「2009年の薄型テレビ」――エコポイントからLED、3D、そして近未来テレビへ:デジモノ家電を読み解くキーワード
2009年も残りわずか。1年を振り返ると、年初に開催されたInternational CESの時点から、薄型テレビ関連のトピックが多かったように記憶している。今回は年末の特別編として、今年の薄型テレビ動向を振り返ってみよう。
薄型テレビは世につれ、世は薄型テレビにつれ
販売数から薄型テレビの1年を振り返ると、「当たり年」だったといえる。各メーカーとも出荷台数を順調に伸ばし、主流の画面サイズも37〜42インチクラスにアップした。パナソニックを例にすると、4〜6月期は前年同期比4%増を記録している。リーマンショックというマイナス要因があったものの、市場が拡大したことは間違いない(薄型テレビ国内販売増 パナソニック、4〜9月期予想を上方修正)。
好調の理由は2つ考えられる。1つは、政府が実施した景気刺激策「エコポイント」。利益なき繁忙といわれるほどメーカー間の価格競争は厳しく、販売数の伸びは必ずしも利益に結びつかないが、エコポイントがなければもっと寒々しい結果に終わっていた可能性は高い。そしてもう1つが、2011年のアナログ放送終了が浸透したこと。4月の“地デジ大使逮捕”が、はからずもその後押しをしたことは否定できないはず(草なぎ容疑者逮捕にネットも騒然)。薄型テレビは世につれ、世は薄型テレビにつれ……
LEDや3Dで高付加価値化
メーカーの利益はともかく、国内では好調裡に推移した薄型テレビの販売だが、欧州など世界市場レベルで見ると、日本勢のシェアは伸び悩んだ。一方で元気だったのが韓国勢で、LEDバックライトを搭載した製品を「LEDテレビ」と銘打って販売するなど、目新しさを感じさせる製品をいち早く投入してきた。
そのような背景から、秋以降は各社とも薄型テレビの「高付加価値化」を推進。シャープは、新世代パネルとLEDバックライトを組み合わせた「LED AQUOS」を投入し、次世代AQUOSの中核に据えた。ソニーもLEDバックライトの搭載を本格化する一方で、2010年には家庭用3Dテレビを展開すると発表した(ソニー、3Dテレビを2010年に投入 VAIOやPS3も3D対応へ)。この高付加価値化路線がどのように果実を生むかが、2010年の見どころの1つになるはずだ。
トリを飾ったのはやはり、あの製品
しかし、デジモノ家電ファンにとって最大の衝撃は、予定どおり12月に発売された「CELL REGZA」だろう。
東芝の薄型テレビ“REGZA”シリーズのフラッグシップたるこのモデル、画像処理エンジンの処理性能は従来の143倍、容量3TBのHDバイトを搭載したことにより地上デジタル放送8チャンネルを26時間まる撮り可能、という“薄型テレビ界の横綱”の名にふさわしい強力なスペックを備える。価格も約100万円と横綱級だが、薄型テレビの数年後すらも感じさせるエポックメイキングな製品といえる。
執筆者プロフィール:海上忍(うなかみ しのぶ)
ITコラムニスト。現役のNEXTSTEP 3.3Jユーザにして大のデジタルガジェット好き。近著には「デジタル家電のしくみとポイント 2」、「改訂版 Mac OS X ターミナルコマンド ポケットリファレンス」(いずれも技術評論社刊)など。
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