この記事を読むと、「懲りないな〜」という印象を持ちます。私は1992〜1993年と1996〜1998年頃にスペインに住んでいました。スペインは1990〜2000年代に大きな経済成長を遂げましたが、その経済発展を引っ張ったのは不動産・建設業でした。
EU加盟後にスペインの不動産・建設市場に一気に外資が入ってきた結果、絶望的な経済状況から「奇跡」とも言われるほどの回復を遂げました。
しかし、2008年の世界金融危機で本格的にバブルは崩壊。国債の信認も失われ、ギリシャ、ポルトガルとともに国家破綻ギリギリのところまで追い込まれたのは記憶に新しいところです。実需を無視した開発計画や身の丈を超えた住宅購入が相次いだ結果、南欧諸国には建設途中の建物や手つかずの新築ビルといった「バブルの遺産」が今でも数多く残っています。
これといった強い産業を自国に持たないスペインは、観光や不動産投資など常に外資の流入によって経済を成り立たせてきました。そして今回も、外国資本に不動産投資を誘うような施策で活性化を図っています。バブルにならないといいのですが……。
さて、そういう南欧の不動産を買っている「外資」とは誰なんでしょう? 新聞報道によると、ポルトガルの不動産投資制度を利用した外国人の国籍は中国が最も多く、ロシア、ブラジル、アンゴラと続くそうです。近年経済発展をとげた新興国マネー、特にチャイナマネーが多いようです。
確かに上海の賃貸投資利回りはすでに2%程度であり、投資に見合わない水準になっています。そんな中国の人にとって、値上がりが期待できる不動産は魅力的なはずです。さらに、長期滞在ビザの発給は欧州でビジネスをすることが多い中国の富裕層にとっては、ほぼ欧州全域で自由な移動が可能になるという利点もあります。
今のところ、欧州のほとんどの国が加盟しているシェンゲン協定の対象地域に中国人が入る場合は、都度ビザを申請しなければなりません。しかし、例えばポルトガルに家を買って居住ビザを得た中国人は、シェンゲン協定加盟国のどこにでも自由に行けるようになります。「不動産投資+長期滞在ビザの発給」というセットは、不動産に投資マネーを集めて市況を活性化させるにはいいアイデアと言えます。
ただ、投資家にとっては気を付けないといけないこともあります。ポルトガルでは、期間5年のうち最初の1年は最低7日間、その後は2年ごとに14日間ずつの現地滞在が義務付けられています。違反した場合には重い税金が課せられる可能性があります。
つまり単なる値上がり期待とビザ受給のためだけに不動産を買ってはダメということです。
中国人など遠い外国にいる人が、どのようにその不動産を保守、管理するか。本当に1年のうち何日か現地で過ごす気があるか。投資家にも、じっくり考えることを促しているわけです。
南欧の不動産に中国など新興国の富裕層の資金が入ってくれば、不動産市場は再び活性化するでしょうし、建設雇用などの効果も期待できます。買う側にとっても魅力的な不動産を保有できるとともに長期滞在のビザまで受けることができます。売る方、買う方、双方にとってよい仕組みです。
ただ当初の狙いから離れて過熱してしまうのが不動産バブルです。単なる値上がり期待で売買を繰り返す不動産バブルはいつか必ず破たんします。自分で使わないものを投機目的で買ってもろくなことにならないというのが、私たちがこれまでに高い授業料を払って得た教訓ですね。また南欧諸国が同じ轍(てつ)を踏まないことを願うばかりです。(川瀬太志)
※この記事は、誠ブログの『南欧にチャイナマネーが入って不動産バブル再燃?』〜ビザ付不動産投資で経済再建はできるか?〜より転載、編集しています。
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