“飛び道具”でドコモ超え実現のソフトバンク、次は「世界一になる」――孫社長(1/2 ページ)
2013年度3月期第2四半期の連結業績で、ソフトバンクは売上高、営業利益、純利益でNTTドコモを超えることに成功した。次は「コンテンツ、端末、ネットワークで世界一になる」と孫社長は語る。
ソフトバンクが10月31日、2013年度年3月期第2四半期の決算発表を行った。売上高は前年同期比73%増の2.6兆円、営業利益は前年同期比67%増の7151億円、純利益は前年同期比84%増の3949億円となった。償却前の営業利益(EBITDA)は前年同期比39%増の8160億円となり、10期連続最高益を記録した。
売上高、営業利益、純利益がドコモを上回る
今期の連結業績は、ソフトバンクとしては初めて、売上高、営業利益、純利益でNTTドコモを上回った。ソフトバンク代表取締役社長の孫正義氏は「ボーダフォンジャパンを買収したときに、10年以内にドコモさんを抜くと公言してきたが、その当時は、我々の社員ですら笑っていた。『あり得ない』『また夢の大風呂敷を広げたな』と……」と感慨深げに振り返る。
ただし2.6兆円の売上高は、スプリント事業の0.8兆円を加えたもので、営業利益7151億円のうち、2490億円はガンホーやウィルコム子会社化に伴う一次益などが含まれる。これらを加味しないソフトバンク単体での売上はドコモを下回るが、孫氏は意に介さない。「『何だ、ドコモを上回ったといっても、飛び道具じゃないかと。そんなんでいいのか』という声が聞こえてきそうだが、『そんなんでいいんだ』というのが私の答え。飛び道具でも何でもあり。要は超えればいいんだと。もちろん法律を犯してはいけないが、あらゆる知恵を働かせて、あらゆる角度から飛び道具を使う」と語気を強めた。
ドコモのiPhone参入は「心配した」が……
モバイル事業については、iPhoneを3キャリアが扱い始めたことに言及。ドコモがiPhoneの販売を始めたことで、ソフトバンクが不利な状況になることが懸念されていた。孫氏も「6割を超えるユーザーがドコモのiPhoneを選ぶという事前のアンケート調査があったので、心配した」そうだが、「(9月20日~10月20日の)結果を見ると、ソフトバンクが一番売れた」と胸をなで下ろす。ただしドコモのiPhone 5s/5cは10月31日から全ドコモショップで販売されるので、これによってiPhoneの販売シェアが変化する可能性はある。
ここ数年はソフトバンクモバイルが毎月のように契約純増数1位を獲得している。iPhone効果が大きいのは言うまでもないが、孫氏は「iPhoneを発売する前(2007年5月~2008年6月)も純増1位だった。iPhoneなしでも、1年以上純増ナンバーワンを取り続けていた。auやドコモが加わっても1位は変わらない」と強調する。ARPUはドコモの4590円に次ぐ4520円で、「順調に推移している」(孫氏)とした。「買収直後は、ドコモとauのARPUの方が、我々よりはるかに多かったが、ホワイトプランを開始してから、彼らの料金を引きずり下ろすことに成功した。彼らはどんどんARPUが下がった」(孫氏)。MNPは28万の転入超過となり、前年同期比で2倍に増えた。
iPhoneの独占販売が、ボーダフォンジャパン買収の決め手に
孫氏はあらためて、ボーダフォンジャパンを買収した2005年当時を振り返る。「営業利益がどんどん下がっているボーダフォンジャパンは、あと1年待てば、さらに安くなるのでは? という意見もあったが、安く買うのが目的ではない。もう1年遅れると、モバイルインターネットの夜明けに間に合わない。値段よりもタイミングを取った」と話す。しかし同社の買収に踏み切れたのは、iPhoneの独占契約が“内定”していたことが決め手になったそうだ。「ボーダフォンジャパンの買直前に、日本ではiPhoneをソフトバンクに独占的に取り扱わせてほしいと、スティーブ・ジョブズに交渉していた。そこで口約束を得たから、2兆円近いお金をかけてボーダフォンジャパンを買収する賭けに打って出ることができた。何の武器もなしに戦いに挑むほどバカではない」(孫氏)
携帯電話事業のネットワークについては、「スマホのつながりやすさ」と「高速通信の速度」でナンバーワンを目指すことを、あらためて宣言。900MHz帯“プラチナバンド”の基地局数は、2013年10月時点で2万8000局となり、「順調に増加している」とした。2010年3月末と現在のサービスエリアマップも紹介し、3年半で大きくエリアが改善されたこともアピールした。
TD-LTE(AXGP)基地局は2013年10月に4万2000局、FDD-LTE基地局は13年10月に2万9000局に増加した。LTEサービスは、イー・モバイルの1.7GHzとソフトバンクの2.1GHz帯を合わせた「倍速ダブルLTE」に加え(最高速度が2倍になるわけではないが)、2014年4月に開始予定の900MHz帯でのLTEサービスとあわせ、“トリプルLTE”を展開していく。
パケット接続率が、ドコモとauよりも優れているというAgoop社によるデータも紹介。「ゴルフ場、海水浴場、スキー場はこれまで最下位だったが、よやうく1位になれた」と孫氏は胸を張る。またスマートフォンの音声接続率も、イプソスの全国調査によると、2013年10月はドコモとauの98.0%に対し、ソフトバンクは98.6%で1位を記録した。ただしフィーチャーフォンの接続率は他社に劣る。
影響利用者数3万以上、継続時間2時間以上の「ネットワーク重大事故」を、889日起こしていないことも孫氏はアピールした。ただし、10月1日に発表した信用情報の誤登録について孫氏自らは言及せず、質疑応答の場で「システムのバージョンアップの際に、人為的な入力ミスがあったようだが、気が付いてすぐに情報を入れ替え、信用情報機関に伝えた。対象になったユーザーにはすべて個別に連絡済み。その後の問い合わせは収まっていると認識している。対策としては、人為的ミスを起こさないように、二重三重のチェックシステムを構築した」と経緯と対策を話すに留めた。
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