日本の伝統を伝え、ビジネスを改革する――街おこしのキーマンは「神社経営の変革者」(後編)嶋田淑之の「この人に逢いたい!」(4/4 ページ)

» 2008年04月19日 13時43分 公開
[嶋田淑之,Business Media 誠]
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病魔を乗り越えて――これからの日本社会のために

 こうやって業績だけを並べると快進撃の連続のようだが、実は恵川氏、たいへんな苦労を重ねている。

 「昨年の初めに、クモ膜下出血で倒れましてね。一時は死線を彷徨う危険な状態でした。でも神様は私にこの世での使命を与えたのでしょうか、通常では考えられないようなスピードで回復し、後遺症もなく、それまで通りの日常を送れるようになったんです」。

 体のためにも、今年こそはゆったりと過ごしたい恵川氏だが、彼の才能を世の中は放っておかないのか、ますます多忙な日々を送っている。

 神社や日本の伝統の良さを次世代に伝えること。そして神社というものをきちんとした形で残してゆくことを、自らのミッションとして自覚する恵川氏。子供たちを対象に神社で雅楽教室を運営しているほか、地域の小学校でも、授業の一環として日本の伝統文化を教えている。

 「海外に行った時に、きちんと日本の伝統文化を語ることのできる人になってほしいと念じています。同じ港区にあるミッション・スクール(キリスト教系の幼稚園から大学までの女子一貫校)では、小学校3〜4年生が、毎年参拝に訪れます。さすがに欧米ですね。宗教やそれと密接に結びついた伝統文化・習俗を大切にしていることを実感します。日本の学校も、そうあってほしいものです」

地元・赤坂小学校で伝統文化を教える
神社で開催している、子ども向けの雅楽教室

 全国の神社の倒産・廃墟化の危機が迫る中、恵川氏の目は、赤坂氷川神社の経営革新、赤坂の街おこしから、さらに日本の教育改革と、それを通じた日本の伝統文化のルネッサンスを指向している。

 恵川氏のこうした取り組みの数々をひとつのモデルケースとして、全国の神社の経営革新に結び付けてゆけないのだろうか?

「神社の世界では、昔から『言挙げ(ことあげ)せず』と言いまして、“自己主張してはいけない”という基本姿勢があります。ただそうは言っても、神社にとって厳しい時代を迎え、教化活動(情報の共有化)も必要という動きに、最近ではだんだんなってきています」

 恵川義浩氏は、36歳を迎えたばかりのバリバリの若手である。氏の今後の活躍を通じて、日本の神社経営が、さらには、日本社会が良い方向へと向かうことを祈らずにはいられない。

嶋田淑之(しまだ ひでゆき)

1956年福岡県生まれ、東京大学文学部卒。大手電機メーカー、経営コンサルティング会社勤務を経て、現在は自由が丘産能短大・講師、文筆家、戦略経営協会・理事・事務局長。企業の「経営革新」、ビジネスパーソンの「自己革新」を主要なテーマに、戦略経営の視点から、フジサンケイビジネスアイ、毎日コミュニケーションズなどに連載記事を執筆中。主要著書として、「Google なぜグーグルは創業6年で世界企業になったのか」「43の図表でわかる戦略経営」「ヤマハ発動機の経営革新」などがある。趣味は、クラシック音楽、美術、スキー、ハワイぶらぶら旅など。


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