松井:そうです。仕事はあまり生まれないんじゃないかな……と思っていて。
佐々木:でも、例えばフォックスコン(Foxconn)には70万人ぐらいの労働者がいて、アップルなどの製品を組み立てています。あれが一種の「ローカルサポート」であれば、仕事は生まれているのではないでしょうか。ただしその場合、報酬が完全に世界平準化してしまいますが。
松井:中国にとっては悪い話じゃないと思うんですよ。でも、日本はどうなっていくのでしょうか。例えば、円高の問題があります。1ドル=120円のときに日本へ来て、100円ショップに行けば「安いなあ」と感じる。でも、1ドル=70円のときでは「まあ、今は買わなくてもいいか」となる。結局、そこでは買わないことになるのですが、そういうしわ寄せって企業にいくはず。
松井:話が少し変わりますが、私はアップルを辞めたあとに、携帯情報端末などを製造するパーム(Palm)で半年ほど働いていました。この会社はけっこう外注を出していたんですよ。ルーマニアに。
佐々木:東欧はソフトウェアの開発技術が強いですからね。
松井:ルーマニアは教育レベルがすごく高いのに仕事が少なくて、大学院を卒業しても就職できないというのは当たり前。ではどうやって生活をしているのかというと、仕事をとってきてくれる会社があるんですね。
例えばマイクロソフトもかなりルーマニアに仕事を投げている、と聞いています。ルーマニア人の賃金は、米国人の半分ほど。しかも時差の関係で、米国人が寝ている間に、仕事をやってくれる。でも、本来は米国にあるはずの雇用が、ルーマニアに移ってしまってるんですよね。
佐々木:なるほど。
松井:米国が夜のときに、ルーマニアでは昼間。両者にとって、とても都合がいいことなんですね。私も以前、東京とアイルランドに関連部署をもっていました。そこで時差を利用すれば、24時間体制で仕事をまわすことができてしまう。
佐々木:それをプラットフォーム化したのが「クラウドソーシング」(ネットなどを通じて、不特定多数の人に業務を委託する雇用形態)ですよね。Web制作の仕事がアフリカに奪われているようなもの。同じ仕事を米国ですれば何十万円もかかるものが、ナイジェリアであれば数千円でできてしまう。米国で単純なWeb製作をしている人には、もう仕事がないですよね。
(つづく)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング