MacとiPadで積極攻勢――新時代の幕を開けたApple:Apple Special Eventリポート(2/3 ページ)
10月23日(現地時間)に米国で開催されたAppleのSpecial Eventで、先に発売されたiPhoneやiPod、そしてMacBook Airを除くほぼすべての製品ラインアップが刷新された。ポストPC時代を推進し、IT業界のトレンドを牽引するAppleは、どこまで飛躍するのかを考える。
PC市場で強烈な「攻めの姿勢」へ
iPhone/iPadなどiOSでの成功をバネに、PC市場をMacで攻める——。これが近年のAppleの戦略であり、それは確実に効果を上げてきた。Macの年間成長率は15%とPCの平均を上回っており、この傾向は6年連続で続いている。また顧客満足度で見ても、Appleは他のPCメーカーを抜いてNo.1になっている。
この実績をもとに、今回AppleはPC市場に対してさらに強烈な攻めの姿勢をとった。
ティム・クック氏に代わって壇上に上がったApple ワールドワイドマーケティング担当シニアバイスプレジデントのフィリップ・シラー氏は、登壇してすぐに先に発売された15インチ Retinaディスプレイ搭載MacBook Proがとても好評であることを告げ、新たに13インチMacBook Pro Retinaディスプレイモデルを投入すると発表した。
同機の基本コンセプトは15インチ版とほぼ同様で、光学ドライブやハードディスクを排した薄型アルミニウムユニボディを採用。本体サイズは314(幅)×219(奥行き)×19(高さ)ミリ、重量は約1.62キロになる。MacBook Airの13インチモデル(1.35キロ)と比べると若干重いが、従来型のMacBook Pro 13インチモデルより440グラム軽く、5.1ミリ薄くなっている。特長であるディスプレイは、2560×1600ドット表示(409万6000ドット/227ppi)。CPUにデュアルコアのIvy Bridge世代Core iを採用し、2.5GHzのCore i5もしくは2.9GHzのCore i7を選べる。メモリは8Gバイトのみで、フラッシュストレージのラインアップは128Gバイト/256Gバイト/512Gバイト/768Gバイトになっている。むろん、OS X Mountain Lionの新機能にはすべて対応しており、名実ともに“新世代のMacBook Pro”になっている。
シラー氏は13インチ MacBook Pro Retinaディスプレイモデルを紹介しながら、Appleがこの「Retina化」においてOS Xと一体となったユーザー体験向上を推進していることをアピール。すでにOSだけでなく、多くのOS XアプリがRetinaディスプレイへの最適化を済ませていると話した。
Retina対応のiPhoneやiPad、15インチのMacBook Proを使っている人ならば分かると思うが、ディスプレイの高解像度化はいくらハードウェアのデバイス性能だけ引き上げても意味がない。OSや各種アプリの最適化が歩調を合わせて進むことが重要だ。Appleはこの“ハードウェアとソフトウェア(OS+アプリ)の協調”を特に重視しており、それが同社のRetina化を、ユーザー体験の向上に直結するものにしている。そして、それこそがAndroidのスマートフォン/タブレットや、Windows PCがいくら高解像度なディスプレイを搭載しても、総合力・ユーザー体験のレベルでApple製品に及ばない理由となっているのだ。
続けて発表されたのは、Mac miniのモデルチェンジだ。Mac miniはMacファミリーの中で際立った存在感はないものの、ベーシックグレードを担う重要なモデル。今回のモデルチェンジでは、CPUがIvy Bridge世代になったほか、USB 3.0が採用されるなど基本性能が強化された。
そして、シラー氏が神妙な面持ちで「Appleにとって重要なモデル」と話し、発表したのが、iMacだ。プレゼンテーションのスクリーン上ではボンダイブルーの初代iMacからの歴史が振り返られ、iMacが全米のデスクトップPCで1位であると告げられ、正面から新型iMacがぐるりと表示されてお披露目された。そして会場には、どよめきが走り、続いて割れんばかりの拍手が巻き起こった。
新しいiMacは、最薄部でわずか5ミリというスリムボディとなり、容積が40%も小さくなった。この薄さを実現するためにMacBook Airや新世代MacBook Proと同様に光学ドライブが廃されたほか、フルラミネーション加工のディスプレイや、航空宇宙分野で用いられている摩擦攪拌接合という新たな製造技術まで導入されている。また画面の見やすさを実現するプラズマ蒸着を導入するなど、新たな技術や製造方式がフル投入されている。"デスクトップPCのデザインをよくする"ために、これほど最新かつ高度な技術を注ぎ込むのはAppleならではであり、Appleだけであろう。
もちろん、性能面でも手抜かりはない。CPUはIvy Bridge世代のクアッドコアCPUプロセッサーが基本となり、NVIDIAの最新GPUを搭載。液晶ディスプレイには上下/左右178度の視野角を持つIPSパネルを採用し、個々のディスプレイごとに厳密な色補正・キャリブレーションが施されている。さらに今回は、SSDの性能とHDDの大容量の"いいとこどり"をした「Fusion Drive」というドライブ技術も導入された。これはSSDとHDDのハイブリッドドライブとして1つのストレージとしてOS側からは認識される。写真や動画など大容量ファイルを大量に扱うユーザーには注目の技術と言える。
今回のMac関連の発表は、噂されていた13インチのMacBook Pro Retinaモデル追加、Mac miniとiMacのモデルチェンジという形になったわけだが、全体を通してみるとその内容がとても攻撃的であることがわかる。特にiMacのモデルチェンジは、デザイン・性能・機能のすべてにおいて申し分なく、ここにOS X Mountaim Lionの魅力が加わることで、とても魅力的な"ソフトウェアとハードウェアの融合”になっている。
周知のとおりAppleは、モバイル市場ではiPhone/iPadが大きくリードしており、追随するAndroid陣営を引き離す状況にあるが、PC市場ではWindows陣営に攻め込むポジションにある。Microsoftは今月26日に「Windows 8」を大々的にローンチするが、今回発表された一連のMacラインアップの魅力とインパクトは、それらWindows 8搭載PCを上まわるものだ。発表のタイミングも含めて、AppleはまさにPC市場に強烈な攻勢をかけたのである。
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