本連載は、三井智映子著、書籍『最強アナリスト軍団に学ぶ ゼロからはじめる株式投資入門』( 講談社)から一部抜粋、編集しています。
「株価ってどうやって決まるの?」「株式相場の決まりごとって?」「何を買うべきか、どうやって狙うべきか」株の上がり下がりの基礎の基礎から微妙な判断のテクニックまでを網羅。
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現物取引とは、求めるモノと同価値の通貨を交換して受け渡しを行う取引のことです。みなさんがふだん買い物をするときは現物取引なわけです。自由経済社会においてはモノの価値は常に変動しているので、ときと場合によって、同じモノでも価格が変わってしまいます。つまり、自由経済社会で生活を営むということは、常に価格変動リスクにさらされているということなのです。
先物取引とは「将来の一定時期に現物の受け渡しをすることを約定する売買取引」で、価格が変動する商品について、未来の売買を決まった価格で取り引きすることを保証するものです。決済の期日の前に転売や買い戻しがある程度自由に行えることから、その期日までに買ったものを売る、あるいは売ったものを買い戻す反対売買を行い、差金を授受することによって決済することもできる差金決済が、先物取引では主流になっています。
この先物取引は、手元にモノがなくても取引に参加できることから、よりさまざまな要素が価格に反映し、公正な価格形成に結びつくと考えられています。ちなみに先物価格はあらかじめ決められた期日、すなわち満期を迎えれば、現物価格とほぼ同じ水準になります。当然といえば当然ですね。
また、よく耳にする「先物主導」というのは、株価変動によるリスクを回避するために将来の取引価格を保証する「先物」が引っ張っているということですが、この先物は日経平均株価を反映しています。ですから、海外の投資家が日経平均株価を上げたいときは先物を買うのです。
将来の価格の変動が企業や個人の投資活動に及ぼすリスクを抑えて利益をきちんとだすことを目的としたのが、商品先物市場です。この市場動向を押さえておくことが、株式相場の動きを推し量るうえでは大いに役立ちます。対象になる商品は第一次産品、要は原材料になるものがほとんどです。
その商品としては、まず原油があります。原油はニューヨークのナイメックス(New York Mercantile Exchange=ニューヨークマーカンタイル取引所)などで取り引きされています。相場が上昇する要因で一番大きいのは経済成長による需要増です。あとは中東情勢など、産油地域の地政学的なリスクからの供給不安や、産油国の減産などです。また、米国国内ではテキサス州あたりに多い製油地域をハリケーンが襲ったりした場合の供給不安といった、燃料そのものに関わる要因があります。さらに金融緩和による投資活性化や、ドル安によって外貨で買いやすくなるなどの要因があります。
次に金(きん)ですね。指標はニューヨークのコメックス(Commodity Exchange=ナイメックスの一部門)による金先物価格です。
金の相場が上昇するパターンとしては、景気減速、インフレ、金融不安などがあげられます。要は市場に対する不安が高まると、安全資産として金が人気になるわけです。ユーロ不安で値上がりしたり、日本でも純金積立をしている人は結構いるはず。年金を運用する年金基金も金に投資していますね。あとは原油同様、金融緩和やドル安局面でも上がります。余談ですが金はインドと中国でかなり消費されていて、インドで結婚式やヒンズー教のフェスティバルが増えると需要も増えるのです。
さらに銀。この指標もコメックスが算出し、相場は金に追随しやすいのが特徴です。また、プラチナの指標は原油と同じナイメックスで、相場は金銀に追随する傾向があります。プラチナ相場の特徴は、自動車づくりに使用されるため、自動車産業の相場と関連があることです。
さて、穀物の指標とされるのは米国・シカゴのCBOT(シカゴ商品取引所)の先物価格です。経済成長すると需要増になり、乾燥や高温といった天候不良が起こると供給減で相場が上昇します。
穀物といえば、まずはトウモロコシ。生産国も消費国も1位は米国です。次に小麦。こちらは生産も消費も1位はEUなのですが、すぐ下に中国がいます。ちなみに輸入世界一はエジプトなのです。最後に大豆は、生産は圧倒的に米国が強いです。そして南米。消費国は圧倒的に中国です。
日経平均株価は指数のため値幅制限はありませんが、先物は相場の急変動から投資家を守るため、先物価格に値幅制限が設けられています。先物取引において先物価格が一定以上の変動を起こした場合に、相場の安定化のために発動する取引の一時中断や値幅制限などの措置のことをサーキットブレーカーといいます。
ストップ高という言葉をよく聞くかと思いますが、これは株価が値幅制限いっぱいまで上昇したことを表します。一方、ストップ安とは株価が値幅制限いっぱいまで下落したことを表します。このストップ高、ストップ安はS高、S安と略されることもあります。連日ストップ高またはストップ安が続く場合は、値幅制限が適正ではないということなので、その制限値自体が変わることもあります。
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