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» 2009年10月09日 10時00分 公開

劇的3時間SHOW:『咲-Saki-』『鋼の錬金術師』の田口浩司プロデューサーが語る、儲かるアニメの作り方 (6/6)

[堀内彰宏,Business Media 誠]
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他社と組んで海外に攻めていきたい

 講演が行われた東京都港区のスパイラル・ホールには、何倍もの抽選をくぐりぬけた300人ほどの観衆が詰めかけた。講演後の質疑応答では多くの参加者から活発に質問が投げかけられた。

観衆は20代が中心。男女比はほぼ5:5。業界関係者らしき人たちも質問をしていた

――海外ではKindleやiPhoneが主流になりつつあるのですが、PSPだけでなくそれらを通じて配信することは考えていますか?

田口 今朝の役員会議で同じ話が出たところなのですが、スマートフォンは今、非常に伸びています。北米の携帯電話市場ではスマートフォン関係がシェアの約30%ぐらいです。スペックが上がって、いろんなことができるようになって初めてシェアが伸びているという状況ですね。その30%のうち、9割近くが3つのメーカーで占められています。当然、iPhoneが一番大きいです。となると、次のチャンスとしてそれはあるのかなと思っています。

――海外のマーケティングに関して、有料配信以外のアプローチを考えていますか?

田口 アフィリエイト広告って、市場として結局そんなに大きくなりませんでしたよね。コンテンツ内広告みたいなこともみんな試しているのですが、どれもものになっていないというのが実態です。でも、ものになるまでやり続けるしかないので、「いろんなトライアルをやっていこう」と思っています。

 しょせん、スクエニなんて新興の出版社です。「1社では無理だね」ということで、集英社も講談社も角川もうちもみんな組んで海外に攻めていって戦略的にユーザーを増やす、イコールマーケットを増やすという仕組みを作るしかないなと思っています。そのために今回の配信の会社もみんなでお金出し合って作りました。

――海外での配信ビジネスについてうかがったのですが、国内のWebでどういった展開をされようとしているのか教えてください。スクエニさんは「ガンガンONLINE」をやっていると思うのですが。

ガンガンONLINE

田口 2008年の10月からWebでオリジナル作品を連載するというのを試験的にやっています。ほかで連載したものをWebに移すのではなくて、Webのみで新しいコンテンツを連載するということをやってきました。今年になって本格始動して、コミックが今7点ぐらい出ていて、十分黒字化の見込みがついていると思っています。

 ただ、日本で全面的にWebにシフトするのは怖いという部分がありますよね。紙のビジネスが全国的に回っていますので。「Webで無料で連載を見てもらって、コミックは紙で買ってもらう」というビジネスが日本ではいいだろうと思ってやっているのですが、この仕組みは多分欧米では通用しません。欧米ではコンテンツの切り売りをせざるをえないと思います。

 ガンガンONLINEでは、紙で出して原価がかかると怖いような作品、あるいは試験的にジャンル開拓をしていきたい作品、あるいは今流行しているものではなく、一歩先をつかもうという理想を持っている方々向けの作品を提示しています。そこから火が付く作品がでれば先行きも見えてくると思うのですが、1年経ったばっかりなので「赤字にはならないだろうな」ぐらいが見えてきたばかりです。

 出版だと営業が本屋さんに注文をとって回るわけなのですが、コミックの棚をとる、文庫の棚をとる、これが一番大変なんですね。我々が小説をやろうと思っても、メインで小説をやっていないので棚が取れないのです。棚が取れないと初回配本して売れなかったらすぐ返品が来てしまうという状況なので、小説的なものも含めてそういったジャンルをやるためにWebで見せるということをやっていくのはありなのかなと思っています。

――アニメ化の戦略はよく分かったのですが、『月刊少年ガンガン』の収支はどうなっているのでしょうか? 単にアニメ原作の供給装置となっているだけなのでしょうか。

田口 雑誌は赤字です。『月刊少年ガンガン』は、1000ページを超える殺人兵器のような雑誌です。なぜそういうことになったかというと、先ほど言いましたエニックスお家騒動があって、それまでの編集部員たち、連載作品を描いていた作家たちが抜けてしまった、という状況がありました。

 その中で我々が出版部門を再生しなければいけない時に、何万部のコミック売り上げが見込める作品が何本、何万部いくかもしれない作品が何本と構成を決めていくわけです。すると、これぐらいまで弾数を増やさないといけなくなった。これ以上はやばいけど、ここまでだったら大丈夫だよというギリギリが1000ページだったんですね。おっしゃる通り、雑誌自体は(アニメ原作の)弾の供給装置です。「あんなに厚いの誰も持って帰らないよ」とかよく言われましたが、結果的にそれが正解だったのかなという気はします。

――受けるアニメの条件として、「萌え」や「腐女子」が出てきたと思うのですが、そうした条件は海外でも同じなのでしょうか?

田口 シュールギャグ(『天体戦士サンレッド』)はダメでした。まあ(舞台が)溝の口ですから。ただ、萌えは結構いるんですよ。2008年にフランスのJapan Expoに行った時、会場の中庭でフランス人たちがハルヒダンスをみんなで踊っていたりして、いないことはないんだなという気はしました。ただ、日本よりもかなり少ないですね。また、ロリータポルノの規制が厳しいので、かなりギリギリになってしまうと思います。

 今回はたまたま『黒執事』を持っていったこともあって、腐女子系は非常に多かったです。Japan Expoでは4年前、東京ガールズコレクションのようなものをパリでやって、そのころは109的なファッションをクールだとフランス人女性は言っていたのですが、今年行ったらみんなゴスロリでした。フランス人がゴスロリ着ていたら、本物のフランス人形みたいだなと思いました。ジャパニーズクールと言っている人たちも、その中身が変動していっている部分があって、今はゴスロリ系や腐女子系はアリです。でも来年どうなるかは分かりません。

――鳩山新政権になって国立メディア芸術総合センターが建設中止する方向ですが、そうした箱物以外で業界として国に求めるものがあれば教えてください。

田口 先ほどのお話は「出版社もうかったよ」みたいな自慢話のように聞こえたと思います。確かにうちはもうかりました。しかし、もうかっていないポジションの方々はいっぱいいらっしゃる。それをどう変えなければいけないかということを、まず考えなければいけない。そうでないと、制作者がいなくなってしまうということがあると思います。

 制作者を支援するために、特にアジアを中心としたコンテンツビジネスを伸ばそうとしている国は、補助的なものを出していると聞いています。ヒットしたらクリエイターに必ずお金が返る仕組みというものを作らないと、作る人間がいなくなってしまう、これが一番大事なことだと思います。そのための補助、補助金なのか、インフラを作り直すのか分かりませんが、国と一緒にやっていければいいなと思っています。

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