iPhone導入でドコモが強調するもの/GALAXY Note 3の新しさ/イー・アクセス LTE実証実験の狙い:石野純也のMobile Eye(9月17日~27日)(1/3 ページ)
9月20日に「iPhone 5s」と「iPhone 5c」が発売されたこともあり、この2週間も話題の中心はiPhoneだった。今回はiPhoneを初めて導入するドコモの動きと、Samsungが海外で発売した「GALAXY Note 3」、イー・アクセスが1.7GHz帯で展開しているLTE実証実験について取り上げる。
「iPhone 5s」「iPhone 5c」の販売が開始され、第1ラウンドの結果も見え始めてきた9月16日から28日の2週間。対するSamsung電子は、グローバルで、フラッグシップモデルの「GALAXY Note 3」や、そのコンパニオンデバイスの「GALAXY Gear」を発売した。GALAXY Note 3は日本でも10月に発売予定。これとほぼ同時期に、3キャリアの冬春商戦もスタートするとみられる。このほか、9月18日にはイー・アクセスが、1.7GHz帯(バンド3)で20MHz幅を利用した通信実験を公開した。こうした結果を踏まえ、同社は1.7GHz帯、5MHz幅分の追加獲得を目指す。今回の連載ではAppleとSamsung、両社の動きに加え、イー・アクセスが目指す今後の展開もまとめていく。
iPhone 5s/5cが発売、各社がネットワークやサービスをアピール
- →ドコモ、iPhone 5s/5cを発売――加藤社長「熱気と緊張で足が震えている」
- →田中社長、「同じiPhone 5sだから選ぶ理由はダントツのネットワーク」
- →「4日間並びました」――ソフトバンクが銀座でiPhone 5s/5c発売セレモニー
9月20日の8時に、iPhone 5sとiPhone 5cの2機種が発売された。販売開始に伴いショップには長い行列ができるのはもはや恒例行事だが、2013年はドコモが新たに販売するのが例年との大きな違いだ。iPhoneを取り扱うドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社がイベントを開催。ドコモは加藤薫社長が、KDDIは田中孝司社長が、ソフトバンクは宮内謙副社長が現れ、販売開始を盛大にアピールした。
イベントは同時刻に開催されたため、残念ながら筆者はドコモしか取材できなかった。一方で、各社ともそれぞれのネットワークやサービス、料金に加え、iPhoneに関するノウハウをアピールしたことは確認している。本連載で触れたように、同じiPhoneという機種を取り扱うようになり、今まで以上にネットワークやサービスに焦点が当たりやすくなってきた。KDDIが800MHz帯のLTEを、ソフトバンクが2GHz帯の基地局数やイー・モバイルのLTEを利用する「ダブルLTE」を訴求しているのには、このような理由がある。どちらも、すでに運用が始まっているネットワークだが、iPhoneの発売に合わせてあらためて自社の強みを打ち出しているというわけだ。
これに対して、ドコモが強調するのが「6セクタ化」や、基地局の細かなチューニングだ。加藤氏は「免許数が言われることが多いが、単純な合計数ではエリアの充実度は図れない」と他社に反論。「2GHz帯は6つの顔を持つ。6方向に分ければ、6倍の容量を持つと言える。特に都心部においては、1つの場所、1つの周波数でたくさんのお客様を収容できる工夫をしている」と、6セクタ化のメリットを語った。加藤氏によると、ドコモでは4セクタ化以上の基地局が全体の25%以上。これに対して他社の主流は、3セクタだ。
1.7GHz帯(バンド3)でのサービスも開始。20MHz幅を利用しているため、スペック上は下り最大150Mbpsだが、iPhoneは「Category 3」の端末であるため、速度は下り最大100Mbpsに留まる
また、細かなパラメーターの調整も、LTEの仕様策定に貢献したドコモの得意とするところ。「伝送に必要な信号やプロトコルをどのように扱ったらいいのか、実効的なスループットを上げる仕組みもある。そんなものを縦横に使いながら、容量やスピードを上げている」(加藤氏)という。これらの加えて、ドコモはすでに運用している2GHz帯、1.5GHz帯、800MHz帯に加え、10月からは1.7GHz帯もLTEに利用していく(ただしiPhoneは1.5GHz帯に非対応)。1.7GHz帯の基地局は、20MHz幅を利用するため、LTEの「Category 4」に対応した端末なら下り最大150Mbpsまで出すことが可能だ。加藤氏も「iPhoneでは、受信最大100Mbpsが出る」と自信をのぞかせた。1.7GHz帯は東名阪に整備される周波数帯で、2013年度末までに500局を設置する構えだ。
コンテンツについては、「dビデオ」や「dアニメ」といった人気の高いサービスをiPhoneに対応させていく。Andoridだけでそれぞれ460万、100万ユーザーを獲得して一躍ドコモの稼ぎ頭になっているだけに、iPhone対応でここに弾みをつけていく方針だ。ただ、やはりドコモがiPhone導入を決断したのは、ごく最近のことだったようだ。その結果、一部サービスの対応が間に合っていないというのは、前回の連載でも指摘したとおり。加藤氏も会見で「9月30日までspモードメールが使えないことは、この場を借りてお詫びしたい」とユーザーに謝罪した。また、iPhone独自サービスの「ビジュアルボイスメール」などにも対応せず、MMSも利用できない。
こうした初動の遅れや、他社の猛烈なネットワークの追い上げに押されてか、各種販売ランキングを見ると、初週はソフトバンクやKDDIにiPhoneの販売数が及んでいないというデータも出ている。ただ、これらのデータはあくまで家電量販店の一部から集計したものという点には注意したおきたい。特にドコモは、ドコモショップの販売比率が高いと言われている。また、ドコモは、2社のようにラインアップをiPhoneに依存しているわけではなく、iPhoneの販売数はキャリアの実力を測る物差しでもない。
加藤氏はiPhoneが全体に占める割合に対し、「結果的には環境と物がある中で、お客様にお選びいただくことを大事にしたい」と語り、人気に応じて数量は変化することを示唆した。一方でラインアップについては「25種類や30種類という時代からは、厳選している。そこから極端に動くことはないと考えている」と、iPhoneの導入による大幅な見直しはないことも明かしている。秋冬モデルをどう打ち出していくのかは「決まっていない」と言うが、ドコモは他社に比べて特にAndroidのユーザー数が高いキャリアだ。現時点で、iPhoneの販売数が少なくても不自然ではない。
今後、冬モデルの発表などを通じて、ドコモがiPhoneをラインアップ全体の中でどう位置づけていくのかが、より明確に見えてくるはずだ。他社への流出が続いてきたドコモだが、その傾向が変わるのかを判断するのは、それからでも遅くはないだろう。
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