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シャープ復活の「IFA 2017」 強いリーダーシップが市場を牽引する(2/4 ページ)

» 2017年10月10日 06時00分 公開
[天野透ITmedia]

麻倉氏:ハイテッカーさんは「今おっしゃった両方の要素が、IFAにはある」「IFAにとってクリスマス商戦の商談はとても重要」と切り返してきました。IFAでは特に、各社のCEOをはじめとした大会社の責任者が一堂に集います。さらにそこへ関連会社や部品メーカーなどもやってくるわけです。ここで商談を行いクリスマス商戦に備える、これは非常に重要なことです。

メッセベルリン代表のハイテッカー氏との会談。ハイテッカー氏は言葉を選びながら、先を見通したIFAの構想と戦略を語った。ちなみに画像奥は通訳を務めたメッセベルリン日本代表部の久保田弥生氏

――IFAは週末になると、現地の一般来場者の方々が家族総出でお見えになったりするんですよね。並んでいるものも数カ月以内に出てくる新製品が多いということで、どうしてもコンシューマー目線になりがちです。しかしこの空間は確かに、新興メーカーの技術者にとっても大きなチャンスですね。実製品を交えながら開発中の新技術をアピールする、そのような見せ方はCESよりもIFAの方が向いているのではないでしょうか

麻倉氏:未来を見通す場合、短期的にはブースで製品の登場を見る。NEXTでは4〜5年先にメジャーになるであろう、後方技術を提案。頭の中にしか描けない10年先は「IFA SUMMIT」で討論会やパネルディスカッション。IFAという1つのイベントで、現在、近未来、遠い未来という流れを見渡すことができるわけです。「来場するメーカーにとっても、未来に向けてのタイムスケジュール・タイムドメインがハッキリ分かります。こういう展開を見せる場に、今のIFAはなっています」と、ハイテッカーさんは語っていました。なかなか戦略的ですね。

 話は少し変わって、4月にリスボンで開かれたGPC(Global Press Conference)のこと。日本人記者団とハイデッカーさんとの会談で、1つ私が質問してみました。「日本のCEATECがとても調子が悪いのですが、どうしたら良くなるとハイテッカーさんは思いますか?」この内容に、日本人記者団から拍手喝采が起きたんです(笑)

――ああ、少なくとも業界人が感じていることは皆同じなのか…… ところで、なぜ今その話を?

麻倉氏:これは先程のことと関連があるんです。CEATECはその運営において、JEITAなどの複数の業界団体と関係省庁などといった政府系の意見が入ってきます。そうするとさまざまな利害がぶつかり合い、新しい方向を打ち出すのがなかなか難しくなるわけです。一方のIFAは会場を運営している完全私企業のメッセベルリンが主催しています。自分たちの考えを概ね100%忠実に実行できます。

 先程の質問に対してハイテッカーさんは「同業者に対して批判するのはなかなか難しい」と返してきました。意思決定がいろんな方向でなされるのではなく、1つのクリアなセンターがあって、そこが意思決定と実行を単純に進める。これが毎年新たな提案を加え、そこに賛同も得られるというIFA(を主催するメッセベルリン)のヒミツなのです。

 この5年間くらいで見ると、南口に新設された大型ホール「シティーキューブ」や、グローバルマーケット、中国での分会「CE CHINA」など、ダイナミックな提案やサポートをしています。日本のコンベンションではあまり見られない私企業方式が、元気なIFAの原動力というわけです。

IFAのエグゼクティブ・ヴァイスプレジデントを務めるイェンス・ハイテッカー氏。大胆な変革でIFAが注目を浴び続ける秘訣を「いち民間企業が独自にやるから」と語る

麻倉氏:さて、ここからは今年非常に元気になった日本メーカーのお話です。何といってもシャープが良くなったのは特筆に値します。これまでシャープは色々ありましたが、ホンハイ傘下となった今は経営のスピードも早くなり、やることにメリハリが付いてブランドの色も出てきました。

――ソニーやパナソニックなどの派手さとは違う、明確な戦略ビジョンに基づいた力強さが今年のシャープブースにはありましたね

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