月額課金でもユーザーは残る――iモード向け「ドコモマーケット」の狙いと成果:ノウハウをスマホにも移植する(2/2 ページ)
公式サイトを経由せずに有料コンテンツを購入できる「ドコモマーケット」がiモード向けに提供されている。同マーケットではどんな開発者がアプリを作り、どんなユーザーが購入しているのか。そしてARPUへの影響は――。ドコモの渡辺英樹氏に話を聞いた。
月額課金のユーザーは9割が残ってくれる
―― コンテンツの価格はどうでしょう。音楽は1曲420円など割高感があります。
渡辺氏 ユーザーのマインドがPC寄りかケータイ寄りかによって、とらえ方が違います。PC寄りなら高いと感じ、ケータイ寄りなら「こんなものか」と納得いただく方が多いのではと思います。音楽は基本的に、レコチョクで配信されているものと同じ楽曲をそろえています。
ゲームも公式サイトで配信されているものと同じですが、売り方が違います。公式サイトでは「取り放題で300円」といった価格設定をすることが多いですが、ドコモマーケットではアプリごとに価格を変えていますし、月額か個別(売り切り)かを決めることもできます。
―― スマートフォンでは個別課金が一般的ですが、iモードではまだ月額課金が受け入れられているようですね。
渡辺氏 やはり売り切りだけでは厳しいですね。月額課金の方がユーザーの残存率が9割と高く、売上が伸びている大きな要因になります。同じアプリでも、月額の単品アプリの方が公式サイトを上回っているという例もあります。今のところユーザーの方にはご理解いただけていると思いますし、ヘビーユーザーの方は公式サイトを使っていただければと思います。現在のところ、月額課金のアプリは3分の1ほどを占めています。
ちなみに、個人の開発者で月額課金のアプリを売っているケースもあります。月額80円の「コツコツ家計簿」は人気があり、他の(CPがリリースした)家計簿アプリよりも売れています。
―― 月額課金はかなり細かく設定できるんですね。設定できる価格帯について教えてください。
渡辺氏 月額課金は10円~525円で、個別課金は最大5250円を設定できます。といってもまだ5000円ほどの高額なアプリはなく、日本史全集や辞書系など、高くても1500円くらいですね。
―― ドコモマーケットでアプリの導線が増えることで、従来のiモードサイトからのダウンロードが減るといった影響が心配されます。
渡辺氏 最初はそういう懸念をする方もいましたが、実際のところ(マイナスの)影響は出ていません。むしろ公式サイトからのARPUも伸びていて、新規で利用する方も多いほどです。ドコモマーケットで体験版を用意して、よりリッチなコンテンツは公式サイトへという誘導もかけているので、いい循環が生まれています。(ここ最近はスマートフォンが話題を独占する中)、フィーチャーフォンにとっては久々に明るい話ではないでしょうか。
iモード事業のノウハウをスマートフォンにも生かす
―― ドコモ全体として、iモードコンテンツをスマートフォンへ移行する取り組みが進んでいます。ドコモマーケットでも、ケータイで購入したアプリをスマートフォンでも使えるようになるといいですね。もちろん、アプリをスマートフォンに対応させる必要がありますが……。
渡辺氏 これはアプリ開発者からもよく言われています。アプリの仕組みが違うので難しいですが、開発者を支援するための環境を用意しています。その1つがiアプリをAndroidアプリに変換するための支援ツールです。厳密には変換ではありませんが、iモード向けとAndroid向けのソースコードを取得できます。現在はテスト的に導入していますが、iアプリとAndroid両方に対応したアプリを作った方もいます。ただ、ケータイのテンキーとスマートフォンのタッチパネルでUI(ユーザーインタフェース)が違うので、難しい面もあります。
また、開発者とドコモのコミュニティとして活用できるよう、iモードストア事務局のTwitter公式アカウント(@imodeSTORE)も運用しています。ここで開発者から要望をいただいたり、リツイートしていただいたりしています。開発者だけでなく、一般ユーザーに向けた情報発信も行い、一緒にマーケットを盛り上げていければと思います。
―― 音楽や電子書籍コンテンツはスマートフォンにも移行できるのでしょうか。
渡辺氏 音楽コンテンツは、今後はあるかもしれませんが、まだこれからですね。電子書籍については、XMDFファイルならスマートフォンでも閲覧はできますが、マンガはブックサーフィンで閲覧するので、スマートフォンとは互換性はありません。
―― 機種変更したケータイに移すなど、ケータイ間のコンテンツ移行はどうでしょうか。
渡辺氏 著作権者の意向で、ケータイ同士でもコンテンツを引き継げない場合があります。microSDに移せないものもありますが、ドコモショップで移せる場合もあります。
―― ユーザーにとっては、自分の機種でアプリを利用できるかも気になるところです。
渡辺氏 ドコモはプラットフォームの提供に徹しているので、ダウンロードは個人の責任でお願いしています。ただダウンロード前には、開発者がどの実機で検証しているかが分かるように明記しています。
―― 開発者が現行モデルでアプリを検証できるような環境は提供しているのでしょうか。
渡辺氏 動作確認できる環境を常に開放しているわけではありませんが、(2010年)12月のドコモマーケット開始後に、2日間、動作確認できる環境を提供したことはあります。新機種が出るタイミングで今後も定期的にやっていきたいですね。また、アプリを開発する上で、どの機種でどれだけダウンロードされているかを知りたいという声も開発者から挙がっているので、PCサイトのドコモマーケットで、機種別のダウンロードランキングを公開しています。少し前の906iシリーズでのダウンロードが多いなど、意外な結果も出ています。
―― ドコモマーケットへのアクセスを促進するための取り組みは行っていますか?
渡辺氏 メッセージRでメールマガジンを約250万人に配信し、値引きキャンペーンなどを実施しています。今はそこまではできていませんが、メルマガはユーザーごとに内容を変えられます。iチャネルにドコモマーケットチャネルがありますが、そこからの流入はかなり多いですね。あとはTwitterやPCサイトも効果的に活用しています。
―― PCサイトではアプリの詳細は見られますが、購入はできません。PCとケータイを接続して同期させるような連携機能なども検討しているのでしょうか。
渡辺氏 PC連携の要望はそれほど多くないので、今のところ予定はありません。PCではアプリのダウンロード先にアクセスできるQRコードを表示し、ドコモIDでログインをすれば、レビューを書き込むこともできます。PCで新しい媒介を提供するというよりは、ケータイの使いにくいところを補完できればと思います。今後はFacebookの取り組みも行っていきたいですね。
―― 最後に、ドコモマーケットの課題と展望について教えてください。
渡辺氏 iモードコンテンツをさらに磨いて伸ばし、お客さんに価値を提供していきたいですね。弊社では客単価、新規や既存の顧客ロイヤリティ、商材の在庫率など細かいオペレーションを数値化しています。こうしたiモード事業で培ってきたノウハウを、準備が整った段階でスマートフォンにも入れてきます。
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