初めて“フルスイング”したOne Sonyのスマートフォン――平井社長と田嶋氏が語る「Xperia Z1」(1/2 ページ)
9月のIFAでグローバルモデルが発表後、日本でも10月に発売された、ソニーモバイルの最新スマートフォン「Xperia Z1」。このZ1を軸に、ソニーはどんな事業展開を図っていくのか。そしてZ1に込めた想いとは? ソニーの平井社長と、ソニーモバイルの商品企画を統括する田嶋氏に話を聞いた。
「ソニー、真っ向勝負」――。そんなセンセーショナルな見出しの“号外新聞”が、Xperia Z1(SOL23)の発売日である10月23日に、日本各地で配布された。真っ向勝負の相手が誰かは想像に難くないが、ソニーの意気込みが伝わってくる内容だ。ソニーモバイルコミュニケーションズ製のスマートフォン「Xperia Z1」は、9月にドイツ・ベルリンで開催された「IFA 2013」で発表されて以来、大きな話題を集めてきた。そして日本では10月23日に「Xperia Z1 SOL23」がKDDIから、24日に「Xperia Z SO-02E」がNTTドコモから発売された。
Xperia Z1はXperia Zが正統進化したモデルだ。1/2.3型という大型のCMOSセンサー、高性能な「Gレンズ」、独自の高画質処理エンジン「BIONZ for mobile」を採用することで、ソニーのコンパクトデジタルカメラに匹敵する画質を実現した。「トリルミナスディスプレイ for mobile」や「X-Reality for mobile」といった、BRAVIAで培ってきた映像技術も惜しげもなく投入した。
IFAではサイバーショット、VAIO、BRAVIA、ヘッドマウントディスプレイなどさまざまな製品が発表されたが、プレスイベントおよび展示会場の中心はXperia Z1だった。それは、Xperia Z1こそが、ソニーが一体となって同社の技術を注ぎ込んだ“One Sony”を体現した製品にほかならないからだ。このXperia Z1を軸に、ソニーはどんな事業展開を図っていくのか。そしてZ1に込めた想いとは。IFA会期中に参加したラウンドテーブルにて、ソニーの平井一夫社長と、ソニーモバイルコミュニケーションズ UXデザイン・商品企画部門 部門長の田嶋知一氏に話を聞いた(ラウンドテーブルは、個別に実施された)。
フラッグシップモデルは6カ月で進化させる
ここ数年、ソニーは米ラスベガスで1月に開催される「CES」で、スマートフォンのフラッグシップモデルを発表してきた。2013年もCESでXperia Zを発表したが、Zの次期フラッグシップであるXperia Z1は、その約8カ月後のIFAでの発表となった。例年どおりなら、Z1は2014年のCESで発表されていたはず。結果的に商品サイクルが早まったことについて平井氏は「特に今回のIFAに合わせたわけではなく、エキサイティングな商品が出てきたのでご紹介しました」と話す。「約1年半前に社長に就任してから、『エレクトロニクスの復活に奇策はない。まずお客様に感動いただける商品を積極的に市場に出していく』と話していた。ようやく、『面白いね』と言っていただける製品を投入できるタイミングになりました」
AppleやSamsungは、年に1回、新しいフラッグシップモデルを発表しているが、田嶋氏によると、ソニーモバイルのフラッグシップモデルは「6カ月」で進化する流れにしているという。今後も2013年と同様のサイクルになると考えると、春と秋に1回ずつ新製品が登場することになる。こうした小刻みな進化を続けることで、「他社に対してワンツーパンチを打てます」と田嶋氏はメリットを話す。「手加減して勝てるような業界ではありません。そのタイミングで、ソニーの中でモバイルに適用できる、最新、最高のものを注ぎ込みたい。出し惜しみは一切しません」と同氏は言い切る。
十分な時間をかけてフルスイングしたのがXperia Z1
Xperia Z1の「1」には、One Sonyを体現した第1章のスマートフォンという意味が込められている。「ソニーモバイルがソニーの100%子会社になる前に、『始まりの序章』という想いでXperia Zの開発を始めました。カメラやディスプレイをチューニングすることで、いい商品が出来上がりましたが、次にやりたかったのは、デバイスから仕込むこと。今回はカメラデバイスを1年半前から仕込んできました。100%子会社になって、十分なリードタイム(開発期間)がある中でフルスイングしたのがZ1。Z1ありきで、その序章にZがありました。Xperia Zはいわば“Z0”です」(田嶋氏)
今後の型番ルールがZ2やZ3になるのか、あるいはZ10やZ100になるのか、といった点は「もう少し悩ませてください(笑)」(田嶋氏)とのことだが、Zをフラッグシップ機として打ち出していく姿勢は変わらない。
Zを頂点としたコンセプトの整合性はきっちり出す
日本では「Xperia ZR」ベースの「Xperia A SO-04E」が、ドコモのツートップ戦略の効果もあって、フラッグシップモデルの「Xperia Z SO-02E」よりも売れた。これはキャリアの戦略にも関係するので、一概にXperia A>Xperia Zと言えるものではないが、地域によってはローエンドモデルが売れることもある。それでも「Z1を頂点とした商品展開は必要だと感じています」と平井氏は話す。
田嶋氏は「Xperia Aは、使いやすい商品として開発したので、フラッグシップモデルとはコンセプトが違います。一方、ZとAでブランドメッセージが分かりにくくなった部分もあるので、秋以降は、そこも含めて整備します。フラッグシップとは別に、幅広いお客さんに買っていただける商品も用意しますが、コンセプトの整合性は今回よりもきっちり出していきます」と語る。ドコモ向け製品として12月下旬に発売を予定している「Xperia Z1 f SO-02F」は、小型ボディにGレンズやZ1のデザインを踏襲しており、Z1とコンセプトが一貫している。
画面サイズは5.0インチのXperia Z1、4.3インチのXperia Z1 f、6.4インチのXperia Z Ultraなど、バリエーションが広がっている。「画面サイズと筐体の持ちやすさは、お客さんの好みもあるので、画面サイズのスイートスポットは全世界で探っている状態。設計効率は維持して、多様なニーズを押さえたいですね」(田嶋氏)
Androidタブレット(Xperia Tablet Z)の新製品は、現時点では発表されていない。タブレット戦略について、平井氏は「スマートフォンのノウハウが重要になる」と話す。
「PC市場が縮小していく中で、タブレットやPCはいろいろな定義ができます。さまざまなフォームファクター(形状や大きさ)を投入して、既存のPCとは違う使い方を提案することが大事だなと。例えば、バッテリーライフが長い、スタイリッシュである、といったところ。そういった展開をするにあたって重要になるのが、ソニーモバイルが持っている、製造設計から生産に至るスマートフォンのノウハウです。Xperia Tablet Z もソニーモバイルで展開しているので、それが生きていると感じています。タブレットとスマートフォンの境界線も分からなくなってきており、どこかで収束していくと思います」
まずは日本のマーケットを徹底的に固める
Xperiaのラインアップ全体を見ると、2012年と比べ、2013年の製品数は絞られつつある。「キャリアさんとの交渉ごとなので、キャリアさんの要求に対して、どこまで商品展開していくのかを地域ごとに考えています。何が何でも台数を増やしていくことで市場を大きくしていくわけではありません」と平井氏が話すように、これからは少数精鋭で攻めていくようだ。
ソニーモバイルはグローバルでスマートフォン事業を展開しているが、「まずは日本のマーケットを徹底的に固めることが優先事項」という平井氏のコメントは、日本のユーザーにとってはうれしいことだろう(と言いつつ、Xperia Z Ultraは海外で発売されて日本では未発売などの差はあるが)。「次は欧州、その次が北米と中国をどう攻めていくか」と平井氏。北米での展開はやや苦戦しているが、「Xperia ZはT-Mobileからも発売しています。北米はタイミングを見て、徹底的に攻め込む時期が来ると考えています」と話す。
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