娘と父のマジトーク(その6)「自分の国の言葉が下手なのに、外国語が上手くなるって、ありえなくない?」:父と娘の週末トーク(3/3 ページ)
英語が好きな娘。もしかして留学経験がある俺(父)の影響? と、あわい期待をしながら、「英語と留学」について話し合ってみました。
“デオキシリボ核酸”を英語で何と言う?
娘: 英語そのものは好きなんだけど、留学ってまだ正直なとこ、現実味がない……。
父: 留学する、しないなんて、中学1年生には現実味がないよね。現実性はいったん置いておいて、留学(あるいは海外生活)の期待と不安って、思い当たる?
娘: 期待でいうと……、日本じゃ学べないことが学べるのが一番。景色も食べ物も全然違うんだろうね。
父: なんせ土地が広大だもんね。ただ、アメリカの食事はそんなにグルメじゃないよ。ジャンキーでウマイけど。ステーキがデカすぎて笑っちゃったり、コーンフレークだけでどんだけ種類あるんだって、毎日が驚きだよ。
娘: いろんな国の友達もできたらいいな。
父: できるよ。サオリがアメリカに行ったら、周りから珍しがられて、いじられるよ。「うわっ、サオリって髪が超黒くね? 目玉も黒くてマジヤバイわ」みたいな。
娘: ふふふ、そうなんだ。
父: 逆に不安はない?
娘: 英語で勉強するんだから、周りのスピードについていけなくて、置いてけぼりにならないかな。数学なら英語力はあまり関係なさそうだけど、理科とか社会とか歴史って、想像しただけでめっちゃ苦労しそう。
父: 塩化ナトリウムや過酸化水素水を英語で覚えつつ、同時に化学式も理解しないといけない。
娘: ゲゲ、2重で大変……。
父: “溶媒”を英語では?“沸点”を英語では?“震源”を英語では?“デオキシリボ核酸”を英語では?(笑)
娘: うわ〜、やめて〜〜。
父: 独立戦争や南北戦争だって、日本でならサラッとしか流さないことも、自国のアメリカ人は掘り下げて学ぶだろうしね。そういうのは、避けて通るわけにはいかない。
娘: …お父さん、それやったの?
父: やったよ。慣れるまでは、24時間テンパってたよ。スポーツとゴハンだけが楽しみだった。
娘: アメリカは食事が不健康だから、注意しないと太っちゃいそうだね。
父: 運動はしまくってたから太りはしなかったな。食事は、ピザ、パスタ、ハンバーガー、ラザニア、フライドチキン、マカロニチーズ、のローテーションだね。でもって、コーラが水代わり。
娘: 確実に太るわ……。でも、いろいろ聞いてても、不安よりは、期待の方が大きいかな。
父: 太る、で思い出したんだけど、病気が不安だったね。幸い、留学中の5年間は一度も病院のお世話にはならなかったんだけど、もし病気やケガで入院・手術をすることになっていたら、たとえ英語がペラペラでも、ものすごく心細くなるに違いなかったな。健康でいられて、本当によかった。
留学で得られるもの、失うもの
父: 日本の大学に行くのと、留学するのと比べて、留学で得られることってなんだろう?
娘: いろんな経験ができるね。日本ではできない勉強ができるっていうのもあるし、自立しそう。
父: そう思う?
娘: 自分から行動することで、積極性が身につくとか、人から指示されなくても自分で考えて動けるとか。外国で1人で生活するのって、そういうのが鍛えられるって思うね。
父: 基本、アメリカは個人の自由を尊重してくれるから、そういう意味でも自立せざるを得ないね。勉強する、しないも自由。誰と付き合うかも自由。健康管理も自由。どこに誰と住むかも自由。
娘: おおー、自由だらけなんだ。
父: サオリの生活面を注意したり、悪いことから引き止めたりしてくれる人はいないから、勝手に生きられて楽しいよ。そのかわり、結果は自分が責任を負うことになる。そのことで誰も責めることはできない怖さがあるね。
娘: ……(真顔で聞き入る)。
父: 反対に、留学することで失うものってあるかな?
娘: 何だろう?? お父さんは、何かあった?
父: (少し考えて)帰国すると、学生時代の友人には簡単には会えないんだよね。日本の大学に行ってた人は、同級生の付き合いが社会人になってからも続けられるけど、お父さんはそういうのが全くなくて、それが残念。友人を失ったわけじゃないけど、会えない事実はあるね。サオリは思い付く? ちょっと難しい質問かな?
娘: 自立し過ぎて、周囲に変に思われることがありそう。何でも自分で考えて判断しすぎたり、自分の意見をはっきり言い過ぎたりして、日本だと浮いちゃうことがあるかもしれない。
父: おお、なるほど。
娘: 「女のくせに、生意気だ」みたいな。
父: 確かに、そういうのはあるかもね。お父さんも思い付かなかったよ。
今回は、英語つながりから海外で生活すること、海外で学ぶことに膨らませてみましたが、明確にイメージすることが難しかったとのこと。いま取り組んでいること(英語)が、未来にどうつながっていくかは未知の領域のようです。
どう活用するかはともかく、勉強そのものが楽しい、もっとできるようになりたいという意欲さえあれば、今はそれでいいのかなと思います。一見、関連がなさそうに見える学習が、数年後、点と点となって結び付いて線になってくれれば、具体的な目標になてくれるのでしょう。そういう意味では、今回の最大の収穫は、「英語上達のためには、母国語もおろそかにしてはいけない」という意識を植え付けられたことでした。
次回は、「読書」について話し合ってみます。
著者紹介:中山順司(なかやま・じゅんじ)
1989年、高校卒業と同時に、極寒のアイオワ州の全寮制高校に入学。唯一の日本人として七転八倒で英語を学び、1990年にCovenant College(米・Georgia州)入学。エチオピア、インド、ウガンダ、ガーナ、南アフリカ、ペルー、韓国の留学生らと共同生活を送りつつ、心理学、生物学、社会学を専攻。1994年に卒業。
白い犬で有名な某携帯電話キャリアに新卒入社し、マーケティングと営業に携わる。2000年にネット業界に転身。旅の窓口(現楽天トラベル)で観光旅行コンテンツビジネスを立ち上げ、その後始めた個人ブログがキッカケで、ブログソフトウェアベンダーのシックス・アパートに入社。マーケティング、営業を経て、現在はコミュニティ・マネージャーを務める。三度の飯より、サッカーと自転車が好き。
■誠での過去記事
http://bizmakoto.jp/bizid/bizblog_index.html
■Six Apart ブログも書いてます
http://blog.sixapart.jp/nakayama-1/
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