怪文書をバラ撒いているのは、誰か――暴力団と役所の関係中田宏「政治家の殺し方」(6)(2/2 ページ)

» 2012年01月19日 13時00分 公開
[中田宏,Business Media 誠]
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政治家の殺し方』(幻冬舎)

 ところで、市役所と暴力団というのは、一見、接点がなさそうで、実はそうでもない。2008年には北海道の生活保護世帯の夫婦が、介護タクシーを通院に使ったとして約2億3000万円を不正受給し、北海道警に逮捕される事件が起きている。

 これにはタクシー会社役員も絡んでいたが、市は不自然な受給を監査委員や顧問弁護士に指摘されながら、医師に診療内容を確認するなどの調査を行っていなかった。過去にも同暴力団組員と市営住宅の家賃滞納でトラブルになったことがあり、それが嫌で不正受給を見て見ぬふりをしたものと思われる。

 ましてや人気稼業ともいえる政治家はスキャンダラスな噂など、避けたいに決まっている。1987年には、故竹下登元首相に対する右翼団体の「ほめ殺し」街宣活動もあった。このように暴力団組員にとってみれば、市役所を脅してお金を奪うことなど何でもないことなのだ。おそらく全国の自治体でも似たようなことがあるのではないだろうか。実際、私が市長に就任して1年経った頃にも右翼団体による街宣活動が行われた。2年近くにわたる連日の活動に辟易したが、その時もやり過ごすしかなかった。 

 政治の世界では、怪文書というのはしょっちゅうばら撒かれる。だれが言い出したかわからぬ嘘も、大げさに騒ぎ立てて噂を流せば、やがて「文書が出ている」「噂が流れている」という「事実」が週刊誌などに書きたてられる。大手メディアの週刊誌に掲載されれば、今度はその記事をもとに議会での追及が始まる。国会でもよく使われる手法だ。本をただせば、その記事を利用したい人=議員がそもそもの嘘ネタの発信源なのだ。

続く

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