原発の情報を公開できない……その背景にあるものとは原口一博×武田邦彦 それでも原発は必要か(2)(4/4 ページ)

» 2011年07月05日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
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原口:例えば福島第1原発3号機はMOX(モックス)燃料(ウランとプルトニウムを酸化物の形で混合した燃料)を使用しています。MOXの成分、これはベルギー製。どういう契約になっているかというと、コンフィデンシャル契約になっていました。要するに秘密です。

 また原発の設計図は公開されていません。なぜ公開されていないかというと、もし誰もが見れる状態になってしまうと、テロの危険性が増すからだそうです。例えば蒸気系の冷却システムが取り外されていたことがあったので、僕は問題提起したことがありました。これに対し、ある人は「これは再稼働するときに、スムースに行うためのいわば“盲腸”のようなもの。浜岡原発でトラブルがあってから、取っているんですよ。盲腸をとっても、大丈夫ですから」と言っていました。

 確かに原子力安全委員会の議事録(2003年)には「蒸気系の冷却システムは取り外しても構わない」といったことが書かれていました。しかし効率がいいから取ってもいい、なんて書いていません。なぜこのような隠し事をするかというと、テロに対する機密事項であるから。あるいは企業の機密事項であるから。でも機密事項を理由に挙げ、情報が公開されず、結果的に国民がこれほどのリスクを背負うというのはおかしい。

 浜岡原発ではこれまで、さまざまなトラブルを起こしてきました。静岡県のお茶から高濃度の放射性物質が検出されましたが、箱根の山を越えて、神奈川県の数値より高いのは本当なのでしょうか。ある静岡県の人はこう言っていました。「今は福島第1原発のせいにされていますが、ひょっとしたら浜岡原発で起きたトラブルが原因かもしれない」と。

 放射性物質の中身を調べれば、何によるものなのか、いつのものなのか、が分かります。今、静岡県のお茶から検出された放射性物質を調査しているところです。

 →続く

プロフィール

原口一博(はらぐち・かずひろ)

1959年佐賀県生まれ。1983年東京大学文学部心理学科(第4類心理学)卒業。1987年佐賀県議会議員当選。1996年衆議院議員に当選。2003年民主党副幹事長。2009年総務大臣。この間、郵政民営化に関する特別委員会筆頭理事、総務委員会筆頭理事、拉致議連(北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟)副会長などを歴任。現在は衆議院総務委員長を務める。

著書に『ICT原口ビジョン』(ぎょうせい)、『平和 核開発の時代に問う』(ゴマブックス)などがある。

武田邦彦(たけだ・くにひこ)

1943年東京都生まれ。1966年東京大学教養学部基礎科学科卒業後、旭化成工業に入社。1986年より同社ウラン濃縮研究所長を務め、自己代謝材料の開発に取り組む。1993年より芝浦工業大学工学部教授、2002年より名古屋大学教授を経て、2007年3月より中部大学総合工学研究所の教授。また内閣府原子力安全委員会の専門委員などを歴任する。

著書に『環境問題はなぜウソがまかり通るのか』(洋泉社)、『偽善エネルギー』(幻冬舎新書)のほか、原発問題をテーマにした『原発大崩壊! 第2のフクシマは日本中にある 』(ベスト新書)などがある。


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