2月6日、西日本鉄道(西鉄)、九州旅客鉄道(JR九州)、福岡市交通局、東日本旅客鉄道(JR東日本)が「九州IC乗車券・電子マネー相互利用に関する協議会」を発足した(参照記事)。詳しくはニュース記事に譲るが、4社は2010年春を目標に九州におけるIC乗車券と電子マネーの相互利用サービス開始を目指すという。
福岡・北九州エリアのIC乗車券システムの相互利用については先の西日本鉄道へのインタビューの中でも語られていたが(参照記事)、これが実現すれば九州北部は「1枚のカード」でシームレスな公共交通の利用ができるようになる。これはユーザーの利便性が向上するだけでなく、電車・バスの利用促進に大きな効果があるだろう。事実、昨年のSuica/PASMOの相互利用化では、Suicaのトランザクション数が約2倍に急増し、「近距離収入の大きな伸びにつながっている」(東日本旅客鉄道 常務取締役 IT・Suica事業本部長 鉄道事業本部副本部長の小縣方樹氏、参照記事)。公共交通が主な移動手段である首都圏と地方都市の福岡では事情は若干異なるが、早期から相互利用化が当地における交通系FeliCaの普及と利用促進に“強い追い風”となるのは間違いない。
さらに今回の発表での注目は、JR東日本の「Suica」が九州での相互利用スキームに参加したことだろう。JR東日本は、2007年のSuica/PASMOの相互利用開始(参照記事)後も、“IC乗車券のシームレス化”への取り組みを積極的に進めており、これまでにJR西日本の「ICOCA」(参照記事)、JR東海の「TOICA」(参照記事)、JR北海道の「Kitaca」(参照記事)との相互利用化について発表している。そして今回の「九州IC乗車券・電子マネー相互利用に関する協議会」への参加で、JR九州のSUGOCAはもちろん、西鉄のnimocaと福岡市交通局のIC乗車券とも相互利用できるようになる。
Suicaは以前から“北海道から九州まで”全国どこでも利用できるシームレス性を重視してきており、各地のJRとの相互利用を進めてきた。そして今回、西日本鉄道や福岡市交通局も含めた相互利用化を発表したことで、今後、他地域でも“JR地域会社以外”との相互利用の動きが加速しそうだ。
西日本鉄道の「nimoca」を先駆けに、福岡では交通系のIC乗車券と電子マネーが一気に拡大していく。“かざすこと”が日常的な光景になるのに、大した時間はかからないだろう。そして福岡は、首都圏や大阪並みかそれ以上にFeliCaサービスが普及拡大する可能性があると、筆者は考えている。その根拠は、当地におけるよい意味での「密度」と「まとまり感」だ。
筆者はこれまでFeliCa決済やIC乗車券を導入した場所を全国各地で見てきたが、その中で“成功例”となった場所は、人口と経済圏が適度な密度でまとまり、さらに人々の域外流動が日常的ではないという環境傾向があった。その最たるものが、“Edyアイランド”とも呼べる沖縄であるが(参照記事)、首都圏も規模は大きいものの生活圏が一定エリア内にまとまっているという点で似た傾向がある。
この“アイランド”という観点でみると、福岡はまさに条件に合致する。同地は九州経済の中心地であるだけでなく、九州全域から人や企業が集まり、都市化の傾向にある。県の転出入統計でみても、人口は転入増の状況にあり、特に20歳前後の若者の転入が多い。一方で、地元企業を中心に“横のつながり”が太く、FeliCaの汎用性・拡張性をいかした連携サービスやキャンペーンがしやすいという傾向もある。FeliCaサービスを普及拡大する土壌としては、有利かつ有望な環境にあるのだ。
福岡の公共交通3事業者がFeliCaを導入し、相互利用を開始することは、この地におけるすべてのFeliCaサービスを拡大する起爆剤になりうる。FeliCaアイランド・福岡の誕生を、期待をもって見守りたい。
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