料金、サービス、端末――新生「ワイモバイル」の戦略を読み解く:石野純也のMobile Eye(7月7日~18日)(1/2 ページ)
8月1日に新キャリア「ワイモバイル」がサービスを開始する。同社はどのような戦略でモバイル事業を展開していくのか? 料金、サービス、端末を中心に読み解いていく。
紆余曲折を経て設立されたワイモバイルが、ついに始動する。7月18日には新端末、新料金プランが発表され、同社の目指す方向性も明らかになった。ヤフーの買収が白紙になった中、同社は通信業界でどのような立ち位置となっていくのか。発表会で語られた戦略や、端末、サービスの方向性などを詳細に解き明かしていきたい。
狙いは「レイトマジョリティ」、スマホの拡大を目指す
7月1日にウィルコムを合併したイー・アクセスが社名を変更する形で発足したワイモバイル。新ブランドの船出は、8月1日になる。これに向け、同社は新端末や新料金プランを発表した。
イー・アクセスとウィルコムがベースとなっているだけに、同社は「3つの事業ドメイン」(代表取締役社長兼CEO エリック・ガン氏)を持つ。1つ目が「550万ユーザーのPHS」(同氏)。2つ目が「Pocket WiFiで、PHSと合わせてほぼ1000万のユーザー」(同氏)になる。この2つを基盤にしながら、新たに注力していくのがワイモバイルのスマートフォンだ。
スマートフォンが急速に普及したとはいえ、まだ50%程度。残りの50%に商機があると見たワイモバイルは、「レイトマジョリティが、分かりやすく簡単に使えるもの」(取締役兼COO 寺尾洋幸氏)にターゲットを絞り、端末やサービスを展開する。「他社の料金プランは複雑すぎて分かりにくい。Easy to understandにした」(ガン氏)という料金は、スマホ向けで3種類。2980円(税別、以下同)の「スマホプランS」、3980円の「スマホプランM」、5980円の「スマホプランL」で、それぞれパケットを月1Gバイト、3Gバイト、7Gバイトまで使用できる。
基本使用料はもちろん、ウィルコムの料金プランとして人気を博し、その後イー・アクセスからも提供されていた「だれとでも定額」もここに含まれており、1回10分、月300回までの国内通話が無料になる。ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社が基本使用料とパケットパックを分け、さらにオプションを組み合わせる形にしているのに対し、ワイモバイルはすべてがセットになった「パック料金」で分かりやすさを演出したというわけだ。
「大手3社の料金はどんなに計算しても、最低6500円から」(ガン氏)というように、分かりやすさだけでなく、価格自体もリーズナブルになっている。また、オプションとして、月額1000円で通話の完全定額を実現する「スーパーだれとでも定額」も用意した。通話については、他社より選択肢が広く、部分定額と完全定額を選べる仕様になっているといえるだろう。
ただ、この市場は「格安SIM」「格安スマホ」と呼ばれるMVNOの主戦場になりつつあり、従来スマートフォンを手にしていなかったユーザーを取り込み始めている。こうしたMVNOに対しては、サポートの手厚さや、端末までセットになった“安心感”を打ち出していく方針だ。サポートには、Pocket WiFiでイー・アクセスが培ってきたノウハウや、イー・アクセス、ウィルコムそれぞれの店舗を生かす。寺尾氏は次のように語る。
「サポートには、2つのソリューションを考えている。イー・アクセス時代は、Pocket WiFiを中心にしていたが、これは(スマートフォンより)さらに難しい商品。PCなどの設定もあった。これに対しては、ワイドサポートという商品をすでに提供している。月額で有料だが、サポート部隊のモットーは「NO」と言わないこと。Pocket WiFiだけでなく、そこにつながる機器も含めてサポートする体制になっている。このサポートセンターを利用して、スマートフォンのサポートもできる。また、イー・アクセスとウィルコム、合わせて1000店舗の専門ショップがあるため、こちらでお客様をサポートしていく」
MVNOにも最近ではSIMフリー端末とSIMカードをセットで提供する動きが広がっているが、まだこうした動きは始まったばかり。寺尾氏はここにも、ワイモバイルの強みがあるとし、「格安SIMとの比較では、端末の開発や端末のサポートでも強みがある。全体で最適なものにした」と話す。
上位3社に対しては料金で、MVNOに対してサポートや端末までをワンストップで提供する体制で差別化していくというわけだ。これに加えて、ヤフーのサービスもワイモバイルの魅力の1つになる。
Yahoo!Japanを使えば使うほどたまるマイレージ
当初はヤフー傘下で事業を継続するはずだったワイモバイルだが、既報のとおり、その買収は白紙撤回されている。ただし、ブランドやサービス面で、ヤフーとワイモバイルは協力関係にある。その1つの成果といえるのが、「パケットマイレージ」の仕組みだろう。
パケットマイレージとは、Yahoo!JAPANにアクセスすればするほど、マイルがたまっていくプログラムのこと。Yahoo!JAPANのトップページにアクセスしたり、Yahoo!JAPANのアプリでログインしたりすると、料金プランに応じたマイルが積算される。「スマホプランS」で1日1マイル、「スマホプランM」で1日3マイル、「スマホプランL」で1日7マイルが付与され、これとは別にボーナスマイルも用意する。
ボーナスマイルには、5日連続でログインすることで引ける「パケくじ」や、初回ログインボーナスの80マイルなどがある。こうしたためたマイルに基づき、ランクが確定し、それに応じた特典を受けられるのがパケットマイレージの考え方だ。直接航空券に交換できたり、商品を購入できたりする航空会社のマイレージプログラムとはディテールが異なるものだが、使えば使うほど特典が豪華になるという趣旨は近い。
特典はデータ量だ。マイレージのランクに応じて容量は異なり、ブロンズは0.5Gバイト、シルバーは1Gバイト、ゴールドは5Gバイト、プラチナは無制限のデータを、翌月に追加で利用できる。
ただし、現時点ではマイルをためる手段が少ない。特に月1GバイトのスマホプランSを契約していると、毎日しっかりYahoo!JAPANにログインしても30マイルしか付与されない。パケくじと組み合わせても、最も低いブロンズにすら達しない可能性はある。9月30日まではキャンペーンで、どのプランでも1日7マイル付与されるが、これが終わった後は追加の施策も必要になりそうだ。
このほか、サービス面でもYahoo!JAPANとの連携が強化される。メールは「Y!mobileメール」が利用でき、スマートフォンはもちろん、PCやタブレットでも参照できるマルチデバイス対応となる。通常5Gバイトのストレージサービス「Yahoo!ボックス」も、ワイモバイルユーザーには30Gバイトが与えられる。通信料の支払いに使っているクレジットカードを、そのまま「Yahoo!ウォレット」に登録でき、さまざまな決済に利用できるのもワイモバイルならではの施策といえるだろう。
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