なぜ東京オリンピック招致は盛り上がらないのか?郷好文の“うふふ”マーケティング(3/3 ページ)

» 2009年09月10日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
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不完全燃焼にオリンピック精神は似合わない

 「今さら日本でオリンピック? 今さら東京で? う〜ん……、何か燃えない」。支持する55%もホンネはこんなところだろうか。そこには経済恐慌の影響と、低成長慣れした国民心理がある。

 経済恐慌以降、日本を覆いつくす“ひなびた”感じ、あきらめムード、縮みきった夢、成熟しきってしぼんでいく流れ。その日本の首都が東京である。企業は買収・合併でグローバル市場で戦うか、そのままで国内の成熟市場で生き残るかの二択に直面している。個人はそのどちらに乗るにせよ、自分さえ生き残れればいいという自己中心主義が広がる。低速回転かつ不完全燃焼しているのが今の日本だ。

 一方、オリンピックの開催の意味とはなにか。

 開催都市のあらゆる面をレベルアップさせ、成長軌道に乗せるのがオリンピック。端的な例が北京オリンピックで、共産国家から成長国家への踏み台になった。オリンピックは成長する国家や都市の着火点となる。それは「citius,altius,fortius(より速く、より高く、より強く)」というオリンピック精神と一致する。

 「その精神が欠けた国の首都にオリンピック開催は似合わない」――そんなムードが55%という数値として表れたのではないか。明日の東京より、明日のリオの方が何かが生まれそうだ。当の東京都民でさえそう思うのだから、世界の人がどちらに投票するか明白だろう。

 都知事は都民に向かって招致アピールをこうすべきだった。

 「1964年を思い出そう(読者のほとんどは知らないでしょうが)。戦後の焼け跡から抜け出して、国の成長軌道に乗る着火点が“昭和オリンピック”だった。今日本が、経済恐慌という“焼け跡”から抜け出すためにも、国際国家として再生するためにも、“21世紀TOKYOオリンピック”が必要である」

 もう、そうしたとしても遅いかもしれないが(笑)。

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