MacとiPadで積極攻勢――新時代の幕を開けたApple:Apple Special Eventリポート(3/3 ページ)
10月23日(現地時間)に米国で開催されたAppleのSpecial Eventで、先に発売されたiPhoneやiPod、そしてMacBook Airを除くほぼすべての製品ラインアップが刷新された。ポストPC時代を推進し、IT業界のトレンドを牽引するAppleは、どこまで飛躍するのかを考える。
「iPad mini」で、タブレット市場に王手
そして、「iPad」である。
一度降壇したシラー氏に代わり、再び登壇したクック氏は、iPadの販売台数が累計1億台に達し、今やどのPCよりも出荷台数の多いものになっていることをアピール。さらにタブレット端末からのWebトラフィックの91%がiPadからのものであり、他のタブレット端末はいったいどこにいってしまったのか、と会場に問いかけた。さらにiPadは教育機関や企業などでの導入も順調に進んでおり、人々のライフスタイルだけでなく、ワークスタイルや社会の在り方までも変えうるものになっていることを示した。
そのような中で、iPadの新製品が2つ発表された。
1つは第4世代のiPad。実は今回のAppleの発表会前から、筆者を含むメディア関係者の間では「Lightningコネクターへの変更のためにiPadのマイナーチェンジはあるのでは?」という声は上がっていた。Appleはアプリだけでなく周辺機器のエコシステムも大切にする会社であり、Lightningへの移行を速やかに行うことが、周辺機器メーカーにとってプラスに働くからだ。
しかしふたを開けてみれば、Appleの動きはメディア関係者の予想よりも速く、今年3月に発売された「新しいiPad(第3世代)」は一気に「iPad Retinaディスプレイモデル(第4世代)」へとモデルチェンジした。
第4世代iPadの基本デザインは先代を踏襲するが、プロセッサーを従来よりも最大2倍高速な「A6X」に換装。DockコネクターからLightningコネクターにインタフェースが変わり、通信周りも5GHz帯の802.11nやLTEに対応し高速化された。LTEに関しては、日本ではこれまでのiPad取り扱いキャリアであったソフトバンクモバイルに加えて、KDDIも新たに取り扱う。
そして、第4世代iPadに加えて新たに投入されるのが、「iPad mini」だ。
iPad miniは7.9インチのディスプレイを搭載し、サイズを134.7(幅)×200(高さ)×7.2(厚さ)まで小型化。重量はWi-Fi版 308グラム、Wi-Fi+Cellular版は312グラムとなり、気軽に持ち運べるものになっている。そのファーストインプレッションは筆者のハンズオン記事を参照してもらうと分かるが、“従来のiPadを凝縮し、モバイル端末としての新たなユーザー体験や価値を生みだした”ところが最大の特長である。
ディスプレイは1024×768ドット(XGA)であり、Retinaディスプレイではない。しかし、ディスプレイサイズの小型化によって体感的な画素密度は高く、Retina化される前のiPad 2の時よりも表示クオリティは高く感じる。CPUはA5で、5メガピクセルのiSightカメラ、5GHz帯の802.11nまで対応した高速Wi-Fi、そしてWi-Fi+CellularモデルはLTE対応になっている。バッテリー持続時間は最大10時間だ。
スペック以外の部分で、iPad miniの注目は「アプリの互換性」だろう。iPad miniのアスペクト比はこれまでのiPadと同じで、解像度はiPad 2と同じ。そのため、これまで作られた27万5000以上のiPadアプリは表示が崩れることなく使えるのだ。Androidタブレットでは、10インチクラスと7インチクラスのどちらも、"ディスプレイサイズに最適化され、美しくデザインされたアプリが少ない”ことが魅力を損なう原因になっている。しかし、iPadではディスプレイサイズが異なってもアスペクト比を維持することで、アプリ開発者の負担を軽減しつつ、iPad(タブレット)に最適化されたアプリの豊富さを損なわないように腐心されているのだ。
iPad miniはiPadのエコシステムをモバイルの世界に広げることに成功しており、その持ち運びのしやすさ・デザインの美しさも相まって、一般ユーザー層のタブレット端末への関心を喚起するものになるだろう。タブレット市場ではもともとiPadが有利な状況にあったが、iPad miniの投入により、それは圧倒的優位になりそうだ。まさにタブレット市場に王手をかけるのがiPad miniになるだろう。
2012年はAppleにとって「新時代の幕開け」
「2012年は象徴的な年である」
基調講演の最後に、クック氏がそう今年一年を振り返った。2012年春に第3世代のiPadを発売し、MacBook ProのRetina化、iOSとOS Xの新バージョン投入、iPhone 5の発売、そして今回のiMacおよびMac miniのフルモデルチェンジに、第4世代iPadおよびiPad miniの投入。2012年のAppleは、多くの新製品を発表・発売し、市場全体の技術革新を一気にリードした。その中には、一般の大企業であればリスクを恐れて尻込みするようなチャレンジも少なからず存在した。しかしAppleはむしろ積極的に変革を促し、自らの強みを最大限に生かしながら、攻勢と挑戦に打って出た。その締めくくりとも言えるのが、今回の一連の新製品発表であった。
ティム・クック新体制によるAppleが、新時代の幕を力強く開けた年。そのような意味で、2012年は確かにAppleにとって重要かつ象徴的な一年になったと言える。
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