中高年を襲う「新しい肩たたき」の手口が巧妙になっているサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(2/2 ページ)

» 2012年11月26日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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就業規則、ちゃんと読んだことありますか

 そこで質問です。現在、手元に「就業規則を持っています」という人はどのくらいいるでしょうか? 会社と従業員との間では、働くことに関してさまざまなルールが書面化され、それに則ってすべての人は勤務している……はずなのですが、現実的には「そんなものは見たことがない」「持っていないし、渡されてもいない」という人が少なくないでしょう。

 でも、いざという時に「そんなはずはなかった」とか「それは知らなかった」では済みません。約束事は書面で交わされていて、それに沿って何事も行われていると言われれば、それであなたの負けなのです(もちろん、実際にはそれほど単純でないことは承知しています)。

 ネットスラングで「情弱」という言葉があります。詐欺事件などがあった際に、しばしばネット上では「情弱だから騙されるのさ、馬鹿なほうが悪い」というコメントを見かけることがあります。そう、働くことに関しても、情弱になってしまわないように、皆さん自身が注意を払う必要があるのです。

巧妙な肩たたきもある、その例を少しだけ

 狭い部屋、白い壁に向かって何もさせないでジッと座らせておくという拷問のような肩たたきもあれば、もっと巧妙な肩たたきもあります。その一例をご紹介しましょう。

 それは研修のスタイルを取られて行われます。2日間のケースが多いようです。1日目はファイナンシャルプランナーなど、お金の専門家がやってきて「これから生活していく上で必要な資金について」一緒に考えましょう、というワークショップのような講座が行われます。対象者は、30歳代後半から40歳代中盤くらいの人が多いでしょうか。育ち盛りの子どもがいる、さらに住宅ローンもキツイ時期という人も多いので、とてもためになる話が多い。これからの人生、お金がどの程度必要なのか自覚させられて、一日目は終了します。

 2日目は、キャリアコンサルタントのような、キャリアの専門家が登場します。今までの自分の仕事の棚卸しをして(参照記事)、強みや弱みを整理し、セールスポイントなども書いたりする。場合によっては職務経歴書の書き方もレクチャーされ、実際に書いてみることもあるようです。これもワークショップスタイルで行われることが多く、和気あいあいと作業が進められます。ただ本来、このたぐいのワークには「未来予想図」を描かせるパートが付きものです。この会社で今後どのように働いていくのか、キャリアプランを整理させて「さあ、それに向かって頑張りましょう」となるはずなのですが、それがない。……察しの良い方はもうお分かりですね。これも一つの肩たたきの手法なのです。

 やり方が乱暴なケースだと、最後の締めくくりに「あなたたちにはもう、してもらう仕事がない。なので、今後は自分で仕事を探してもらうことになる。今退職するなら有利な条件になる。そして、皆さんにはこんなにたくさんの能力があるじゃないですか。大丈夫です、転職できますよ、今なら」という話が会社からされたりします。1日目にはお金がいくらかかるか、現実を把握した。さらに2日目は「自分のセールスポイント」まで自分の手で楽しく整理した。けれどもその2日間は、自分の退職への道を自分で整備していた、という残酷なものになるのです。突然、ハシゴを外されたことに気がついた人たちは愕然とするそうです。が、企業にしてみれば「退職後の道筋を提示している」と、ある意味でいいことをしているつもりなのかもしれません。実際、そううそぶく人事担当者も少なくありません。

肩たたきにあわない方法はない

(写真と本文は関係ありません)

 こういう巧妙な肩たたきは、多くの場合「その手法を考えだした人たち」が企業のしかるべき部署に売り込みにきます。「解雇方法 セミナー」と検索してみれば、一目瞭然です。ここでは書きませんが、本来なら労働者の味方になっても良い、あるプロ筋の人たちが、実は率先してそういうノウハウを「プロの手口」として売り込んでいる実態が分かります。専門家である彼らに、素人であるただの従業員は勝てるわけがありません。そう、狙われたら最後。なかなかそこからは逃れられないのです。

 では「肩たたきにあわなければいいじゃないか」という人もいるかもしれません。会社にとって自分はなくてはならない人物、十分に価値もあるので、そういう目にはあわないよ、そう思っている人もいるでしょう。が、それは過信です。会社にとって、なくてはならない人材というのは、そう多くは存在しません。ごく一握りです。よく考えてみてください。あなたが病気になって会社を休んだとします。仕事は滞って、同僚や部下はみんな往生するでしょう。でも、その状態が長く続いたらどうでしょう? あなたの代わりを見つけて、業務が正常に行えるように、会社は調整するはずです。そう、自分の代わりなんていくらでもいる、と考えておいて間違いはない。どんな理由で肩を叩かれるかなんて、誰も分からないのです。

 肩たたきにあわない方法がない、としたら、自分自身でできることは1つです。肩たたきにあったとしても困らないように備えておくことです。人脈を作っておいて、いざという時に「うちに来い」といってくれる味方を作っておくのも、一つの手でしょう。本業に取って代わっても遜色のない副業を始めておいて(ここで忘れずに、副業していいのかどうかを就業規則で確認です!)いつ辞めてもいい状態を作っておくのも良いでしょう。自分の市場価値を客観的にアセスメントしてもらって、常に高いうちに「自分を売る」のもアリです。自分のことは自分で守るしかない。そのためには「備えよ常に」なのです。

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