複数の家電やクラウドサービスを連携させる新事業の例として挙げたのは、睡眠環境の改善だ。同日、パナソニックは西川産業とのパートナーシップを発表。西川産業は寝具の製造販売で知られるが、一方で社内に「日本睡眠科学研究所」を有し、大学などとの産学共同研究など30年以上にわたって“睡眠”を科学的に研究してきた企業だ。その知見とパナソニックの技術を合わせ、睡眠環境をサポートする家電やサービスを開発するという。
両社は今後、日中の活動データや日々蓄積される睡眠中のバイタルデータをもとにユーザー1人1人が快適な眠りを得られるという「快眠アルゴリズム」を開発し、これに応じて空調や照明、音響などをトータルに制御。快適な睡眠をアシストするという。西川産業の西川八一行社長は、「睡眠は健康で生産性の高い一日を送るため重要な時間。われわれはトップアスリートにもデータとノウハウを提供して大きな成果を出してきた」と自信を見せる。また睡眠を軸に美容や食、教育など様々な領域に展開することも視野に入れている。
さらにパナソニックは、新規事業の開拓を目指し米国シリコンバレーを拠点にスタートアップを支援しているScrum Ventures(スクラム・ベンチャーズ)と共同で、新会社BeeEdge(ビーエッジ)を設立すると発表した。ファンドへの出資に加え、有望なスタートアップを発掘して事業化を支援することが目的だ。BeeEdgeの代表を兼任することになったScrum Venturesの春田真社長は、「大企業からは生まれにくいとされる尖ったアイデアを実現するプラットフォームを提供する」と自信を見せる。本間氏も「パナソニックは事業部制を復活させたが、技術開発部門や外から新しいシーズが提案されても事業部がやらないといえばできない。ほかの枠組みで事業化することで既存事業部も刺激を受ける。“出口の複線化”が必要だ」と共創を念頭に置いた投資であることを示した。
今年100周年を迎えたパナソニックだが、創業当初から会社を牽引してきた家電事業は存在感が薄くなっている。1月に米国ラスベガスで開催された「CES2018」では家電の展示が見られず、変わりに自動運転車の関連技術などに多くをスペースを割いた。
「イノベーションの最先端はシフトしており、今のミッション(家電事業)は残念ながらそうではないと理解している。しかし我々はパナソニックブランド製品をユーザーに届ける基盤の1つでありたい」と本間氏。各分野で先行する企業との協業によりイノベーションを早め、再び存在感を示したい考え。NTTドコモや西川産業との協業成果については、「18年度中にどんどん商品化し、世の中に問うていきたい」と話していた。
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