秋元康に聞く、大島優子さんってどういう立ち位置ですか?AKB48の戦略!(2/2 ページ)

» 2013年03月05日 08時01分 公開
[秋元康, 田原総一朗,Business Media 誠]
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次のリーダーはプロデューサーではなく、ファンが決める

book 『AKB48の戦略! 秋元康の仕事術』(アスコム)

田原:僕が気になったのが、エースでセンターの大島優子さんです。選抜総選挙でトップを争う常連で、ニホンモニターの「2011年タレントCM起用社数ランキング」によると、女性タレントで最多の19社のCMに出ていたと。彼女は、どういう立ち位置なんですか?

秋元:大島優子は2期なんです。たかだか半年なんですけど、1期と2期の差がやっぱり大きいんです。1期の前田敦子や高橋みなみたちチームAの初日は、一般のお客さんが7人。大島優子がデビューしたときは、劇場が満員。高橋みなみと前田敦子は7人のときを知っているけど、大島優子は知らない。もちろん満員といっても250人だから、苦労は変わらない。でも、1期と2期では暗黙のうちに、壁みたいなものがある。かと言って、別に1期の前田や高橋が、あるいは2期の大島が溝を作っているわけではないですけど。

田原:成長株の1人、渡辺麻友さんはどうですか?

秋元:天性のアイドルです。アイドルになるために生まれてきたような子です。さらに、松井珠理奈、島崎遥香あたりが、次を期待されている子たちです。ただ、どうなるかは分からないです。というのは、本人たちの意識もあるし、ファンのみなさんの支持や不支持もある。僕はプロデューサーとして前田敦子をセンターにしましたが、もしかしたらファンの総意は大島優子だったかもしれない。例えるなら、前田敦子は王・長嶋で、大島優子は野村克也。

田原:タイプは違うけど、どっちも同じくらい実力があるんだ。

秋元:松井珠理奈と松井玲奈は、名前が似ているので姉妹かと思われる。たぶん松井珠理奈がいなかったら松井玲奈が1番手になっていたでしょう。どちらが優れているということではなく、期せずして、だいたいツートップになっていくんです。互いに全然違うタイプの2人が組み合わされて、相乗効果が生まれる。

 前田敦子は人見知りな子で、不器用で、すごくストイックで、やりたくないのにセンターをやらされた。子役出身の大島優子は、愛想も人当たりもいい子で、仕事や人付き合いの重要さをよく心得ている。この2人が競っていくわけです。

田原:そうか、大島優子は、もともと子役なんだ。

秋元:だから大島優子は、売れなくなるとはどういうことか分かっている。だから、与えられたチャンスを絶対にムダにしない。どんな取材でも全力で対応するし、ファンサービスも一生懸命やる。前田敦子は、そういう経験がないから本当に人見知りで、ときには不機嫌そうな顔をしてしまう。この2人をうまくまとめていたのが高橋みなみです。

田原:でも、大島優子には、人をかきわけてのし上がるという感じがないですね。

秋元:ないです。それはやっぱり1期に対するリスペクトとコンプレックスでしょう。自分が総選挙で1位になって、なんやかんや言っても、やっぱり7人しか客がいなかった劇場から始めた1期の人たちはすごいというので、1歩引いてしまう。

田原:分かる。大島優子には謙虚さを感じます。

秋元:そうですね。謙虚だし、彼女は焦らず次を待っているんです。大島優子は、前田敦子が卒業して名実ともにセンターですから。だから東京ドームまで来たAKB48が、この先どこまで行くか。そこで渡辺麻友や松井珠理奈、島崎遥香たちを育てながら、自分も前田のように卒業していきたいと思っているのではないでしょうか。

田原:柏木由紀さんはサラリーマンが娘にしたいナンバーワンだとか。彼女の魅力は?

秋元:彼女は非常にノーマルです。常識があって、自然と親に紹介したくなる感じ。

田原:どちらかと言えば、タレントでノーマルというのはマイナスでしょう?

秋元:でも、前田みたいな子が好きだ、恋人にしたいとは思っても、もしあれがかみさんだったら大変だぞ、という感じがある(笑)。柏木由紀の場合は、もちろん恋人にしたいけど、奥さんだったとしても、本当によくしてくれるだろう、きっと楽しいだろうなと思える。そんな圧倒的な支持があります。

田原:篠田麻里子さんは最年長の「姉御キャラ」ですね。総選挙で5位に選ばれたとき、「後輩に席を譲れと言う方もいるかもしれません。でも私は席を譲らないと上に上がれない子は、AKBで勝てないと思います。悔しい気持ちをぶつけて、潰すつもりできてください。私はいつでも待っています。そんな心強い後輩が出てきたら、私は笑顔で卒業したいと思います」と言った。これは、秋元さんの演出ではない?

秋元:いや、何も言ってないですよ。たぶん彼女のなかには、自分は1期でも2期でもない「1.5期なんだ」というちょっと微妙な自覚があると思います。1期のオーディションで、僕が落としたんですよ。

田原:最初に落とした。それが、なんで入ってきた?

秋元:オーディションに来たとき、完成されすぎてると思いました。モデルっぽいというか……。

 でも、福岡から出てきた篠田麻里子は夢をあきらめきれず、秋葉原のドン・キホーテ8階の劇場脇にあったAKBのカフェでソフトクリームを作っていた。そのうちファンがすごくついて、劇場の支配人が「秋元さん、知ってますか。カフェの子がすごい人気ですよ」と教えてくれた。おもしろいなと思って呼んで「2週間後にステージに出るか」と。2週間以内にダンスや振りをすべて覚えることができたら出す、と僕は言ったんです。劇場オープンからまだ1カ月くらいしかたっていないころでした。

田原:なぜ、おもしろいなと思った?

秋元:ある日、幕が開くと、昨日までカフェで働いていた子がメンバーと一緒に踊っている。これはAKBらしいサプライズでおもしろいと。だから秘密裏にやったんです。それで篠田は、自分はみんなと違う1.5期だと思っている。

 年齢も上だし、自分だけのスタイルを作らなければという気持ちが強く、ぶれない。本当に姉御肌のしっかりした子で動揺することがない。だから「私なんかが長くいられないような、下の子たちがどんどん追い上げてくるAKB48にしなきゃいけない」と思っているんでしょう。

(つづく)

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