CIAも頼みにする今シリコンバレーで最もアツいIT企業伊吹太歩の時事日想(2/2 ページ)

» 2013年10月17日 07時30分 公開
[伊吹太歩,Business Media 誠]
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リアルでもサイバーでも犯人の居場所を突き止めていく

 例えば、米関税当局の職員を殺害したメキシコの麻薬カルテルのメンバーや、ダライ・ラマのPCにスパイウェアを埋め込んだハッカーの居場所を突き止めるのに一役買った。さらにはネットでナイジェリアと米国を経由して乗っ取った銀行口座からカネを盗み出した「バーチャル銀行強盗」の居場所も突き止めた。

 また、アフガニスタンの爆弾製造者の居場所もSNSなどの情報を分析して突き止めたり、現場で爆弾の仕掛け場所を特定して米海兵隊に処理させたりということもあるという。一方で、製薬会社の薬物データなどの解析にも役立っている。

 さらにパランティアは中国などのサイバー攻撃をモニターするソフトウェアも提供する。要するに、米国の安全保障や経済活動に関わる捜査や監視に重要な役割を果たしている。

CIAが2億円を投入して創業を支えている

CIA CIA

 パランティアの導入コストは100万ドル(約1億円)。一般人にとってはとんでもない額だが、彼らの提供するテクノロジーの対価としては法外な金額ではない。むしろ他社のサービスに比べて質が高く、コストは安く済むとの評判だ。

 フォーブス誌は、2013年度のパランティアの収益は4億5000万ドル(約450億円)に達すると試算している。2012年度は3億ドルに満たなかったのだが、注目と需要が高まっていることの証左だろう。さらに近々、10億ドル規模の長期的な契約が行われる予定であるとの話が出ている。

 そもそもCIAから2度、計200万ドル(約2億円)の資金提供と技術協力を受けて立ち上がったパランティア。そこにロシアの組織犯罪集団対策で培ったPayPalの技術などが加わり、監視活動などに特化したソフトウェアが生まれた。最初の3年間はCIAが唯一の顧客だった。

 ちなみにCIAのベンチャー支援により立ち上がったスタートアップは、パランティア以外にもいくつもある。特に911米同時多発テロ以降にそうした支援は増えたのだが、技術進歩に投資をすることが結果的に国家の安全保障に生かせるという考え方はいかにも米国らしいではないか。

同社幹部には24時間の護衛が付いている

 前途洋洋にみえるパランティアだが、リスクを負っている。国際テロ組織アルカイダの元最高指導者ウサマ・ビンラディンの居場所を突き止めるのにもパランティアが一役買ったとの噂があり、同社の幹部は過激派や陰謀論者などから殺人予告を受けてきた。彼らには今も24時間態勢でボディガードが付いている。

 また、メディアに叩かれたこともある。民間銀行からウィキリークスによる情報漏えい対策を頼まれたパランティアは、ウィキリークスの資金提供者を特定してサイバー攻撃を仕掛けたらどうかという提案をした。その提案がメディアに暴露されて派手に叩かれたのだ。

 諜報活動のお抱え企業だったパランティアは、今ではシリコンバレーで最も注目される屈指のIT企業に上り詰めた。今後、米国のみならず、パランティアの名前を世界のあちこちで見るようになる日はそう遠くないのかもしれない。

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