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» 2008年07月11日 12時17分 公開

マクドナルドに飲み込まれるカフェ市場?それゆけ!カナモリさん(3/3 ページ)

[金森努,GLOBIS.JP]
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7月2日 マクドナルドに飲み込まれるカフェ市場?

 マクドナルドの怒濤の攻勢が止まらない。カフェ市場はその強大なパワーの前に飲み込まれてしまうのだろうか? 

 →100円パン「マックベーカリー」を販売――日本マクドナルド

7月18日からスタートする「マックベーカリー」

 マクドナルドがまた、新たな攻勢をかけようとしている。まだ、たった3品と侮る事なかれ。これは、今日の日本のカフェ業界にとって大きな脅威になると、筆者は考えるのである。

 5月9日のコラム(参照記事)で筆者は、プレミアムローストコーヒーに衣替えしたマクドナルドの100円アイスコーヒーは、そのコストパフォーマンスで、筆者の愛するスターバックスにとって大いなる脅威となるだろうと書いた。

 マック VS スタバの勝負の趨勢はまだはっきり見えないが、街中でも随分と大勢の人がマックのアイスコーヒーを飲みながら歩いている姿を目にするようになった。テイクアウトして飲むコーヒーといえば、少し前までは、まずはスタバだったはずだが……。

 カフェといえば、マクドナルドにも蹉跌がある。「マックカフェ」である(参照記事)。顧客層拡大を狙ったものの、なかなか集客はままならず、店舗展開の勢いもつかず、縮小の一途を辿っている。

 しかし、マクドナルドの恐ろしさはそのリカバリー力にある。

 ホット、アイス共に100円コーヒーのプレミアム化を果たし(参照記事)、また、今回のベーカリーメニューの展開を始めた。本来であれば、どちらもマックカフェで展開すべきメニューであり、事実、数少なく残っているマックカフェの「ベーカリー&パイ」メニューとは完全にカニバリ(共食い)状態になる。しかし、もはや数少ないマックカフェを気にせず、「反転攻勢に出る」との意志決定がなされていることは明らかだ。

 新規のマックカフェ店舗に顧客を呼び込むよりも、既存店のコーヒーをプレミアム化し、ベーカリーメニューなどを展開する方が、明らかに早い。また、店舗の改装も特に都市部では急ピッチで進めているようだ。郊外店を中心に残る、旧来の原色たっぷりで、FRPかプラスチック製の居心地の悪い什器から、シンプルにしてちょっとオシャレで、1人でも入りやすい店舗にどんどん改装が進んでいる。事情を知らなければ、「ああ、ここはマックカフェってやつに変わったんだ」と勘違いしてしまいそうだ。

スタバは原点回帰の対抗策を

 プレミアムコーヒー、店内改装、ベーカリーメニュー。この一連の動きは、マックカフェのリカバリーであり、マックカフェの目的であった、「顧客層拡大」を実現しようとしていると見て間違いないだろう。顧客を拡大するということは、今までマックにも、カフェにも足を運ばなかった層を新規に開拓するという意味もあるが、当然、他のカフェからガッツリと顧客を奪うことも視野に入れているはずだ。

 さて、「マクドナルドに飲み込まれるカフェ市場」とタイトルを付けたが、過去の記事でも記したように、スタバ、加えてタリーズといった「シアトル系コーヒー」のカフェは、やはり味の好みはあるものの、価格攻勢では影響を受けざるを得ない(参照記事)

 加えて、前述のような店内改装が加速すると、その差異は一層縮まることになる。シアトル系に限ったことではない。カフェは、ドリンクやフードを提供しているものだけではない。「空間」も商品のうちだ。残念ながら、スタバは少々狭い店舗が多くなってしまった。

 ドトール、カフェ・べローチェなどの低価格カフェは、もとより狭い詰め込み型だ。一人席の使い勝手などは、改装したマック店舗の方が良い。

 とはいえ、マックといえば、やはりハンバーガーやポテトがフードのメインというイメージは払拭しがたい。これまでにも、おやつタイムを狙って、100円フードとドリンクをセットにして150円という価格で提供していたが、イマイチ魅力に欠けていたのも事実だ。筆者は、小腹が減ったとき、焼きたてパンのイートインサービスのあるカフェに行ってしまう。

 それを阻むものとして、マックカフェがあったわけだが、それに代替するベーカリーメニューが今度は全店で展開されるのだ。コーヒー、フード、店内空間と、今までのウィークポイントを確実に克服しているマクドナルドは、やはりカフェ市場にとって大きな脅威であろう。

 そして、マクドナルドの最大の脅威は、やはり何といっても「価格」である。顧客に低価格で提供しつつ、コストを低減し、しっかり稼げる構造を築いている。そこには同社の強大な「規模の経済」が存在している。その「コスト・リーダーシップ戦略」としての強力なポジションを覆せるプレイヤーは、まず登場することはないだろう。

 景気が低迷を始め、世の中、値上げラッシュだ。消費者の生活防衛意識は高まり、財布の紐も固くなる。マクドナルドの低価格路線は、このタイミングでは最大の威力を発揮することになるのは間違いない。

 では、他のカフェはマクドナルドの攻勢の前に為す術がないのか。そうではない。各社が原点回帰をし、自分の強みを最大化すべきなのだ。

 例えば、この度のマックのベーカリーメニューは、パンは注文後に店舗で温めて客に出すようにし、「焼きたて感」を強調するという提供方法だ。

 あくまで、焼きたて“感”。焼きたてではない。焼きたてパンのイートインの店は、極力細かなタイミングでパンを焼き、焼きたてを提供するという対抗策があるだろう。スタバも、是非とも店内空間の充実を復活させてほしい。そしてまた、従業員の顧客応対を再度強化してはどうか。マクドナルドにも優秀な接客マニュアルがあるが、スタバも、応対の仕方やコーヒーの淹れ方に始まり、従業員のモチベーション施策など人を生かすさまざまなノウハウを蓄積している。まずはそこから徹底してはどうだろう。

 時流に乗ったコスト・リーダーの攻勢は凄まじい力を持つ。「どうしてもスタバでなけりゃ」というコアなファン(筆者もその1人なのだが)以外は、軒並み持って行かれることもありうる。黙っていれば飲み込まれる。

 飲み込まれないために必要なのは、正しい脅威の認識と、前述の通り、原点に回帰した対抗策を徹底することだろう。

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