、オーディオ&ビジュアル技術開発部第三担当の山内日美生グループ長は、「昨年、Ultra HD Blu-rayが発売されましたが、現在のUltra HD Blu-rayタイトルは4K/HDRのUltra HD Blu-rayディスクのほかに、2K/SDRのBlu-ray Discも入っています。つまり変換前のSDRコンテンツと、変換後の“正解”(=HDRコンテンツ)が一緒に入手できるようになりました」と話す。

 “正解”があれば数式を完成させることができる。つまり、HDR変換の精度向上における重要な要素を確保したわけだ。

 山内氏は続ける。「われわれが着目したのは、光のダイナミックレンジの変わり方――輝度のヒストグラム分布にどのような特徴があるか、です。Ultra HD Blu-rayとBlu-ray Discから同じシーンのヒストグラムを取り出し、SDRのガンマカーブに変更を加えていきます。出力されたヒストグラムが正解(UHD BD)と同じになるときの復元パラメーターを導き出し、それを変換テーブルに反映。この作業を繰り返します」

「AI機械学習HDR復元」の概要

 変換テーブルの精度を上げるには、サンプル数を増やすのが近道だ。しかし、「1本の映画から数十あるいは数百」(同氏)ものシーンを取り出し、同じ作業を繰り返すには膨大なマンパワーが必要になる。「例えば似たようなシーンでも、ほかのコンテンツでは(傾向が)異なることもあり、作業量は膨大です。人がやっていては、到底間に合いません」(山内氏)。そこでAIやディープラーニングといった分野を研究している同社ソリューション開発センターから機械学習の技術を導入。機械学習があったからこそ実行できた“力業”といえそうだ。

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