さらに研究チームは、契約したIT企業の担当者と話をする中で、こんなアドバイスも受けた。中国の検閲ソフトウェア業界では、政府を喜ばせるような検閲をするには、5万人の契約ユーザーに対して、2〜3人の検閲担当者を雇う必要があるというのが定説だという。だから研究チームにもそのくらいの人を雇っておいたほうがいい、と。
ちなみに、この情報から推測すると、中国国内でネットをチェックしながら手動で情報を削除している検閲工作員の数は7万人ほどになる。これは政府が検閲のために動員している公式の「ネットポリス」を含まない「自発的」な検閲担当者の数だ。
研究チームはまた、多くの中国人を雇い、中国国内のソーシャルメディアサイトでいろいろな情報をアップしてもらった。するとそれぞれのサイトの自動検閲システムで4割近いポストが検閲システムに引っかかりアップできなかった。
ただこの実験から分かったのは、中央政府がガイドラインを作り、こと細かに検閲の術を押し付けているのではないということだ。もとをたどれば政府の厳しい規制や検閲があり、「ネットポリス」がいることも間違いないが、今となっては業界の自己検閲にも近い状況が広がっているといえる。それも政府の思惑通りだったとしたら大したものだが、それはないだろう。
もちろんこうした実態を明らかにしたところで、中国政府の方針が変わるわけではない。だがそんなことを考えている間にも、中国では政府や一般企業を巻き込んだ巨大な「検閲システム」が、国内中で情報をはじいたり、削除したりしている。中国のネット文化は、検閲が支えているのかもしれない。
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